寝る前に、もう少し書かせて。
真紅の液体を爪に塗り重ねていくと、朱殷と呼ばれる色となる。濃くなり、黒に近づいていく。爪で肌を引っ掻き、溢れた血が固まったような、そんな色。
シャーペンの芯がすり減っていくように、わたしの緊張も減っていく。ずるり。そんな音がテスト中の教室の空気感にぴったりだと思ったけど、それだと私の能天気な、空白のテスト用紙の表現に合わないと思った。数学は苦手よ。文字で感情を表現できると知ったけど、数字では何も知ることは出来ない。ずるり。また、なにかが違う音の緊張が漂う。
誰かが問題がわからなくて、悩んでいる音なのかも。急にも思い出すように、きのう覚えたどこかの国の唄をうたう。視線がいっきにわたしに向かうのだけど、気づかないフリをして、押しても押し出されないほど短くなった芯を投げ捨てる。ポイ捨て。ぽいっと律儀に筆記体で書かれた名前を見つめる。ぽいっと前の席に座る子を眺め、空白で席が埋まっている用紙を折っていく。
折り紙をしましょ。
きっととっても楽しいから。
おりおりおりおり、折っていきましょ。
そんな歌を歌いながら、紙飛行機を作るのだけど、急に頭が痛くなるものだから、窓から溢れる日差しを呪う歌に切り替える。けど、二番目の歌詞に移ると、飽きてしまってまだ紙飛行機の歌に戻り、折り終わる。
ぽいっ。
今日はスーパームーンと呼ばれるほど、大きい満月をしていると聞いた。急いで窓の外を眺めると、どこにも見当たらなかった。少し時間が経ち、また外を見上げる行為。何度か繰り返し、やっと見える位置まで彼女がやってくる。
やぁ。
いつも通りの大きさに感じてしまった私は、どうすればいいのだろうね。結局は月で、綺麗な彼女なのだもの。大きさなんて、どうでもいい。
ただただ会えたことを、今は喜びたい。
こういう時こそ、好きな人が言っていた言葉を思い出す。
えぇ、そうね。
私は彼女が見れて、とても嬉しい。
整頓されたエッセイなんて、書ける気がしない。だってもう、ごちゃ混ぜになっていうもの。嫌になっちゃうね。
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