夢の世界

@blanetnoir

目の前に大きな淵が広がっている。


おおきなプールのように、ギリギリのラインまで水面がある、水面下は暗く、見えない。

淵の側に立ち、静かな水面を眺めている。

鏡のように、凪のない静けさ。

この水の中には、私の世界が眠っている。

太陽が落ちて夜が来れば、みんなが帰っていく場所。

ひとりひとりが持つ場所。

瞳を閉じて戻っていく、

自分自身の、世界。

自分が創作した、場所。

起きているあいだは夢、と言われる世界。

だけど私には、こちらの世界が楽しくて、大切で、

太陽と共に始まる世界に出ていくことこそが夢、というに相応しいと思う。



だって、あの世界は私ではない他人のユメで創りあげられた世界だから。



あの世界のどこにも、私が創りあげたモノは存在しないから。



ユメを形にできる誰かのユメが実際に形となって、あの世界を創造して、ひとつの社会、になっている。



片足の指先を、つと水面につける。



地面から、水面へ歩むように体重移動をすれば、



次の瞬間わたしは水面に沈んでいく。



どぽん、という音と数多の水泡と。



そして目の前に広がる眺めは。



ああ、今朝、陸に上がる直前まで見ていた世界の続きが私を待っている。



私がつくり上げた夢の世界。



おかえりなさい



迎えの声に、ふわりと微笑む。



またあの太陽が昇れば、

陸に上がることになるけれど、



それでもこここそが、私の世界。

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