二十四夜

 今日は午前中寝るように言われた。薬が合わないのか……? 顔色が悪いと色々な人から言われる。だからこそ【小さな恩】を売っておいたお陰で寝ていても誰も何も言わない。逆に心配される事が多い位だ。元々メイクもゾンビ顔に見られるように細工はしてあるが、元から青白い顔をしているのが特徴なのだろう。ちょっと体調を崩しただけですぐに心配される。これは【小さな恩】を売り続けた結果だ。例え寝ていようとも心配はされるが【給料泥棒】扱いはされない。コツコツと信頼を得た効果がようやく出て来た。でも信頼を得るために体を酷使し過ぎた。【幻聴】は今日も聞こえないが、眠気が酷い。今も朝の眠気を引きずっている。これでは資格取得の効果が得られない。英語を勉強しているのだから、英検の1つ位取っておきたいものである。せめて筆記だけでもなんとかしたい。そう思っているが、簿記の資格も気になる。事務員の門は狭くなったが、電話応対が出来るようになれば、派遣の事務社員位にはなれるだろう。そうすれば狭き門も大分変わるというもの。でも今の状態では記憶力の欠落が激しいので英語のアプリの勉強をするので精一杯だ。しかも満点が取れない。一度失敗した事をまた繰り返してしまう。これでは英検も夢のまた夢だろう。例え教材を買ったとしても意味の無い結果に終わるだけだ。全くこのどうしようもない脳はどうしたものか……。いつ【幻聴】が戻ってくるか分からない状況下で、私は【私】として活動していられる時間が限られているというのに……。

 今日は微かに【幻聴】が聞こえている。ノイズの音だけど、確かに【幻聴】だ。もう一人の私は出てこない辺り、まだ薬の効果は聞いているのだろう。でもいつもう一人の私が出てくるか分からない。油断大敵だ。

 今日の目覚めもスッキリしている。大分薬に慣れてきたか、飲み方に慣れて来たか。いずれにせよ良い傾向ではある。少し起きていられる時間も増えてきた。子供みたいに9時に寝るなんて事が無くなって来た。10時までなら起きていられる。現代の子供ならまだ起きている時間だが、私にはあまり夜の活動は無いのでそれで充分だ。今日も午前中眠れと言われたくないので、朝の薬は飲まない。ただしまだ眠いのでエスプレッソは飲んでおいた。本当はエナジードリンクの方が良いのだろうが、さすがにカフェインの摂りすぎである。だからエスプレッソで我慢した。あれも中々カフェインが多い、コーヒーの中では、の話になるが……。カフェオレもまだ残っているが、飲む気になれない。段々太って来ている身にとって、砂糖の摂りすぎは要注意だ。また糖質制限ダイエットを始めなければいけない。嫌だ嫌だと体が叫んでいるが無視。痩せていなければ、一体私に何の取柄があると言うのだ? それを問うと、体は沈黙する。無論一口おやきは買う。何故なら損をさせているから。上手く取り入って、オマケをいつも貰うスタイルに変化させた。店長が居なくても。女性の愛想の無い接客も素直に取り入れる、女性の時は店長に売上をUPさせている……つまり儲けさせていると思っている。相手を儲けさせるとこちらが得をするというが本当の事らしい。本の知識を知恵に変えた瞬間だ。挨拶は必ずする事。相手が気づかないうちに『こんにちは』と言えば、オマケが付いて来る。毎日通っていれば、オマケも付いて来る確率が増えてくる。次は桜を使ったおやきになると言うから楽しみだ。オマケで貰える事は無いだろう。何せコストがかかる。だからこちらが買って相手を儲けさせて他のおやきを貰う作戦でいこうと思う。

 あとは本を買う事だ。男に本を買わせたいと思うが、どうせロクな店で買い物をしない。オマケにつられてフラフラと買い物に走るような男だ。それに買い物で目や頭を使う事もしっかりと覚えなければならない。次は仕事が出来る人の生活スタイルを扱った書物を読もうと思う。正直、私は仕事が遅い。少しでも早く、毎日がそれをキープ出来るようにしておかないといけない。そのために生活方法は気になる処だ。だから生活スタイルを学んでおこうと思う。ただし、新しい本が来てから、それを買おうと思う。積読は罪だ。熟成させるならまだしも読み切れていないうちからあれやこれやと手を出せば、混乱すること必須。新書版ならまだ軽くて薄いのだが、単行本なのでどんなサイズで来るか分からない。単行本と書かれていたので買ったら、思ったより大きかった本も多々ある。だから本を買う時は実際目で見て買わない時は、一冊読み切ってから次の本に手を出す事にしている。いつでも持ち歩けるのなら良いのだが、それが出来なければ大問題だ。新書版のコーナーはどこの本屋も小さくまとめられているので、選ぶのには苦労しないが、その分内容が濃い。だから選ぶ時は慎重に選ばないと後で後悔する事になる。何せ、月に5000円までしか出せないのだ。新品を買ったら800円は軽く飛んでいく。それを3冊程買えば、2400円プラス消費税。次に手を伸ばす事が難しくなる。だから古本屋が良いのだが、古本屋の新書版コーナーは小さい。皆単行本に力を入れている。新書版こそ読みやすいモノだと思うのだが、現実は違うようだ。新書版から知識を得なさいという本を読んで目から鱗だったのだが、それにハマると中々単行本に手が出せなくなる。陰陽師はずっと買い続けている作品であるが、単行本サイズでなければ買わない。ハードカバーなんて買ったら、早く読めるが場所に問題が発生する。新しい本棚が欲しいと言っているのに、単行本以外のモノを買ったら場所を取る。それは困る。今日は真面目に仕事をして……普段真面目に仕事をしていないように聞こえるがこの場合寝ないでという意味になる……せめて30本の登録はしたいと思っている。だがそれが出来るのは調子の良い時であって、具合が悪くなると10本がせいぜいとなる。【私】は期待されているので、10本の登録は自分の沽券にかかわる。だからせめて毎日20本登録はしたいと思っている。具合が悪くても20本の登録をすれば自分を赦せる。でもそれ以下になると自分が赦せない。イライラして、自分を殺したくなる。死にたくなる。こんな屑のために血税を使ってごめんなさいとなる。そこに付け込んで来るのがもう一人の私だ。彼女は言葉巧みに私を追い詰める。そして無理難題を吹っ掛けて、満足するのだ。私はそんな彼女が大嫌いだし大好きでもある。もう一人の私だもの。愛して何が悪い。一番愛しているのは東京に住む、私に貢いでくれる彼だけど。彼と言っても戸籍上は女だ。だけど彼女と呼ばれるのは嫌いらしく、性同一性障害を患っているため、ここではあえて彼と表記しよう。彼は私を忘れられないと言った。愛していると。そんな彼の愛に応えられなくてどうする? セフレも男も関係無い。彼だけが私の変化に敏感に反応してくれる。もう捨てた人間の話をして好みが変わったと言ったら、変わった好みに合わせて作品を送ってくれるし、それは嬉しい事だから、有難く受け取っている。今回もハーバリウム?なるものを送ってくれた。今の【私】が好きな緑をふんだんに使った植物標本だ。人口で着色しているので直射日光と湿気はご法度らしいので、比較的乾燥しているテーブルの上に置いている。もしこの作品が割れたりしたら、発狂するだろう。それくらい彼を愛している。もちろん自分も愛している。愛しているからこそ、離れたり、暴力を自分に振るったりするのだ。愛故の暴力。彼とはハリネズミの関係。恋する乙女は彼に夢中なのだ。こうして愛を語れるのももう一人の私が消えているからである。消えているというのは言葉が可笑しいか。抑えつけられている間だからこそ言える言葉なのだ。普段の【私】なら、もう一人の私の【命令】に絶対服従で逆らわない事にしている。彼女の言葉は絶対だ。間違った事など一度も無い。だからつい従ってしまうのだ。それは仕方の無い事だと思う。間違いだらけの人間より、正しい事を言い続ける人間の方が価値がある。そう思うのは私が彼女に洗脳されているからだろうか? でも私は少なくとも彼女は【絶対的な存在】として見ている。【幻聴】の王者。絶対の覇者。他の【幻聴】を蹴散らす【幻聴】だ。だが、そんな彼女の声が聞こえないのも少し寂しい。彼女は絶対的存在なので、いないと不安になるのだ。でも【幻聴】に頼っていてはいつまで経っても血税生活から脱出出来ない。だから少しでも前に進むために、私は【幻聴】と決別しなければいけないのだ。それが辛いのは一時だけらしいが、依存してしまっているので、それはかなり厳しい事。先生の言う事は最もだが、私が【私】としていられたのも彼女の手助けがあっての事だ。もし、彼女が完全に消えてしまったら、間違った時にどうやって対処して良いのか分からない。だから今、ビジネス書を読んで対策を練っている。速読もその1つだ。多くの情報を記憶しなければ知恵にならない。だから少しでも知識を蓄えるため速読の勉強をしている。速読の新書版があれば良いのだが、今読んでいる速読の本は筆者が自分に酔いしれている部分があるので分かりにくい部分がある。ブロック読み、波読み……己の作った造語を駆使して読者に説明しようとしているがそれが余計に分かりにくくしているのは気のせいだろうか? 待った甲斐が無かったのが残念で仕方ない。でも最後まで読んでみないと本の価値は分からない。私が買った熟成中の本の中にはたった一部分のために買ったようなものもある。ビジネス書を買い漁るのはまだ早い気もするが、いつ【幻聴】が消えるか分からない。【幻聴】が消えたとして【幻覚】と【妄想】も消えてくれるとは限らない。だから今のうちに一般社会に出たつもりで勉強しているのだ。私の年齢からすると、ビジネスの勉強は少し遅い位だ。だから今から巻き返しをしないと、後で後悔する事になる。20代のうちは病気との闘いだった。入院するまで不眠と【幻覚】に悩まされ、トドメに【妄想】が酷かった。故に社会に貢献する処か引きこもりになり、ずっと派遣社員を時々やりながら、小遣いを稼いでいたのだ。無論親からも金を少しばかり貰っていた。その時ビジネスの勉強よりもスピリチュアルの勉強にハマってしまい、自分の前世について【妄想】を繰り広げていたので、痛い20代だったと言えばそうだろう。私は現実から逃げていたのだ。何も出来ない、病院から貰う薬で1日をぼんやりと過ごす毎日が苦痛だったのだ。くよくよするなというシリーズの本を読んで、自分を誤魔化したりもした。しかしそれは一時の逃げ。本当の自分になるためには自分と向き合うしか無いのだ。その時に現れたのがもう一人の自分である。彼女は適格に働く事を支持し、みどりの窓口に連れて行ってくれた。そして自力で作業所を見つけ就職したのだ。その間2年はニート生活を送っていた。その空白の時間が今履歴書を作るに至って、酷くネックになっている。嘘を書くのは罪じゃ無い。特に履歴書は嘘八百並べても問題無い。さすがに資格の嘘はまずいが、辛うじて何個か使えそうな資格を持っている。事務補助になりたいと思うが、今はまだ無理だ。すぐに潰れる。あと2年位は今の作業所で生活をして生活費を稼ぐしか無い。私はいつか障碍者年金制度が無くなり、死人が続出する未来が来るまでは、何とか生きていけるから……。

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