第02話 もうやだあああ、でエンディングへ

 すっかり暗くなった、夜の公園、

 高校の制服姿の、ほのかと、あおい。

 二人の間に、ふわふわ浮かぶ猫型妖精、ニャイケル。


「あおいちゃんが、魔法女子だったなんて」


 まだ信じられない、といったような、ほのかの表情。


「うん。あたしも、自分のことながらまだ信じられないや。変身しただけじゃなく、あんな強そうな怪物をやっつけちゃったなんてさ。……最近ほのかの周りに、たまにチラチラと変なのが見える気がしてたんだけど、こいつだったんだな」


 あおいは、ニャイケルを指差した。


「変とかこいつとかいうんじゃねえ! つうか指をさすんじゃねえよ! ほのかの友達のくせに、口も態度も悪いな、てめえ! まあ、ほのかはかわりに頭が悪いけどな」

「口が悪いのは、お前だろ! それと、正体秘密なんだろ、隠れるならもっと上手く隠れろよ、間抜け! ……それはともかく、さっきの怪物、マーカイ獣っていうの? やり口の超卑劣な奴だったな。ほのかと危うく絶交しちゃうとこだったよ。改めて謝るよ。あたしが悪いのに怒鳴っちゃって、ごめんな、ほのか」

「いえ、その……私が、食べちゃったというのも、本当で……」


 ほのか、困ったように、視線を右に左に泳がせている。

 ぽわわわわん、と回想シーン。




 「ほにゃ、こんなところにケーキがっ。ひょっとしてあおいちゃん、私のために残しといてくれたのかなあ。それじゃ遠慮なく、いっただきまあす!」




 回想シーンの画面を、バリンと鉄拳がぶち割って、顔面ドアップになったあおいが叫ぶ。


「えーーーっ! 食べてないっていってたじゃねえかああ!」

「だって、だって、あの剣幕で迫られて食べましたなんていえるわけないじゃないですかああ!」

「行列すっごーく待って、あたしでちょうど最後だったという奇跡的に買えた一個だったんだぞ! もうっ、もうっ、ほのかとは一生クチ聞かねーーーっ!」

「ごご、ごめんなさあい」

「知らん」

「そんなあ」

「許さん」


 ぺこぺこ謝るほのかと、回り込まれるたびにぷいっとそっぽを向くあおい。


 宙にふわふわ浮きながらそれを見ていた太った黒猫ニャイケルが、振り向いてカメラ目線で、


「こいつら、マーカイ獣がなんにもしなくても、チーム結成初日で崩壊の危機を迎えてたんじゃねえの?」


 はあああ。もうやだ。と、うなだれ、ため息。


 すーっとカメラの角度が上を向いて、夜空の月を映し出した。

 雲間に見え隠れする、満月を。




 そして、エンディングテーマへ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る