第03話 なんの取り柄もない、普通の女の子

 山と、海と、澄み渡る青空。

 細い坂道、ガードレール越しに、きらきら光る海が広がっている。

 のんびり緩やかな風景。


 それをぶち壊すような、慌ただしい足音と、はあはあ苦しそうな息遣い。


「遅刻遅刻遅刻!」


 寝癖のようなぼさぼさ赤毛の少女が制服姿で、通学カバン片手にその坂道を下っている。

 はあはあと息を切らせながら、必死に走っている。



 少女のモノローグ。


『私、こつぶえほのか。

 高校一年生。

 なんの取り柄もない、普通の女の子です。


 実は私、誰にも話せない、

 ちょっとした秘密を持っているのだけど。


 ……って、それどころじゃないっ!。

 急がないと。

 今日、遅刻するわけにはいかないのだから。


 でも、

 でも……』



 はあ、

 はあ、


「もう、体力……限界ですう……」

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