第07話 打ち上げ
レジ袋をそれぞれ両手に提げて、定夫の家に到着。
玄関から入ったところで、「じょじょ女子っ!」と一向に敦子の存在に慣れない
これまでずっとマイク置き場として段ボール箱を置いていた部屋の中央に、ちゃぶ台をセッティング。
コンビニで買ってきた物をレジ袋から取り出して、片っ端から置いていった。隙間もないほどぎっちりである。
「実は拙者、先ほどこっそりノンアルコールビールなど購入してしまったでござる!」
トゲリンが、嬉し恥ずかしといった表情で、金色の缶を四本、ちゃぶ台の隙間にねじ込んだ。
「おおーっ、大人っ!」
八王子が、なんだかハイテンション気味に激しく拍手し、両腕を万歳のように振り上げた。
「あたしっ、あたしもっ、シガレットチョコ買っちゃいましたああ!」
大人といえばという対抗意識か、敦子もハイテンション気味に声を大きくし、がさごそ袋から取り出した物を高く掲げてみせた。
「うおおおおお」
と、トゲリンがネチョネチョ声で雄叫びをあげる。
そこまでハイにはなれないが、定夫も内心かなり興奮していた。
そして、やっと完成したんだなあ、と嬉しいような寂しいような気持ちをしみじみ胸の奥に味わっていた。娘が結婚する時の、父親の心境であろうか。
「そろそろ始めますか」
という八王子の言葉に、みなは顔を見合わせ恥ずかしそうな笑みを浮かべた。
それぞれ、ノンアルコールビールの缶に指かけぷしゅり、
一応、紙コップにもオレンジジュースを注いで、
パソコンモニターに、自分たちの作ったアニメを再生させ、
そして、
「ほら、総監督っ」
と八王子に背中を叩かれ、定夫は口を開いた。
「ででではっ、こるまでの長い間、お疲れ様でした! 『魔法女子ほのか』の完成を祝して、そして成功を祈って、乾杯!」
「乾杯!」
一応の総監督である定夫の音頭に、トゲリン、八王子、敦子は、手にした缶をぐいと突き出した。
定夫は、缶に口をつけ、一口含んだ。
ぐびりごくごく大人の世界。
ノンアルコールだというのに、なんだか酔いが……
定夫と同様みなも気持ちに酔ったのか、誰からというわけでもなく敦子の選んだシガレットチョコを手に手に、肩を並べて片足をベッドに乗せて、霧笛が呼んでるぜポーズ、ぷはーーーーっ。
うわ恥ずかしい。我に返って、笑い合い、宴会再開。
みな、これまでの苦労や、作品への夢、はたまた関係ないアニメの話などで、大いに盛り上がったのだった。
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