第04話 四人体制初会議
「ここがアニメ制作スタジオなんですねえ」
沢花敦子が、山田家に起きた奇跡に協力した自覚もなくほわんとした表情で、室内をぐるり見渡して感慨深けな声を発した。
「いやっこ、ここはっ、さくせくっ作戦っ会議室ちょっ、視聴部屋部屋っ」
ここは作戦会議室と視聴部屋。
と、まだまだ通訳翻訳が必要な酷いものではあるが、定夫の敦子への喋りの固さは出会った当初と比較すると相当に取れてよくなっていた。
二時間ほど前ならば、「い、いい、いやぅ、こ、こかっ、こかっ、こかっ」などと声を絞り出すだけで精一杯だったことだろう。
たったの二時間でここまで固さが取れたのは、実は、敦子の気遣いのおかげであった。
八王子以外、なんともギクシャクギクシャクの彼らであったのだが、敦子がトゲリンの真似をしてござる言葉を使ってみたところ、まずトゲリンが恥ずかしがりながらも段々と調子に乗って口数が増えて順応。それはそれで鬱陶しいものではあったが。
集団心理で強気に、というわけではないが、八王子とトゲリンが普通に話をしているものだから定夫としても入り込みやすく、かなり馴染んできたところで、敦子がござる言葉を解除。
と、このような流れである。
馴染んだといっても、この通り定夫一人だけまだまだ相当に酷いものではあったが。
「す、少し狭いが、楽にっ」
トゲリンが、くつろぐよう敦子を促した。他人の部屋で偉そうに。
まあ確かに、窮屈な部屋である。
部屋自体はごく普通の六畳間であり、広くもなければ、狭いものでもない。
しかし、ベッドと机で部屋の半分以上を使用しており、残りは三畳弱。
定夫とトゲリンは超肥満体であり、八王子と敦子も足せば面積定夫一人分は使うわけで、窮屈なのは当然であろう。
しかも、音声収録のためのマイク台として、みかんの段ボール箱を床に積み上げてあるのだから、なおさらだ。
窮屈なスペースに四人は腰を降ろし、車座になった。
「でででで、ではではっ」
定夫は、総監督として口を開いた。
敦子を加えて四人体制になってからの、初めての話し合いである。
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