第343話 機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ(2015-17年)

※これは本日2話目の投稿になります。


 さて、いよいよラス前の作品『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』(以下『オルフェンズ』と略記)となりました。こちらは、2015年から放送のファーストシーズンのみ、最終回直前まで視聴しています。


 なぜ「最終回直前」なのか。実は録画予約に失敗しまして、重要な話が途中で切れてしまったのですよ。メインレギュラーキャラの「ビスケット・グリフォン」が戦死する所が録画できてなかったという。それで何か萎えてしまって、それ以降は見なくなってしまったんですね。ファーストシーズンの最終回だけはチョロ見しましたけど。


 なので、私の評価はファーストシーズンのラス前までの部分での評価になります。それで言うと、歴代ガンダムシリーズの中でも、かなり上位に入る作品ですね。


 前回『Gレコ』のところでも書きましたけど、格差社会における底辺階層への差別と搾取について、かなり容赦ない描き方をしているんですよ。主人公「三日月・オーガス」たちの所属する「鉄華団」の描写もそうですが、中盤に出てくる「ヒューマンデブリ」とかも。


 それで、仲間の子供たちも容赦なく殺されるし、三日月も容赦なく敵を殺していく。この時期のアニメとしては、かなりハードボイルドです。これを深夜枠でなく日午後五枠でやったということ自体が、かなりチャレンジャブルだったかなと思います。


 キャラ的な面白さで言うと、主人公の役割分割というのがあります。一応は三日月が主人公ってことになってるんですが、サブ主人公の「オルガ・イツカ」が実質的にもうひとりの主人公をやってるんですよ。


 これが、かなり面白い役割分割になってまして、三日月が「無敵主人公」なんです。最強パイロットで、ガンダム「バルバトス」を操って敵を撃破しまくり、無愛想なのにヒロインズにモテモテです。


 それに対して、いわゆる「主人公業務」として「思い悩んで成長していく」部分をオルガが受け持っているという。なお、オルガの方にもロマンスの芽みたいなのはありました……と思ってたんですが、今回調べてみたら、その相手はオルガじゃなくて整備士のおっさんと最終的に結婚してたようです(笑)。


 このため、キャラ的な深みはオルガの方があるんですよ。逆に、三日月が無表情にオルガに決断を迫るようなシーンもあって、あれは逆に三日月の方が不気味に思える演出でしたね。


 そして、ヒロインズも非常に面白いという。まずはメインヒロインの「クーデリア・藍那あいな・バーンスタイン」から。


 こいつ、最初はガンダムシリーズ伝統の「脳内お花畑ヒロイン」なんですよ。ところが、こいつは従来の同類系ヒロインと違って、鉄華団に同行して現実の厳しさを知り、自分がいかに「脳内お花畑」だったかを自覚するんです。それで言動がリアリスティックになっていくという。


 実は、放送当時には「こんな小娘に政治的影響力があるとか、フィクションにもほどがある」と思っていたのですが、それから五年もたたずに現実にグレタ・トゥーンベリ嬢みたいな人が出てきてしまったんですよね。ときに現実はフィクションを超えることがあるんだなあとか思いました(笑)。


 その一方で、初対面では自分の甘さを容赦なく指摘した三日月に興味を持ちだして、何度も守られていくうちに恋愛感情を抱いてしまうのですが、最初の三日月の態度から踏み込めないでいるという、正統派ヒロインっぽいムーブもしてたりします(笑)。


 そして、本作にはセカンドヒロインもおります。三日月の幼なじみの「アトラ・ミクスタ」という家庭的なカワイイ系少女です。優しいのですが芯は強く、鉄華団に家事担当として同行します。


 こいつが面白いのは、三日月への思慕をしっかり自覚する一方で、クーデリアにも好意を抱いてるってことです。


 実は作中に、鉄華団の協力部隊を率いる「名瀬なぜ・タービン」って男が居るんですが、こいつがハーレム持ちという(笑)。それで、そのハーレムメンバーのひとりが、アトラに向かって「素敵な男だったら、まるごと自分のものにできなくても、少しだけでも自分のものにできたらいいじゃん」的なハーレム肯定論を語るという(笑)。


 それを聞いたアトラが、クーデリアに向かって「私たちもがんばりましょう!」的にハーレム結成を焚きつけるんですね(笑)。


 これを見たときには、私は既に「なろう」で、いわゆる「なろうテンプレ」作品を読んでいたんで「こんなところにもハーレム肯定論が出てくるのかよ!」と思わず大笑いしてしまいました。


 さて、敵側というか、ライバルに目を向けますと、「マクギリス・ファリド」という、いかにも美形悪役的な存在が居るのですが、こいつファーストシーズンの時点で既に単純な敵ではなく、裏で鉄華団への支援を行っていたりします。Wikiで調べた所では、最終的にはこいつ敵側じゃなくなったみたいですね。


 むしろ、その親友の「ガエリオ・ボードウィン」の方がライバル的な存在になりますね。ファーストシーズンの最後で三日月に敗北して戦死した……と思ってたんですが、セカンドシーズンで仮面の男(笑)になっていたようです。


 ただ、今Wikiを読んだ限りでは、こいつらむしろ『コードギアス』のルルーシュとスザクみたいに思えるんですが(笑)。こいつらはこいつらで主人公とライバルやってるというか。


 敵として印象深かったのは、むしろファーストシーズン終盤に出てきた「カルタ・イシュー」ですね。「地球外縁軌道統制統合艦隊」の司令官として鉄華団の前に立ち塞がるのですが、言動がいちいちエキセントリックでおかしいという(笑)。素顔は美女なのにメイクもかなり変です。


 マクギリスやガエリオとは幼なじみで、幼少期の回想シーンがあるんですが、そこでは可愛らしい美少女だったのに、何をどう育ち間違ったらこうなるのかという(笑)。


 部下からの人望はあるようなのですが、作中の描写を見る限りでは、ぶっちゃけ指揮官としては無能で、パイロットとしても大した腕ではなさそうに思えました。


 それでも鉄華団の参謀役でムードメーカーだったビスケットを殺してるんですけど、その部分を見逃したのは最初に書きました。


 そして、このカルタの中の人が井上喜久子なんですね。『マクロスF』で既に悪役は演じていましたが、とうとうここまでヨゴレキャラを演じられるようになったかと思うと感慨深いものがあります(笑)。


 本作のMSについては、主役ロボの「バルバドス」を含め、非常に重厚で「陸戦兵器」感がある演出がされていて、なかなかカッコ良いと思いましたね。いや、宇宙戦闘もやってますけど。


 それで、今回の執筆にあたってWikiを読んでみたら、プラモもかなり売れていたようです。作品としては大成功でしょうね。


 また、本作の主題歌については、ファーストシーズンの前期オープニング「Raise your flag」と、前期エンディング「オルフェンズの涙」が非常に印象に残っています。「オルフェンズの涙」は紅白歌合戦でも歌われるという快挙をなしとげましたね。どちらも、作品の雰囲気に合った良いテーマソングだと思います。


 というところで、本作の総評なのですが、私が見た限りのところでは面白い良作だったのですよ。一度の失敗で見るのをやめてしまったのは、既に私の方の情熱が続かなくなっていたからだと思います。


 とはいえ、NHKのガンダム総選挙でオルガがキャラクター部門でアムロやシャアをおさえてトップを獲ったのには驚きました。いくら最新作でも、そこまで人気が出たのかと感心したものです。


 ところが、後日になってカクヨムの方でにゃべ♪様のエッセイ(もしくは近況ノート)を読んで、オルガの死に様について「サタデーナイトフィーバー」みたいに揶揄されてネタにされているというのを知って、そういうことも込みでの投票だったのかと、ようやく知ったという(笑)。


 それでググってみたところでは、どうやらメインスタッフは最初は「(クーデリアも含めた)全滅エンド」のつもりで作ってたのに、結局それが許されずに仲間が生き残るエンドになってしまったので、何か変な演出になってしまったみたいですね。このあたりについては、実際に見ていないので、これ以上の論評は避けたいと思います。


 さて、いよいよ次回が最終回『ナイツ&マジック』となります。最後までお付き合いいただけましたら幸いです。

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