第329話 天元突破グレンラガン(2007年)

 さて、今回は名作『天元突破グレンラガン』(以下グレンラガンと略記)に行ってみましょう。この時期にリメイクでもシリーズでもなく、完全オリジナルでこれだけの巨大ロボットアニメを作れたということ自体が素晴らしい作品です。本作はリアルタイムで地上波の放送を全話視聴しています。劇場版やスピンオフ作品などは見ていません。


 ガイナックスの新作巨大ロボットアニメということで情報を仕入れていたので、これは第1話から見ました。そして「面白い!」と最後まで見通しました。ストーリー面では、私的には非の打ち所が無い作品です。


 ただ、デザイン面で言うと、実はあまり好みではありません。ロボについて言えば、主役ロボのグレンラガンはまあ普通にカッコ良いのですが、頭部となるラガンは顔だけで、ボディになるグレンも合体前は顔だけです。というか、登場するロボが全般的に顔に手足が付いたデザインばっかりで、そのままズバリ「ガンメン」という名称で呼ばれていたりします。


 これ見て、「ああ、タカラ系だなあ」と思いました(笑)。『ジーグ』の頃から頭部が合体するロボがあり、『ヘッドマスターズ』とか、顔に変形する『グランゾート』とか、顔ロボというと何となくタカラってイメージがあるんですよね(笑)。まあ、この時代には既にロボの玩具を売るってビジネスモデルではなくなっていたのですが。


 なお、このグレンラガンはグレンという大型ガンメンに、小型ガンメンのラガンが本体下部のドリルを強引に突き立てて合体するという、結構無理矢理な感じの合体をしています(笑)。このため、グレンラガン自体が更に大型の機械(宇宙戦艦とか)にドリルを突き立てて合体して大型になっていくという形でパワーアップして、最終的には仲間たちの思いも取り込んで何と身長十万光年(!)の超々々々巨大ロボ「天元突破グレンラガン」になるという(笑)。あのユニクロン(『トランスフォーマー・ザ・ムービー』登場の惑星ロボ)を上回るサイズというのは、そうは無いのですが、こいつはそこまでデカくなるんですね(笑)。


 そこまでドインフレするのは珍しいのですが、これをきっちりと全二十七話の中でやりきってる所がまた凄いという。


 なお、上記のことから分かるように、本作ではドリルが非常に象徴的な使われ方をしています。パイルバンカーと並ぶロマン武器ですが、何しろゲッター2の頃からロボ武装として使われ、勇者シリーズでも欠かせないという扱いだったのですが、本作では作品全体を象徴する装備になっているんですね。そもそも、ラガンを起動するキーも「コアドリル」という小さなドリルです。


 そして、ストーリー上では人類が「螺旋らせん族」という遺伝子に二重螺旋を持つ種族として描かれているという。螺旋族は螺旋力というエネルギーを持っているんですね。一クールまでの敵は「螺旋王」という、その螺旋力で世界を支配している存在だったのですが、実はその螺旋王はより強大な敵「アンチスパイラル」が攻めてこないように世界を管理していたんです。アンチスパイラルはその名のとおり螺旋族を敵視し危険視していて、ある程度数が増えると攻めてくるので、攻めてこないように螺旋王が力で抑えつけて人間の数を増やさないようにしていたという。


 その螺旋が持つ力を象徴するのがドリルなんですね。


 さて、ロボのデザインは好きではないと書いたのですが、ではキャラクターはというと、これがまた好みからは外れているという(笑)。あ、ヒロインのヨーコとかニアはそんなに悪くないと思うのですが、どうも男性キャラが性に合わないというか。それと、ヨーコのコスチュームは上半身がビキニで下半身がホットパンツ&ニーハイストッキングとブーツという、ちょっと狙いすぎな衣装で、これまた好きになれないという(笑)。


 ただ、そのキャラデザの合わなさを補って余り有るほど、熱くて魅力的な連中なんですよ(笑)。


 主人公シモンは、最初はアムロ・シンジ系のうじうじキャラっぽい感じです。偶然コアドリルを手に入れるものの、兄貴分のカミナに従ってるだけで、自分の積極的な意志で動いてる感じがあまり無いという。


 それに対してカミナの方は、これぞ「ザ・主人公」って感じの熱いおとこでして。うじうじするシモンに「お前を信じる俺を信じろ! 俺が信じるお前を信じろ!!」みたいに激励するんですね。


 私、これ完全に読み誤ってたんですよ。てっきり「ダブル主人公」だと思っていたという。それぐらいカミナのキャラが強かった。


 だから、第一クールの途中で戦死したときには、もの凄く衝撃だったんですよ。いやね、そう分かったあとで見れば、こいつ死ぬよなってキャラではあるんですね。リュウ・ホセイだとかロイ・フォッカーだとかみたいに、こいつが死ぬことで主人公が成長するんだなって、そういうキャラなんですわ。


 そして、その死の原因のひとつが、実はヒロインのヨーコだったりするという。これがまた非常に珍しい類型のヒロインでして、シモンは最初こそヨーコに片思いするものの、結局一度もカップルになることは無いんです。ヨーコが選んだのはカミナで、カミナもそれを受け入れるという。ところが、それを知ってしまったシモンが失恋のせいで戦えなくなったのがカミナが戦死する遠因になるんですね。


 だから、シモンがカミナの死に非常に責任を感じていて、乗り越えるのにも時間がかかるんですが、そこをしっかり丁寧に描写しているという。


 そして、乗り越えたあとのシモンはもの凄く成長するんですよ。カミナのあとを継いでリーダーとして仲間たちを引っ張って螺旋王を倒すという。そして第二クールのときには、既にシモンがカミナ的な兄貴分の立場に立って立派に戦っていくという。


 ここまで正統的に急成長した主人公はそうは無いです。キャラまで変わってるんですが、そこの所の成長がしっかり描写されてるんで違和感が無いという。


 そして、シモンがヨーコに失恋したあとで好きになったのは、もうひとりのヒロインで、「螺旋王に捨てられた娘」のニアです。こちらとは両思いになるという。


 ヨーコが強気系の戦う女だったのに対して、ニアはおっとり天然ボケ系の姫キャラだったのですが、何と第二クールで「アンチスパイラル」のメッセンジャーだったことが発覚するという。本人すら知らなかったことで、シモンの恋人だったときの人格を失って敵に回るのですが、シモンの呼びかけで自我を取り戻し、最終決戦の場まで仲間たちを導く役割を担います。


 シモンにとっては、仲間たちや世界を守るということのほかに、ニアを取り戻すということもアンチスパイラルと戦う理由なんですね。


 ところが、最終決戦で勝利して、いざ結婚式となり二人が結ばれたところで、ニアの体が光になって消えていってしまうんです。元々がアンチスパイラルに作られた存在だったので、アンチスパイラルが倒されて無くなると自分も存在できなくなってしまったという。このシーン、凄く悲しいシーンなのに、実に美しいシーンでした。このシーンでシモンもニアも凄く優しそうな顔をしていたところが一番強烈で印象に残っています。


 とにかく、序盤のカミナの戦死と、最後のニアの消滅がもの凄く強烈な印象を残してるんですね。


 あ、ヨーコはカミナのあとにキタンという、やっぱり兄貴分タイプのナイスガイに惚れられるんですが、こちらも最終決戦で戦死するという男運の無さで、結局独り身のままだったりします。


 とにかく、作品全般を通して、無闇に「熱い」ハイテンションなんですよ。ギャグも色々と織り交ぜながらも、熱い戦いを描いていくという。


 もうひとり重要なキャラにロシウってクール系美男子がおりまして。第一クールではシモンの賢い弟分って感じのキャラで、カミナ亡きあとのグレンラガンのサブパイロットになったりもしたのですが、第二クールでは冷徹キャラに成長し、ひとりでアンチスパイラル襲来を予防しようと色々と画策し、さらにそれに失敗した場合は一部だけでも人類を生き残らせようと脱出計画も準備していたという。そのためには敬愛する兄貴分であるシモンを陥れることも辞さないのですが、表面上は冷徹にシモンを失脚させ処刑を目論見ながらも、人に知られない所ではそうせざるを得ないことに号泣していたんですね。


 こいつも脇役ながらキッチリ成長したキャラです。そして、このロシウが、シモンを陥れたにもかかわらずアンチスパイラルから逃げるための策が失敗して、結局はシモンに助けられたことに責任と負い目を感じて自殺しようとするんですが、そこで今度はシモンがカミナに言われたように「お前を信じる俺を信じろ! 俺が信じるお前を信じろ!!」って言ってロシウを立ち直らせるんですね。


 本当に全二十七話しか無いのに良いエピソードが散りばめられていて、面白い作品なんですよ。


 あと、オープニング主題歌の「空色デイズ」も良いんです! 歌っているのは、かのヲタク系タレント「しょこたん」こと中川翔子。第一クールでは一番、第二クールでは二番が使われていました。カッコ良さと作品の世界観を表すことを両立させた、良主題歌と言えるでしょう。二千年代以降のアニソンって、こういうのが増えたんですよねえ。


 とにかく、これは絶対に見て損は無い作品のひとつです。2000年代でも屈指の名作と言っていいかと思います。


 さて、次回はいよいよ2007年最後の作品『ガンダムOO』に行ってみましょう。

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