第328話 鉄人28号 白昼の残月(2007年)

 さて、今回のお題は『鉄人28号 白昼の残月』(以下『残月』と略記)。本作は2004年に作成されたTVアニメ版の『鉄人28号』(いわゆる「今川版鉄人」)の劇場版にあたる作品です。私はちょうどヲタク断捨離中だったので、TVの今川版は見てないんですよ。今川監督は好きなんですがタイミングが合わなかったというか。


 それで本作『残月』は、世界設定などは共通であるもののTV版からは一応独立した話になっているというのは知っていたので、CS放送で放映されたときに見てみたんです。


 作品としては、さすがに今川監督だけあって、なかなか面白かったです。これはTV版を見逃したのは失敗だったなあと思いました。ただ、それでDVD借りて見ようと思うほどではなかったのですが。


 あの元祖『鉄人28号』を二十一世紀においてリメイクする手法として、わざとリアルタイム当時、1950年代末を舞台にするというのは、さすがに上手いなあと思いました。東京タワーが建設中なんですよ。映画『ALWAYS三丁目の夕日』の公開は2005年なので、TV版はその前なんですが、本作はそのあとなんですね。ちょうどそうしたノスタルジーブームに乗ってたというのはあるかなと思います。TV版の時期からすると、むしろ先導していたと言うべきなのかもしれません。


 ストーリーは今川監督らしいケレン味が感じられて面白かったのですが、同時に劇場版ということで作家性もかなり強烈に出ていたなあという印象を受けました。具体的に言うと「父と子」です。


 今川監督の歴代作品を見ると、見ていない『ミスター味っ子』は除くとして、『ジャイアントロボ(GR)』も『Gガンダム』も、テーマとしては「父と子」なんですよ。このあたりは前に『GR』の所でも書きました。


 『GR』ではフォグラー博士と、その息子である幻夜、娘である銀鈴の話を軸に、それとダブらせるかたちで草間博士と大作少年を描いていたという。


 『Gガン』だと、ドモンが追うのは兄キョウジなんですが、その背景には冷凍刑にされている父親のカッシュ博士の影が厳然と存在しているという。そして、そのために不在である父親の代わりとしてドモンの前に立ちはだかる父性の象徴が師匠マスター・アジアなんですよ。


 何というか、歴代「父と子の葛藤と和解」を描いているんです。そして本作でもそれは変わらないという。そして、必ず「父親は直接的には不在」なんです。本作の金田博士も既に死んでいるという。代わりに「金田博士の養子」と称する、もうひとりの「ショウタロウ」が出てきて金田正太郎少年の前に立ちはだかるという。超克すべき存在として描かれるんですよ。構図としては『Gガン』と一緒なんですよねえ。


 その一方で『廃墟弾』という金田博士が残した大量破壊兵器も存在していて、それが物語のキーガジェットになっているという。その使用を阻止しようと正太郎たちが奮闘するわけで、これは「シズマドライブ」だなと(笑)。


 ロボについて言えば、これはもう「あの」初代鉄人28号を見事に再現しているわけで、何もコメントのしようが無いという(笑)。


 ただ、あの初代鉄人には「リスペクト」はあれど「ノスタルジー」を感じない世代なんですよ、私は。私のノスタルジーの対象は、やっぱり「太陽の使者」の方でして。


 なので、「面白い」「さすがは今川監督」とは思いつつも、それでもTV版まで見ようとは思わなかったんですね。


 とか言いつつも、主題歌として初代の「鉄人28号」が流れたときには、つい感動してしまったのですが(笑)。これは、まだ若かりし学生時代(つまりノスタルジーの対象の頃)にCDで聞いて知ってたからというのはあるでしょうね。


 さて、次回は名作『天元突破グレンラガン』に行きたいと思います。

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