第316話 機動戦士ガンダムSEED DESTINY その7 富野監督は正しかった編

 『DESTINY』語りも7回目、いよいよキャラ編に入るのですが、その前に本作の母艦であるミネルバについて語りたいと思います。今回のサブタイトルは、「主人公」について私が思ったことから付けました。意味は読み終わったらお分かりいただけると思います。


 さて、ミネルバですが、この名前って『クラッシャージョウ』の宇宙船の名前と同じなんですよねえ。外見的にも性能的にも前作の母艦アークエンジェルの影響を受けて作られてるっぽい感じがあります。陽電子砲積んでますし。


 ただ、外見はホワイトベースを意識してたアークエンジェルよりはオリジナリティがあります。主翼が艦首に近い方に付いてるというのは宇宙艦としては珍しい構造ですが、このために航空機っぽい外観になっています。


 インパルスとかセイバーみたいな新世代ガンダムを積むことを前提に作られてたらしく、インパルス専用のカタパルトがあったり、デュートリオンビーム発射装置が付いてたりします。


 実際、作中ではかなり活躍している母艦なんですが、最後はアークエンジェルとの一騎打ちに敗れて中破した上にインフィニットジャスティスの攻撃を受けて航行不能になり不時着しちゃうんですよね。艦長以下乗員は脱出に成功してはいますが。やっぱり、何か不遇な扱いの気がします。もっとも母艦は大破して乗員脱出ってホワイトベースもそうなんですが(笑)。


 さて、ここからキャラ編に入りましょう。まずは「主人公」シン・アスカです。名前がシンって、よく考えたら『エリ8』だから、そりゃ「オペレーション・タイトロープ」もやるわなって感じです(笑)。名字のアスカの方は『レイズナー』入ってますね。


 ググってみると「カミーユを更にワガママにした」みたいな評価があるのですが、実のところリアルタイムで見てたときは、そこまで身勝手とは思いませんでしたね。前作主人公のキラとは明らかにタイプが違いましたけど。


 ただ、そんなにひねくれてるワケではないんですよ。むしろ単純なタイプです。元はオーブに住んでいたのですが、前作の戦闘に巻き込まれて両親と妹を失っています。それで当時のオーブ首脳陣とナチュラルを憎んでいるという。そりゃ当然でしょう。


 ここで、妹の形見として大切にしてるのがガラケーなんですよね。2004年時点だったら違和感のないガジェットなんですが、2019年になってみると実に古いという。しかし、よく考えてみたらもう十五年もたってるんだから、当然と言えば当然なんですが。TV版の『エヴァ』(二十四年前)がメール機能も無い携帯で『ガオガイガー』(二十二年前)がポケベルと考えると、身の回りの通信機器の進歩には驚くものがあります。よく考えたら『エヴァ』ってWindows95が発売された頃で、ようやっとPCが家庭に普及し始めていて、インターネットなんてまだアメリカの大学とかでしか使われてなかった頃の話なんですよねえ。閑話休題。


 だから、こいつがカガリに敵意を持っていて、アスランのことも良く思っていないのは当然と言えば当然なんですよ。それ以外のルナマリアやレイとは普通に仲良くしてますし、ミネルバのタリア艦長にも逆らったりはしません。まあ、ときどき独断専行はやらかしますが、熱血系のロボ主人公としてはむしろ普通かと(笑)。


 だから、途中でステラ・ルーシェとの恋愛エピソードあたりまでは、こいつ普通に「主人公」なんですよ。ステラとの悲劇を通して成長もしてるんです。


 さらに、そこでキラのせいでステラが死んだことでキラと徹底的に対立することになり、執念でフリーダムを撃破します。このあたりまではいいんです。


※ここ、うっかり「ストライク」と書き間違えていました。ご指摘いただいたカイチ様ありがとうございました。


 そこで怨念を浄化させて、そもそもステラが強化人間として作られたのがブルーコスモスの妄執によるもので、その原因となったナチュラルとコーディネーターの対立こそが空しいものである……ということに思い至り、実はデュランダルがおかしいということに気付いていけば、こいつは主人公降板とか言われるハメにはならなかっただろうと思います。たぶん、こういう流れのシナリオがある『スパロボ』とか『Gジェネ』ってあるんじゃないかなと思ったり。


 ところが、そうならずにデュランダルを盲信し続けるという。このあたりで「シンが主人公」だと、明らかに「おかしい」流れにストーリーが動いていくんです。


 代わりに、一度は負けたキラが完全に主人公モードに入ってしまうという。それまでは「前作主人公」だったキラが本作でも「主人公」になってしまうんですよ。


 これ、実は『Zガンダム』で一番不評だった部分を踏襲「しなかった」結果なんじゃないかと思うんですね。『Zガンダム』では前作主人公だったアムロは一介の脇役に成り下がってるんです。初登場時は非常に情けない状態で、その後は強いエースパイロットとして復活はしましたが、活躍で言えば脇役レベルです。これは初代『ガンダム』のファンからすると非常に不満であり、『Zガンダム』が不評だった原因のひとつではないかと思われます。


 しかし、それじゃあ前作主人公を活躍させたらどうなってしまうのか。その結果がこの『DESTINY』ですよ。「主人公交代」とか言われるハメになるという。結果的にストーリーラインも大きくブレてしまい、作品としての統一感が無くなってしまったんです。


 そう考えると、前作主人公を「ただの脇役」に落とした富野監督は正しかったのではないかと思うんですね。いや、『Zガンダム』自体は「あれは失敗作だ」なんですが(笑)。


 結果として、シン・アスカというのは、ある意味伝説的な「主人公」になってしまったワケです。何しろ「主人公」兼「ラスボス」ですから(笑)。


 さて、次回は残りの「主人公」について語りたいと思います。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る