第287話 地球防衛企業ダイ・ガード(1999-2000年)

 さて、今回のお題は前回の『サイバスター』とうってかわって名作と言ってよい『地球防衛企業ダイ・ガード』です。全二十六話をリアルタイムで視聴しています。スパロボに参戦しているようですが、この頃にはもうスパロボでは遊んでおりませんので、完全にリアルタイム視聴時の印象のみです。


 本作の特徴は、何と言っても「民間企業が運営するスーパーロボット」であるという点です。その点では『トライダーG7』と一脈通じるものがありますが、あちらが零細中小企業であるのに対して、こちらは一部上場っぽい雰囲気の大企業です。竹尾ワッ太が社長であるのに対して、本作のパイロットたちは全員がひらのサラリーマンです。


 巨大ロボットアニメではありますが、リーマン群像劇でもあるんですよ。なので、巨大ロボ推進派の社長を失脚させようとする専務派との社内派閥抗争なんてのが描写されたりもしています(笑)。


 また、恋愛模様も社内恋愛なんですね(笑)。三人のパイロットのうち、女性がひとり居るんですが、主人公格のメインパイロットと恋愛関係にならないという(笑)。主人公と恋愛関係になる女子社員は別に居るんです。物語上のヒロインと主人公のヒロインが分離しているんですよ。


 いろいろと作中で謎があったりしますし、敵である怪獣「ヘテロダイン」については、結局自然現象みたいな扱いで発生原因も最後までよくわからなかったりはするのですが、そんなことはストーリーを楽しむ上では何の妨げにもなりません。


 主役ロボである「ダイ・ガード」は、そのヘテロダインによる最初の襲撃に際してOE兵器という「核っぽい何か」(笑)でしか撃退できず大損害を出したことから建造されたスーパーロボットなのですが、肝心のヘテロダインが十年以上出てこなかったので民間の警備会社に払い下げになったという(笑)。


 それで戦闘用ではなく宣伝用に使われていたんですね。そのため、外装は形だけで装甲が薄く、中身もスカスカの張りぼて状態にされてしまったという。主人公たちの所属も「広報2課」だったりします。


 ところが、そこに十二年ぶりにヘテロダインが出てきてしまったので、そのスカスカ張りぼてロボで戦うハメになるというのがメインストーリーです。


 最初はスカスカ張りぼて状態ですし、三パーツに分離しているのをトレーラーで運んで現地で組み立てなくてはいけなかったり、武装がまったく無かったりと、外見上はカッコ良いのに中身はボロボロだったダイ・ガードですが、話が進むにつれて装甲は厚くなり、メイン武器として「ノットバスター」――要するにパイルバンカー(笑)――が装備されたり、単体で分離合体できるようになったりと、かなりパワーアップしていきます。


 ただ、このパワーアップ描写のうち、きっちり描かれたのはノットバスターの装備ぐらいで、分離合体なんていつの間にかできるようになっていたという(笑)。伝統的巨大ロボットアニメなら力入れるところをすっ飛ばして、社内の派閥抗争の方を描いてたりするんですよ(笑)。ただ、それが決してつまらないわけではないんですね。


 ライバルロボとして、ダイ・ガードのプロトタイプを元に改修した「コクボウガー」なんてのが途中で登場したりもしていました。


 敵であるヘテロダインとの戦闘描写は手抜きをしておらず、非常に面白く、また迫力もありますし、性能的に劣るダイ・ガードがどうやって戦うのかという点で毎回工夫をこらしていたりと、巨大ロボットアニメとして見るべき点は多くあります。


 しかし、それ以上に「民間企業が巨大ロボを運営する」ということについての「敵」が多いんですよ(笑)。社内の規則だったり、コストだったり、法律だったりというような障害をどうやって乗り越えていくかみたいな部分をきっちり描写してるんですね。それも、シリアスタッチではなく全般的にはコメディタッチで。


 なので、全編通して楽しく見ることができるんです。


 シリアスな部分でも、熱血バカな主人公の成長を描いたりとか、ヒロインが戦う心の支えだった父親の実態を知ってショックを受けたりとか、しっかりしたドラマがあって面白かったんですよ。


 そして、これは完全に作品のターゲットが子供ではでした。そりゃそうだ、こんな内容で子供に受けるはずが無い。


 本作は完全にヤングアダルト層のオタクをターゲットにした作品でした。玩具ではなく、DVDやCDの販売やメディアミックスでのグッズ販売を考えた作品です。そういう意味で正に『エヴァ』以降の作品と言えるでしょう。


 そう考えると、この作品のターゲット層がわかります。70年代に巨大ロボットアニメで育ち、ちょうどこの頃に入社3~5年目頃で新人とは言えなくなったけど、まだ平のサラリーマンがターゲット層です。だからこそ、主人公たちは、そういったターゲット層とほぼ同年代になっているのでしょう。


 だからか、既存作へのオマージュも結構あります。ヘテロダインは完全にエヴァの「使徒」を意識していますね。主人公たちの所属が「広報」なのはパトレイバーが元ネタでしょうし。そういったネタを楽しむ層をターゲットにしているのでしょう。


 それから、オープニング主題歌の「路地裏の宇宙少年」は名曲です。ロボ名や番組名こそ出てきませんが、作品の世界観に非常にマッチしており、またオープニング映像も秀逸でした。エンディングの「走れ走れ」もまた名曲と言えるでしょう。Wikiによると、オープニングは監督が作品の世界観を示して作詞作曲してもらったそうですし、エンディングは逆に作品に合う曲を選んで起用したそうですから、作風に合っているのも当然でしょう。


 そういえば、リアルタイムで見ているときは監督が誰かなんて気にしてなかったのですが、今回調べてみたら何とのちに『ガンダムOO』を監督することになる水島精二監督ではないですか! この前には『ジェネレイターガウル』の監督もしていたみたいですし、このあとには『鋼の錬金術師』シリーズも監督することになります。そりゃ面白いワケだよ。


 本作は作画も良く、シナリオやストーリーも良質で、一般的な評価や知名度はさほど高くありませんが、この99年を代表する名作と言っていいかと思います。これをリアルタイムで見られたのは幸せでしたよ……口直しという意味でも(笑)。

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