第223話 新世紀エヴァンゲリオン その6 私が死んでも代わりはいるもの編

 エヴァ語りも6回目、ここからはヒロインズについて語りたいと思います。そこで、サブタイトルは本作のメインヒロインの綾波あやなみレイの名セリフからいただきました。


 この非常に意味深なセリフは、レイが実はクローンであることを予告したものです。それは、やがて作中において「たぶん私は三人目だと思うから」というセリフで補強され、培養槽に浮かぶ無数のレイという形でビジュアルでも表現されます。


 ただ、これ斬新かというと、要するにネタ的には『コンV』の「大将軍ガルーダの悲劇」なんですよね。ガルーダと違ってレイ本人が自覚してますけど。


 最初はゲンドウにしか心を開いていない様子が描写されています。零号機の起動実験の際に壊れたゲンドウの眼鏡を大事に持っているほか、ゲンドウにだけは笑顔を見せるとか、ゲンドウと不仲のシンジを非難するといった行動ですね。


 ところが、シンジと共に戦う中でシンジにも心を開いていき、やがて微妙な恋心を持っていく感じに描写されています。前にも書いた「笑えばいいと思うよ」とかの積み重ねですね。


 そして、最後はシンジを守るために自爆するという。それで死んだと思われていたのに、病院では無傷で姿を現します。そこで言ったのが前述の「たぶん私は三人目だと思うから」なんですね。そして、シンジと親しくなる前の態度に戻っているという。


 ですが、劇場版では結局、止めるゲンドウを振り切って「碇君が呼んでる」とシンジの元へ向かうんですね。


 このあたり、やっぱり本作のメインヒロインはレイなのかなあと思ったりするのですよ。もっとも、シンジの方は一貫して「綾波」と名字で呼んでいるんですが。


 その正体は碇ユイのクローン……だと思っていたんですが、Wikiによるとユイとアダムの遺伝子を元に作られたクローンで、リリスの魂を宿した存在だとか。


 さて、このレイについては、こうした作中での位置づけだけでなく、のちのエンタメヒロインに及ぼした影響の大きさについて語らないといけないでしょう。


 これ以前にも少数例が存在した無感情系ヒロインですが、大流行のきっかけとなったのは、間違いなくレイでしょう。


 初登場時は包帯に巻かれて重傷であることが明示され、それでも戦おうとする。この時点では「冷静」かつ「勇敢」という見方もできるのですが、やはり無感情で無機質な感じに演出されていました。


 その後もたびたび自分を省みずに戦おうとする姿勢は見られるほか、とにかく感情の動きが乏しいという描写が積み重ねられていきます。


 一番印象的なのは、レイが暮らす私室をシンジが訪れたときのことでしょう。とにかく殺風景で荒れた部屋が、レイの無感情ぶりと、自分を大切にしない態度を象徴しているという。


 そこで、下着に男物のYシャツを羽織っただけというレイに出会ってしまって慌てるシンジに対しても無感情に応対するレイ。さらには、ラッキースケベで胸を触られても無感情な態度は崩さないという。


 このあたりのクールな態度にハートを打ち抜かれたヲタは多いんじゃないかなとか思ったり(笑)。


 キャラデザの大きな特徴としては、白みがかった青色のショートヘアと、赤い瞳があります。現実にはあり得ないカラーリングですが、これが人間離れした少女であるレイには非常に似合っていたという。プラグスーツの色は白です。


 このレイを演じていたのは、既にして声優として円熟期に入りつつあった林原めぐみです。若手の頃から演技力には定評があり、私の弟はまだ若手時代の林原めぐみについて「ババアの演技が凄く上手い」と非常に高く評価していました(笑)。


 その林原めぐみのインタビューを読んだことがあるのですが、この当時、レイの演技をするのは精神的に非常にきつかったというのです。ただ、この頃、レイとは真逆の役を演じていたので、それで救われていたという面があったと。その役が『スレイヤーズ』シリーズの主人公「リナ・インバース」なんですね。元祖ラノベ、元祖ジャパニーズファンタジーと言っていい名作のアニメ化作品です。ラノベのメディアミックスの元祖でもあり、スレイヤーズの成功があったからこそ、今日のラノベ原作アニメの隆盛があると言っても過言ではないでしょう。閑話休題。


 あの林原めぐみをして、精神的にきついと言わしめた強烈なキャラクターだからこそ、大人気となり、のちのエンタメヒロインに「綾波系」と言っていい無感情系ヒロインが多数出現するきっかけとなったのでしょう。


 もうひとりのヒロインであるアスカと並んで、フィギュアなども多数販売されました。特にレイについては究極的には「1/1スケール」というサイズ的にも金額的にも正気の沙汰ではないようなシロモノまで販売されたという(笑)。


 それまでもアニメキャラのフィギュアという商品は存在しましたが、その存在がメジャーになったのは、おそらく『エヴァ』からだと思います。その原動力のひとつがレイだったのではないかなと思えるのですよ。


 これは、巨大ロボットアニメの、いやアニメのマーチャンダイズ商品として、非常に画期的でした。ロボの玩具以外で「売れる」商品が増えたということです。


 そうした面においても、非常に影響力があるキャラだったと言うことができるのではないでしょうか。


 あ、レイの「一人目」については赤木リツコの所か、あるいはゲンドウの所で書きたいと思います。


 実は自作『ブレバティ』でもレイをオマージュしたサブヒロインを出す積もりだったんですよね。レイ→RAY→ヒカリの変換で主人公の双子の妹ヒカリが、当初設定だと「明朗快活な妹」が洗脳されて「無感情少女」になるはずだったからなのです。なお双子が洗脳されて敵に回るというネタは『ゴッドマーズ』のマーグから。しかし、ガチ洗脳だとストーリー全体のコンセプトと噛み合わないと気付き、洗脳されたようにしているのは演技という設定に変更した……のが運の尽き(笑)。レイとは似ても似つかない演技好きの腹黒少女になってしまいました(爆)。そして、名前がヒカリだと、そもそも洞木ヒカリというキャラがエヴァに居たということを、シンカリオンコラボの記事で初めて気付いたという迂闊(笑)。


 ああ、今回はこれでタイムアップです。アスカについては次回に語りましょう。それでは、今回も締めはコレで。


「この次も、サービスサービスぅ!」(爆)

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