第216話 新機動戦記ガンダムW その11 戦場のヒロイン編

 W語りも11回目、そろそろ巻いていきたいところです。今回はライバルのヒロインであるノインとレディ・アンについて語りたいと思っています。なので、サブタイトルはノインの活躍回で一番それっぽい第29話のサブタイをそのままいただきました。


 さて、そのルクレツィア・ノインですが、この人、不思議なことに全員から名字で呼ばれてるんですよ。彼女を最も信頼しているゼクスからでさえ。もっとも、その「ノイン」はドイツ語の「9」なのでガンダムパイロット並みの扱いではあるのですが。


 パイロットとしての実力はトーラスの所で説明したとおり、ガンダムパイロット並みです。もっとも、初戦で五飛と戦ったときはエアリーズで負けてますが、これは相手が子供だったことに躊躇したという理由があります。


 このあたり、軍人として多少の甘さはあるのですが、リアクションとしてはむしろ常識人の範囲でしょう。


 何より、こいつはゼクスを深く愛しているにもかかわらず、その行動を盲信したりはしないんですよ。そのあたりが、レディ・アンと徹底的に違うところだったり。


 ゼクスの頼みでリリーナの補佐役になり、そのあとはリリーナが流された先にとにかくついていってリリーナを守ろうとするという。ところが、肝心のゼクスがリリーナとは敵対する方に回ってしまうんですよ。そこで、リリーナの元を去ってゼクスの方に行ったりせずに、ゼクスの行動の方がおかしいと止めに回るという。


 とはいえ、ゼクスを撃つことまではできませんでしたが、まあ、それは当然と言えば当然でしょう。それを不覚悟と責めるのは五飛あたりに任せておきましょう。


 要するに、Wの登場人物の中では、一番感性がマトモなんですよ。普通人っぽいという。スペックが壊れてる割にはマトモ。ただまあ、デュオと同じで、マトモだからこそ貧乏籤を引いてるという印象はあります(笑)。


 『Endless Waltz』では世界の平和を守るプリベンターの一員として活躍していました。ウインドと一緒に無双した上で、最後は一緒に火星に旅立ったというのは既に書いたとおりです。


 いろいろと問題行動を起こしたゼクスはともかくとして、この人が幸せになったのは良かったんじゃないかと。


 逆に言うと、この人みたいな優れものの嫁が居たゼクスは本当に幸せ者であって、そうでなきゃシャアと同じ末路をたどったであろうことは疑う余地は無いという(笑)。だって、この人の包容力ならゼクスの嫁としてだけじゃなくて「母親」にもなれそうだし(爆)。


 そうそう、声優は『ジャンプ放送局』のアシスタントもしていたことで有名な横山智佐です。ガンダム系では『Vガン』であのV2を水着姿で襲撃するハメになった部隊の指揮官ネネカを演じていました。まともな役でスパロボに出られて良かったねえ(笑)。そういや彼女の当たり役である『サクラ大戦』の真宮寺さくらも実はロボパイロットなんだよなあ。ゲームやってないしアニメも見てないから本作では語りませんが。閑話休題。


 さて、そのノインとは対照的な形で「愛に生きる」人がレディ・アンです。この人の名前も非常に不思議で、尊称である「レディ」が必ずついているという。そして、どう考えても「アン」ってファーストネームであって、ファミリーネームが不詳なんですよ。まさか「レディ」がファーストネームで「アン」がファミリーネームじゃないでしょうね?(笑)


 ヒイロの所でも書いたように、「アン」はフランス語の「1」にあたります。この人もガンダムパイロット並みの能力の持ち主なんですね。当然のようにMSパイロットとしても優秀で、リーオーでシェンロンガンダムと互角に戦ったりしています。最後は修復されたウイングに乗って戦艦リーブラの強力な主砲からトレーズをかばってウイングを失っています。まあ、それでも生還しているあたり、生存能力もガンダムパイロット並みなんですが(笑)。


 この人の場合、初登場時はとにかく冷徹かつ冷酷な性格で、リリーナの義父であるドーリアン外務次官を暗殺したり、コロニーを人質にとってガンダムパイロットに降伏を促すなど、手段を選ばない人という印象が強かったんですよ。


 ところが、中盤になっていきなり性格が激変して、非常に平和的でリリーナ以上に脳内お花畑な言動を取るようになるという。私は最初は「演技だな」と思っていたんですよ。ところが、作中でトレーズが「私を愛するあまり心を病んでしまった人がいる」みたいに言ったんで、初めて本当に性格が変わったとわかったという(笑)。


 なので、キャラの変貌ぶりというかブレ方は作中でも一番ひどいんですね。ただ、それが明確に「心を病んだ」と言われているので、納得はできちゃうんですよ。


 これが、トレーズ本人も言っていたように、全部トレーズのためなんです。それくらいにトレーズを愛していたという。ところが、作中ではトレーズの方がレディ・アンの愛に応えている様子が無いという。大切には思っているようなんですが、女としては愛してないんですね。


 何でかと思ってたら『Endless Waltz』でマリーメイア・クシュリナーダという娘が出てきたという。実の娘じゃないという疑惑もあるみたいですが、その母親をトレーズが愛していたということは事実みたいです。


 最終的には二重人格を統合してトレーズの理想のために働き、その死後も彼の理想のために働こうとプリベンターを組織して、その指揮官となっています。


 『Endless Waltz』では、そのプリベンターの指揮官として活躍し、最終的にはマリーメイアを引き取って母親代わりになったようです。


 とにかく、キャラのブレ方でいうと『Vガン』のガンダム三大悪女カテジナにも匹敵しますし、作中前半のやり口の悪辣さはファラ・グリフォン以上なんですが、それなのに悪女みたいな言い方をされないのは、ひとえにトレーズへの一途な愛情が本物であることと、それなのに報われていないからじゃないかなとか思ったり。


 さて、次回は残りの主要キャラであるドロシーについて語って締めたいと思います。

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