第214話 新機動戦記ガンダムW その9 ミリアルドの決断編

 W語りも9回目、ライバルキャラ兼ラスボス二人について語りたいと思います。サブタイトルは、そのうちのひとり「二代目赤い人」ことゼクス・マーキス、本名ミリアルド・ピースクラフトの名前がフィーチャーされた第46話のサブタイをいただきました。


 えー、「二代目赤い人」と書きましたが、この人、どこをどう切ってもシャア・アズナブルの再来です。主人公のライバルです。顔の上半分を隠す仮面を着けています。凄腕のエースパイロットです。ヒロインの実兄です。亡国の王子です。


 愛機が赤い色でないことを除いたら、すべてにおいてシャア以外の何者でもないという設定だったりします。


 が! 大きな違いがひとつあります。こいつは別にヒイロに女を殺されてません(笑)。そのせいで、女の恨みについては持ってないという。


 あと、ノインという非常にできる女に愛されているので、シャアのように女性問題を引き起こしていないという(笑)。


 また、ザビ家のような直接的な仇がいないので、ガルマを謀殺したような黒い面は見せていません。そのため、策謀家的な側面はシャアより薄まっています。


 それから、シャアよりは直情的なのと、作品自体の展開が早いのでシャアよりも行動が場当たり的に思えてしまうという。


 その一方で、ヒイロと正々堂々と決着を付けたいがために、いちいちウイングを修理して、互角の性能があるトールギスを二十年ぶりに現役復帰させるとかは、シャアと同じ稚気があります。


 こいつも作中での言動に矛盾があって、ピースクラフト王家の王子として活動しながら、ゼクスとして戦っていたりもするんですよ。最終的にはシャアと同じ絶望感から、「ホワイトファング」という組織のリーダーとなって、地球に核の冬を起こそうとして戦艦リーブラを地球に落とそうとしますが、それはヒイロのゼロに阻止されます。


 この点ではラスボスでもあるんですよね。


 そこで行方不明になったものの『Endless Waltz』ではちゃっかりプリベンター・ウインドとして正体バレバレの登場をしてノインと一緒に無双したのは前述のとおりです。そのままノインとよりを戻して共に火星に旅立つという。Wikiによると、その後を描いた小説ではノインとの間に子供が生まれたということです。


 私はこいつの徒名は「ライトニング・カウント」だと思っていたんですが、その前には「ライトニング・バロン」だったとWikiには書いてありました。だったら元ネタはシャアと同じくリヒトホーフェンですね。


 ゼクスというのは、ドイツ語で六なので、数字が元ネタのガンダムパイロットと同格ということになり、最終的にはエピオンに乗っています。


 トールギスが白で、エピオンが黒なので、機体の色には特にこだわりが無いようです。ゼクスに限らず、W世界では愛機の色でエースの存在をアピールするという風習が無いのでしょう。


 こいつも言動がブレブレなんで、何がやりたいのか理解も共感もできないのですが、カッコ良さだけはあったりします。まあ、言動がブレブレなのはヒイロのライバルでリリーナの兄なんだからしょうがないかなとか思ったり(笑)。


 さて、もうひとりのライバル兼ラスボスがトレーズ・クシュリナーダです。ただ、こいつがライバルなのはヒイロではないという。五飛のライバルなんですよ。


 作中のポジションとしては、倒すべきラスボス格のはずなのですが、これがまた非常に複雑なことに、ラスボスポジションから一時失脚しているという(笑)。こんなラスボス前代未聞ですよ……と言いたいのですが、特撮番組だと『科学戦隊ダイナマン』のメギド王子とか、『超力戦隊オーレンジャー』のブンドルト皇太子みたいに、王子ポジションから一時的に失脚してラスボスに成り上がるタイプのラスボスは居ました。ただ、元々ラスボスポジションだったのが失脚して復活というのは、ちょっとほかに思い当たりません。


 こいつは、思想的には特にブレは無いのですが、その思想が少し変です(笑)。人の手による戦いを肯定しますが、戦争の悲惨さは否定するという。


 ……これを矛盾無く両立させるためには「ガンダムファイト」を開催するしか無いんじゃね? とか思ってしまったことは秘密だ(笑)。


 思想にはブレが無いものの、言動の方は多分に気分屋的だったりします。クーデターを起こして自らが主導する秘密組織OZオズが世界の覇権を握ることに成功したのに、スポンサーのロームフェラ財団がMDによって戦争を行うことに反対して指導者を解任されるという。そこで一歩引いちゃうんですね。のちに指導者に返り咲くことからすると、いくらでも自分が権力の座にとどまる方法があっただろうと思うのですが、そこで引いてしまうという。


 このあたり、ラスボスのくせに妙に煮え切らないところがあるんですよね。失脚したあとにヒイロにエピオンを与えたりもしています。


 OZの総帥に返り咲いたあとは、地球に核の冬を起こそうとするゼクスと対立して、最終決戦を行う形になります。


 ところが、その最終決戦の最中に戦う相手が、ゼクスでもヒイロでもなく五飛だという。あげくの果てに、手加減したような感じで五飛に討たれて戦死してしまいます。


 このあたりの「一歩引いてカッコつける」ところは首尾一貫してるんですよ。そのため、ブレブレ感は無いのですが、やっぱり理解も共感もできないという(笑)。


 レディ・アンはこいつにベタぼれしているのですが、トレーズの方はそれを理解して、また彼女のことを大切には思っていたようではあるのですが、「女」としては見ていなかったフシがあります。


 何でだろうなあと思っていたら、『Endless Waltz』でマリーメイアという娘が出てきたという。そうか、別に愛する女がいたんだと納得はしたものの、こんな幼い娘がいるのに自殺同然に戦死するとは無責任だとも思いました。ただ、このマリーメイア自体がトレーズの本当の娘ではないということも示唆されていたので、真相は藪の中だったりします。


 パイロットとしての腕も非常に優秀で、設定上のスペックが劣るトールギスⅡで五飛のアルトロンと互角に戦っていました。また、生身の戦いで五飛を圧倒したこともあり、身体能力も優れています。性格的なムラが無ければ最強じゃないかなとか思ったり。


 あと、この人のキャラデザ的特徴で言うと、眉尻が二叉に分かれています(笑)。広い額と二叉の眉という特徴を持ったキャラは、実は本作にもうひとり出てくるのですが、その女性については改めて語りたいと思います。


 それでは、次回はガンダムパイロットに行きましょう。

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