第206話 新機動戦記ガンダムW(1995-96年)
さて、今回からのお題は『新機動戦記ガンダム
本作は、ガンダムシリーズの中でも屈指の「人気作」「成功作」です。商品であるプラモは売れ、ビデオも売れ、キャラのグッズや関連書籍が売れました。本来のターゲット層である少年層やガンダムオタクはもとより、今日では腐女子と呼ばれるようなオタ女子層にも売れたんです。その人気から、続編のOVA『
ですが、私個人の評価で言うと、本作は「最低レベル」の「駄作」です。ガンダムシリーズの中では『Zガンダム』や『Vガン』と並ぶ最低評価作になります。
何がダメか。ストーリーです。キャラの動きが意味不明で説得力が皆無のため、ストーリー展開にまったく納得できないという。
ロボのデザインやキャラデザについては、それほど好きではないものの、決して減点評価になるようなものではありませんでした。特にキャラデザは気にくわない場合は一話切りや最初から見ないという選択肢を取る場合が多いのですが、本作の場合はそういう気にはなりませんでした。にも関わらず、私の中で『W』の評価は最低です。
ほかの低評価作でいうと、『Zガンダム』は実のところ当エッセイ最長回数を費やしてしまったように、MSのデザインは決して嫌いではなく、詰まらないとは思いつつもストーリーについても結構語れたりはするんですよ。『Vガン』について言えば、あのバイク戦艦アドラステアや怪獣MAドッゴーラなど、ネタ的に語れる内容は多いんです。
それらに比べても、本作『W』の評価はひときわ低くなります。それほどまでに、ストーリーが酷かったんです。
た、だ、し! そのストーリーが低評価になるということについて、明確な分岐点が存在するのが、本作の特徴です。
実のところ、私はリアルタイムで見ていた当時、第10話までは本作を「初代ガンダム以外では最高傑作になるかもしれない」と思っていたんです。
そう、ある意味「伝説」の第10話。主人公ヒイロ・ユイが「任務了解」の一言で一号主役ロボ「ウイングガンダム」(以下ウイングと略)を自爆させてしまった、あの回までは、本作は「気が狂うほど面白い」作品だったんですよ(爆)。
登場人物の言動が「おかしい」ということについては、実の所、あとの方と同じなんです。ただ、その「おかしい」方向性、「狂い方」が非常に面白かった。
地球に降下してお金持ちの坊っちゃん嬢ちゃんが通う学校に潜入する主人公ヒイロ。その降下の様子を偶然見てしまったヒロイン、リリーナ・ドーリアンが興味をもってパーティへの招待状を彼に送ると、それをリリーナの目の前で破り捨てるヒイロ。「ひどい」と泣き崩れるリリーナに、他人には聞かれないようにボソッと一言「お前を、殺す」。
何じゃこのメチャクチャな展開は!? だが、そこがいい!!(爆)
正直、この第1話のストーリーを見たときには、この狂い方で最後まで突っ走ったら、『Gガン』以上の大怪作にして大傑作になるだろうと思っていたんですよ。
ところが、そうやって狂っていたのは、第10話、ヒイロがウイングを自爆させるところまででした。
それ以降は、狂ってはいるものの、何だか期待していたのとは違う方向に狂っていくんですね。
ヒロインのリリーナは、「絶対平和主義」を標榜するピースクラフト王家の生き残りだったことがわかり、改めて「絶対平和主義」を唱えるようになります。元々が苦労知らずのお嬢様で脳内お花畑系のヒロインではあったものの、その変な方への狂い方が半端じゃなくなるという。完全無抵抗の平和主義を本気で推進しようとかして、その象徴になってしまうんですよ。
このリリーナの言動のおかしさについては、演じた声優である矢島「初代クレヨンしんちゃん」晶子が、リリーナのことを理解できなかったので収録に行くのが苦痛だったと語っていたことがあるくらいです。明確なソースはおぼえていないのですが、ネットでググると、この内容が書かれた記事は見つかります。
本作は登場人物の全員がある意味で「おかしい」「狂っている」作品なんですが、このリリーナのズレっぷりは相当にひどく、歴代ガンダムヒロインの中でも、私の中での評価はワーストワンです。あの「ガンダム三大悪女」ニナ・パープルトンを上回る最低評価なんですよ。
ニナ自身については、酷い女だとは思っても、あの程度の裏切りをする女なんて現実にも多々いるわけで、むしろリアリティがある性格だと言ってもいいくらいですから。「フィクションのヒロインとしてどうよ?」とは思っても変な性格だとか、思想がおかしいとは思いません。
本人に悪意が無いのに行動のせいで周囲に不幸をまき散らすという点では相似の「死神」シャクティに比べても、その思想のおかしさと無責任な言動については勝ります。
また、のちにリリーナと同じような「脳内お花畑」系列ヒロインで平和の象徴になるという展開も同じ『Seed』のラクス・クラインも相当にアレな性格をしているんですが、ラクスは戦争終結後に責任放棄をやらかすものの、戦争の終結に至るまでは、指導者として指揮官として、きちんと戦う姿勢は見せているんですよ。
さらに新しい作品『鉄血のオルフェンズ』のヒロインであるクーデリア・
本作は色々な意味で狂っているので、その責任のすべてをリリーナに押しつけるのは公正さを欠くかもしれませんが、それでも半分以上の責任はリリーナにあるんじゃないかと思えます。少なくとも、その「狂い方」が詰まらない方向に向かった責任はリリーナにあると私には思えます。
第1話でヒイロが宣言した「お前を、殺す」を第2話で実現してくれていたら、本作はもっと「狂ったように面白い」作品になっていたんじゃないかなあ、などと思えてしまうのですよ(爆)。
何か、作品総論を語るつもりがヒロインについて語る回になってしまったのですが、本作の本質的な問題はここにあるかなと私は思っているので、しょうがないのです。
次回は、とりあえず主役ロボである「ウイングガンダム」と、その後継機「ウイングガンダムゼロ」やライバル機にして二号主役ロボであるという異例の機体「ガンダムエピオン」について語りたいと思います。
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