第204話 マクロス7(1994-95年)

 ガンダムシリーズ最大の異色作が『Gガン』なら、マクロスシリーズ最大の異色作が本作『マクロス7』でしょう。正式タイトルが『マクロス7』のみで「超時空要塞」が冠されていません。本作についてはリアルタイム当時に全話見ております。スパロボの参戦作品は遊んでおりません。


 本作は、前作『マクロス』の要素を受け継ぎながらも、視聴者の期待する「マクロスの続編」の方向性とは大きく違ったという意味においては、奇妙に『Gガン』と相似する部分がある作品になります。


 何しろ、主人公が戦いません。歌います。


「俺の歌を聞けぇ!」


 主人公である熱気ねっきバサラの決めゼリフです。彼が駆るのは「VF-19改ファイヤーバルキリー」。ミサイルこそ積んでいるものの、メインの装備はスピーカーです。彼がギターをかき鳴らして歌う歌声を宇宙に拡散します。どうやって真空の宇宙に歌を流しているのかとか、気にしたら負けです。前作『マクロス』だってミンメイの歌を流してたじゃないですか。作中後半では「サウンドエナジー」という歌を元にしたエネルギーを放出できるスピーカーがオプションで追加されました。


 こいつ、何と顔があります。口が付いてます。バトロイドとしては異例なんですよ。カラーリングは全身朱色で、黄色のアクセントが入っています。飛行機形態だと前進翼機に変形します。


 これに乗る熱気バサラというのが、とにかく変人(笑)。自分の歌で己のハートを相手に伝えることしか考えてません。ラブ&ピースです。戦おうとしません。


 ところが、作中で余りにも相手が歌を聞いてくれないので、業を煮やして一度ミサイル撃っちゃったことがあります。ところが、そのミサイルを恋のライバル(笑)であるガムリン木崎きざきが撃ち落として叫ぶんですよ。


「お前は歌うんじゃなかったのか!?」


 これが名シーンになるというあたりで、どういう作品か想像がつくかと思います。


 ヒロインはミレーヌ・ジーナス。『マクロス』の名脇役マックスとミリアの末娘(何と七女)です。ピンク色のカラーリングのVF-11改に乗って、バサラのバンドである「ファイヤーボンバー」のサブボーカルとして歌います。歌姫役なんですね。


 そのミレーヌを巡ってバサラの恋のライバルとなるのが、ガムリンです。こちらは生粋の軍人で、ステルス戦闘機F-117似の黒塗り機体VF-17に乗って、こちらは「真面目に」戦います。ただ、それが敵に通じないという。その中で、最初は色物扱いしていたバサラが、真摯に歌で「敵」とコミュニケーションを取ろうとしているのを理解し、最後は応援するようになります。


 なお「恋のライバル」に(笑)が付いているのは、恋愛について意識しているのがミレーヌとガムリンだけで、バサラの方は大して意識してないためです(笑)。ミリアによってミレーヌとガムリンがお見合いする所から始まったのですが、ミレーヌはバサラにも惹かれていくという。前作『マクロス』とは三角関係の男女比が入れ替わっています(笑)。


 バサラのバンド仲間にレイ・ラブロックとビヒーダ・フィーズというのが居て、複座のVF-17改に乗ってバサラとミレーヌの歌に合わせて伴奏しています。レイは元軍人で結構顔が広く、バンド仲間が乗るバルキリーを調達してきたのも彼です。ビヒーダの方は、とにかく無口な女性で、あまり話してるシーンが記憶にありません。


 ミレーヌの父であるマックスは、本作の舞台になる移民船団「マクロス7」の船団長であり、船団旗艦「バトル7」の艦長です。偉いんです。それに対して母であるミリアの方は、軍を退役して「マクロス7」の民間人代表である市長に選挙で選ばれています。作中で支持率は高いという風に言われていた記憶があります。


 この二人が、外見上はとても五十代には見えない若々しさという(笑)。ただ、三十五年もたつと色々と変わっておりまして、特にミリアの変貌っぷりが凄いんですよ。外見とうらはらに思考回路が完全にオバさん化してるという(笑)。あの文化に対して初心うぶだったミリアはどこへ行ったのやら、完全に文化生活に漬かりきっていて、恋愛そっちのけで歌手活動を続ける娘にお見合いさせたりしています。その一方で現役軍人時代に使っていたVF-1Jを払い下げてもらったのか、私物として持ってたりもしました。これが作中で壊されたときには「私のバルキリーが……」と嘆いていましたね。


 この二人、『マクロス』時代はラブラブだったのに、三十五年もたつと倦怠期もいいところで、さらには職業柄、軍の代表であるマックスと民間人代表であるミリアの利害が対立することもあって、離婚寸前まで冷え切っていました。かすがいの子もミレーヌ以外は独立してマクロス7船団には居ませんし。


 ただ、作中で娘であるミレーヌが仲を取り持ったおかげで仲が修復され、最終作戦時には新鋭戦闘機VF-22で単機出撃するマックスの代わりに一時的に軍籍復帰したミリアが船団とバトル7の指揮をとっていました……が、最後は自分も赤色のVF-22で出撃してマックスと一緒に戦っていたという(笑)。あんた指揮どうしたよ? ……とツッコむ気にもならんなあ、ミリアだと(爆)。


 なお、参謀長としてマイクローン化していないエキセドル・フォルモがマックスをサポートしています。外見は劇場版準拠なのですが、性格はTV版です。あの外見で、顔だけブリッジに出しているという(笑)。


 あ、この外見と性格設定について、TV版と劇場版のどっちが「正史」なのかなと思ってたら、何と「どっちも正史ではない」ということだそうです。両方とも「正史を元にした創作」なんだそうです。つまり、TV版は正史を元にしたTVドラマで、劇場版は正史を元にした映画なんだそうですよ。どっちも脚色が入ってるから正史ではないと。そういう意味では、この『マクロス7』もTVドラマという扱いなんでしょう。だからマックスとミリアの外見が若いのは、つまり演じている俳優が設定年齢より若いということなんじゃないかと(笑)。


 本作の敵は「プロトデビルン」という、人間の精神エネルギーを吸収する異種知的生命体です。外見上は人間と大差無い形態もとっていますが、Wikiによると、これはプロトカルチャーが作った器のようです。もともとゼントラーディやメルトランディよりも上位の存在として作られた器に憑依したんですね。それでゼントラーディやメルトランディはプロトデビルンに遭遇すると戦意を喪失するようで、作中でもあのミリアですら呆然としていました。


 このため、プロトデビルンに遭遇したマクロス7船団は大苦戦することになります。それに対して、作中で唯一対抗できるのが歌エネルギーを持つ熱気バサラ率いるファイヤーボンバーで、彼らを「サウンドフォース」としてプロトデビルンに対抗させるという作戦がとられます。


 ただ、これはバサラ本人としては不本意もいいところなんですね。彼の思想はラブ&ピースですから(笑)。


 その一念が通じたのでしょうか、戦いの中で、プロトデビルンが必要とする精神エネルギーは歌によって増えることがわかります。最終的には、プロトデビルンたち自身が歌唱することによって、自分たちで精神エネルギーを作り出せることがわかり、プロトデビルンが人間を襲う必要は無くなるということになって、ハッピーエンドとなります。


 なお、物語的にはハッピーエンドになりますが、三角関係の方は決着が付きません(笑)。ミレーヌが「どっちも同じくらい好き」で思考停止しているという(爆)。


 ということで、本作においては戦闘描写が刺身のつまなんですよ、実は(爆)。旗艦であるバトル7もマクロスシリーズの伝統にしたがって強行型に変形します。それも、初代マクロスとは違って、手がちゃんと五本指の完全ロボ型です。それで主砲を銃として取り回して射撃するという。それなのに、その描写が完全に脇役としての扱いなんですね。


 これ、「巨大ロボットアニメ」としては異端も異端なんですよ。『Gガン』の方は「ガンダムシリーズ」としては異色作ではあっても、「巨大ロボットアニメ」として見た場合は、ある意味オーソドックスなスーパー系巨大ロボットアニメに回帰しているのに対して、本作の方は逆なんです。「マクロスシリーズ」として考えた場合は、「歌で異星人とコミュニケーション」と「メインキャラの三角関係」というシリーズ最大の特色をきちんと継承しているんですよ(笑)。その一方で「巨大ロボットアニメ」としては主人公がまったく戦わないという超異色作になっているという。


 そのせいで、視聴者の持っていた「マクロス」のイメージをぶち壊したにもかかわらず、きちんと続編にはなっているんですよね。


 ただ、マクロスシリーズとしては、本作とほぼ同時並行的に『マクロスプラス』という、こちらは真面目に戦っているOVA作品が作られているんですね。マニアックな戦闘シーンの方は、こちらに入れてあるという。


 そう、そういったマニア向けの要素はOVAに任せたんですね。本作は日曜朝放送のTVアニメということで、思い切りマンガチックに作ったとWikiには書いてありました。その意図はリアルタイム放送当時から何となく理解できていたので「何じゃこりゃあ?」と思いつつも、これはこれで悪くないかと思っておりました。


 ただ、その『マクロスプラス』見てないんですよ(笑)。あと、本作の直系の続編にあたるOVA『マクロス7ダイナマイト』はCS放送でちょろっと見たのですが、あまり本編とは関係ない話でした。出奔したバサラをミレーヌが追いかけていったあとで、残った二人が書き割りのバサラとミレーヌの横で演奏しながらファンに詫びているシーンが面白かったって印象しか残ってません(笑)。


 なお、マクロスシリーズの重要な要素である「歌」については、本作は主人公とヒロインの声優以外に、歌専門の歌手を用意していました。これは新しい手法でしたね。オープニングはなかなか良い歌でした。あと挿入歌の「突撃ラブハート」も結構好きでしたね。


 なお、本作ヒロインであるミレーヌを演じた桜井さくらいともは、元は「レモンエンジェル」というアイドルグループに所属していました。これが、あの十八禁OVA「くりぃむレモン」シリーズのスピンアウトという三流感あふれるアイドルだったという(笑)。当然のように大して人気は出ず(笑)、そこで辛酸を嘗めた(笑)のか、きちんと演技の練習を積んだらしく、同時代のアイドル声優の中では演技のできる人でしたね。声優アイドルとして大ブレイクして見事にリベンジを果たしたのに、人気絶頂期にあっさりと寿引退するという凄いことをやってのけたのが印象的でした。


 さて、これで94年の作品は終わります。あ、ロボが出てくるという意味では94年には『魔法騎士レイアース』もあるんですけど、これも未見なんですよ。なので、次回から95年に行きたいと思います。この年には、社会現象になった「あの作品」が出てきますが、その前にまずは勇者シリーズとガンダムシリーズの後継作について語りたいと思います。

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