第184話 機動戦士Vガンダム その5 おかしいですよカテジナさん!編

 Vガン語りも5回目、ヒロイン語り編……のはずなのですが、たぶんシャクティじゃなくてカテジナについての比重が大きくなると思うので、サブタイトルはカテジナに対して呼びかけたウッソのセリフからいただきました。リアルタイムで見てた視聴者が、ほぼ百パーセント共感したであろうセリフだったりします(笑)。


 とはいえ、順番的にはまずメインヒロインであるシャクティから語って行きましょう。シャクティ・カリンは主人公ウッソの幼なじみにして、敵陣営であるザンスカール帝国の女王マリアの娘です。そのため、女王の弟であるクロノクルの姪にあたります。ニュータイプとして高い共感能力を持ちます。肌の色はララァと同じ褐色なのですが、なぜか母親とも叔父とも違うという。父親似なんでしょうか。とまあ、セイラさん以来のガンダムヒロインの要素がてんこ盛りですが、唯一持ってないのは戦闘能力で、自分でMSに乗って戦うことはしません。


 その行動のせいで人が死ぬので「死神」呼ばわりされたり「悪女」呼ばわりされたりすることもあるのですが、「死神」はともかく「悪女」は違うと思います。何しろ、こいつの行動原理に悪意はまったくありません。いや、それ言うならニナ・パープルトンだって悪意はこれっぽっちも無いんでしょうけど(笑)。


 ただ、こいつの場合はウッソへの思慕は一貫して変わっておらず、モテモテのウッソにやきもちを焼くシーンがありました。それを見てサークルの連絡ノート(という名の落書き帳)に「めづらしきもの、シャクティのやきもち」なんて書いたおぼえがあるなあ(笑)。


 とにかく、ウッソ以外の男に目をくれたことは一度も無いという意味では、こいつは「悪女」たりえないのですよ。


 じゃあ「死神」の方はどうかというと、それについては否定できないんですよね。とにかく、こいつの行動のせいで人が死ぬことが多々あるという。


 ただ、基本的に悪意ゼロ……というか、本人的には争いを止めたいという意志のもとに行ってる行動ではあるのですよ。それが周囲の状況をまったく考慮していないという大問題があるにせよ。


 このあとガンダムシリーズに頻出する脳内お日様系ヒロインの元祖だったりはするんですよね。リリーナ、ラクス、クーデリアと視聴者をイラつかせる現実無視ヒロインの系譜の最初の例なんじゃないかと。


 なので、こいつについて総括すると、ドイツ軍四類型――「ゼークトの組織論」という名で知られていますが、Wikiによると元ネタを言ったのは別の人のようです――の最後のひとつかなと思うのですよ。つまり「無能な働き者」(笑)。役立たずの上に余計な事ばかりして状況を悪化させるから処刑するしかないというオチに使われているアレです。


 この無意味な行動力さえ無ければ善良で家庭的な普通の少女なんですけどねえ……。


 そのシャクティと好対照をなすのが、「ガンダム三大悪女」のひとりに必ず数えられる女、カテジナ・ルースです。三大悪女とされながら、必ず名前が挙がるのはニナとカテジナという事実上のツートップの片割れになります。逆に言うと三人目は「所詮しょせんは小者」なんですよ。


 何がシャクティと対照的かって、こいつはスタート時点ではシャクティと大差無い善意の人だったんですよ。ところが、敵陣営のクロノクルに捕まったあとの変貌ぶりが凄いという。なぜか敵に寝返って軍人になってしまったあとはウッソに対して相当に悪意ある攻撃をしかけてくるという。


 一番ひどいのが、前にあげた「水着の女性にハンドミサイルを持たせて生身でMSと戦わせる」という作戦。確かに一瞬だけ効果的だったんですが、ウッソが反撃に出たらあっさり全滅という。作戦参加メンバーは全員戦死、ウッソにはトラウマこそ与えたものの倒すには至らず、視聴者にとっては一見サービスシーンなのに後味が悪すぎるという誰得なエピソードだったりします。


 おまけに、ただの金持ちのお嬢様で戦闘訓練なんか受けたこともないような人だったはずなのに、MSパイロットになったあとはクロノクルなんかよりも、よっぽど強敵になっているという(笑)。リガ・ミリティア側のMSをガンガン叩き落として、大勢のパイロットを戦死させているんですよ。ただ、これは敵になったのなら当然のことなので、これを悪女としての罪状に数えるのはお門違いです。


 一番の問題は男に対する態度なんですよ。最初のお嬢様時代はウッソに「憧れのお姉さん」として見られながらも、それを少し疎ましく思っていたフシがあります。ただ、ウッソが活躍しだすと、逆に子供なのに戦争に参加せざるをえなくなっていくウッソを気遣ったりしてるんですね。ここまでは何の問題も無い。


 そして、自分を捕まえたはずのクロノクルに惚れ込んで寝返った最初の頃はストックホルム症候群なのかな、とかリアルタイム視聴してた頃は思っていたんですよ。ここで止まっていたら『Zガンダム』のレコア・ロンド程度でおさまっていたでしょう。


 ところが、最終盤ではそのクロノクルを一見立てながらも実態は顎でコキ使うレベルで尻に敷いています(笑)。しかも、クロノクルのことを「私の巣」みたいに言って依存してるような態度を見せていながら、最終的にはウッソとクロノクルを戦わせて「勝った方を愛してあげるよ」と言う掌返しをするという(笑)。


 この支離滅裂さと、男を天秤にかける態度のせいで「悪女」評価が確定してしまっているんですね。


 とにかく中盤から言動がメチャクチャにおかしくなってるので、タイトルにいただいたセリフの説得力が半端ないという(笑)。


 小説版だと強化人間にされたという記述があるようですし、スパロボだと「強化人間」スキル持ちなのですが、TVではそんな描写は一切ありません。ただ、そうとでも解釈しないとMSパイロットとしての強さと、終盤の言動の狂い方が納得できないのも事実です。


 結局ラスボスとしてウッソの前にたちはだかるのが、この人だったという(爆)。もっとも、敗れても戦死はせず故郷に戻っているのですが、そこでは失明して何もわからない精神状態になっていました。最後にシャクティと顔を合わせるのですが、相手が誰かすらわからない状態だったという。


 序盤とイメージが違いすぎる終盤の言動の凶悪さで、ガンダム三大悪女の中でも最凶というのが私の評価でして、おそらく世間の評価とも大差無いかなと思います。


 Vガンについては、これで終わってしまってもいいかなとか一瞬思ったのですが、ほかのライバルや味方パイロットについても少し語りたいので、次回はライバル編に行きたいと思います。


 最後はやっぱり今回語った人の決めゼリフで締めましょうか。


「見てください!」(爆)

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