第175話 超電動ロボ 鉄人28号FX(1992-93年)

 さて、今回は『超電動ロボ 鉄人28号FX』になります。FXです、外国為替証拠品取引です(笑)。


 本作については、リアルタイムで全話見ています。開始前から「鉄人の新作」ということで期待していました。


 ロボのデザインについては、92年当時としては充分にカッコ良いデザインにリファインされています。キャラデザも悪くありません。そして、作画レベルは非常に安定して高い水準を保っていました。少なくとも、前年の『ゲッターロボ號』に比べると格段に安定していました。そう、デザインや作画良かったんです。


 さて、その主役ロボ「鉄人28号FX」(以下FXと略記)は、「新鉄人計画」によって生み出されたスーパーロボです。「超電動システム」によって体内のエネルギーを集中利用してパワーアップすることが可能だそうです。


 ……これ「超伝導」じゃないんですね。名前からして電気エネルギーで動いてそうな雰囲気ですが、その電気をどうやって発生させているのかという点でエネルギー源は不明です。ただ、同じくエネルギー源不明の初代鉄人28号(1963年版。以下初代鉄人と略記)も元気で活躍してるので、この世界では動力源について気にしたら負けでしょう(笑)。


 初代鉄人と同じく武装はなく、肉弾戦で戦います。これまた初代鉄人と同じく、搭乗式ではなく外部コントロール方式ですが、リモコンは「グリッドランサー」という銃型のリモコンになっています。このリモコンが銃型というのに意味がありまして、命令コマンドをレーザー光に乗せて発射するという。その光をFXが受信することでコントロールしています。なお、このレーザーの威力を高めて武器として使用することも可能です。


 さすがに、この年代に玩具化する際に無芸ロボだとつらかったのか、鳥型ロボの鉄人17号フェニックスと合体することで飛行可能になるというギミックがついています。また、エイ型に変形する鉄人10号X-レイと合体して水中行動を強化することもできます。このうち、鉄人17号フェニックスとの合体は玩具でも再現されていますが、鉄人10号X-レイの方は商品化されていません。


 ここで鉄人17号とか、鉄人10号なんてのが出てきましたが、本作の「新鉄人計画」では、ちゃんとFXの前に二十七体の鉄人が作られているんですよ。中には量産されている機体や、先行試作機がある機体もあります。完成した機体は世界各国に配備されています。


 メイン操縦者は、本作の主人公である金田かねだ正人まさとです。初代鉄人の操縦者である金田正太郎の息子になります。母親の金田陽子ようこはロボット工学の権威でFXの設計者です。また、財閥令嬢でもあり、実家は金田探偵事務所のスポンサーで、新鉄人計画やFX製造の後ろ盾にもなっているということです……世界各国に配備されてるんで国際プロジェクトっぽいと思ってたんですが、実は私費で作ってた民間プロジェクトだったのか?(笑)


 メイン操縦者と書いたように、本作に出てくる鉄人シリーズは初代鉄人と同じように、リモコン次第で誰でも操縦できます。ただ、やはり上手い下手はあるので、一番上手く操縦できる正人がメイン操縦者になっています。


 そして、ライバルロボがブラックオックス。本作では飛行機に変形したり、ジェノサイドバスターなんて強力な必殺系ビーム兵器を装備してたりします。また、鉄人25号ミラージュから超電動チップを奪って超電動システム装備機として改造されます。


 こいつは、初代鉄人のライバルだったブラックオックスを作った不乱拳フランケン博士のクローンであるフランケン・シュイナー(最初は美少年で、途中で美青年に急成長する)が作った新型ロボです。自律思考型ではなく、FXと同じようなリモコン操作型ですが、コントローラーは腕時計型です。


 最初はライバルとして登場しますが、製作者兼操縦者のフランケンが改心することで味方になります。そのフランケンの死後は味方のクール系ライバル夏樹なつき三郎さぶろうがコントローラーを受け継いでメイン操縦者になり、鉄人29号という扱いになります。


 こいつが、カッコ良くて強いんですよ。変形するし武器もあるしで、ある意味FXを食ってしまっているという。最強必殺技ジェノサイドバスターを、FXをエネルギータンク代わりにしてパワーアップすることもできるという……普通逆だろう!(笑)


 味方キャラとしては、この三郎のほかに、双葉ふたばという、おっちょこちょいロリ系女性キャラがいるのですが、こいつが最終回までレギュラーのくせにヒロインじゃなくてマスコット扱いという(笑)。


 もうひとり、詩織しおりという正真正銘の美少女もいるんですが、こっちはフランケンと恋仲になって彼が改心するきっかけになるものの、結局フランケンはクローンとして寿命が少なく、またそれを何とかする手術を受ける寸前に敵ボスの攻撃で死亡するという悲恋に終わります。こっちは前半のみのレギュラーで、後半では鉄人27号アカツキの操縦者としてオーストラリア駐在になって数話ゲスト出演するだけです。


 じゃあ、ヒロインっぽいのはいないかというと、ゲストとして出てきたランファという女の子がもの凄くヒロインっぽいという。実は正人は前半の敵であるネオ・ブラック団に誘拐されて戦闘員としての訓練を受けていたんですが、そこで一緒だったのがランファです。共に脱出しようとしたときにランファは逃げ遅れて捕まってしまい、洗脳されてFXを奪いに来るという。


 結局洗脳を解くと同時に、ランファの体内にしかけられていた爆弾も解除したので無事に生存できました。声優があの三石「セーラームーン」琴乃だったこともあって、いかにもレギュラー化しそうな感じのキャラだったのですが、結局リハビリのために療養生活を送るということで、もう一度ゲストに出てきただけでした。


 前半は、そのネオ・ブラック団と戦うのがメインストーリーだったのですが、こいつらは二クールで壊滅。後半は金田正太郎がインターポール長官に就任し、正人、三郎、双葉の三人が長官直属の遊撃隊として世界各国のロボット犯罪者と対決するというストーリーになります。


 ところで、本作のオープニング主題歌「フューチャーヒーロー」は、スーパー系主題歌として「鉄人28号」と「超電動」を歌い込んでおり、また曲もカッコ良いなかなかの名曲です。ところが、前半は作曲の長沢ヒロが歌っているのに、後半は歌手が変わるという。私、なぜか後半の歌手を『三百六十五歩のマーチ』の水前寺清子と勘違いしていたんですよ。有名人に歌ってもらったのかなとか思っていたという。そしたら、今回Wiki読んでみたら全然違いました(爆)。『天空戦記シュラト』の主題歌を歌ってた清水咲斗子だったんですね。何でこんな変な勘違いしてたんだろう?


 さて、最初に書いたように、本作はロボのデザイン、キャラのデザイン、作画は決して悪くありません。この当時の水準で考えれば良質だと言ってよいでしょう。


 じゃあ、何が良くなかったか。


 ストーリー、あるいはシナリオです。


 ぶっちゃけて言うと、期待外れでした。


 何というか、「子供向けならこれでいいだろう」的な手抜き感が漂っていたんですよ。


 これ、前年の『ゲッターロボ號』と比較してみると、非常によくわかるんです。『號』の方は、正直言ってロボのデザインはイマイチだし、キャラのデザインもダイナミックプロ風でこの年代からすると少し古い感があるし、何より作画の質は回によって落差が酷かったんですよ。でも、ストーリーやシナリオは、子供向けを意識しながらも、決して手を抜いてはいなかったんです。だから、面白かった。


 あるいは、本作より十二年前に同じ『鉄人28号』のリメイクとして作られた『太陽の使者』(1980年版)の方と比べても、同じことが言えるんです。子供向けとして作られながら、非常に良質のストーリーとシナリオだった。


 これ、子供の頃に見たから思い出補正がかかってるかと思ってたんですが、FXよりあとにCS放送で再放送見ても、やっぱり評価が変わりませんでした。『ゴッドマーズ』の方は思い出補正で美化されてた面があって、大人になって冷静な目で評価してみたら、むしろシナリオは『太陽の使者』の方が『ゴッドマーズ』より上だったんです。


 だから、本作『FX』は最初から最後まで見たんですが、私は名作とは評価できないんですよ。駄作とは言いませんが、決して面白い作品ではなかった。そう思います。


 さて、次回は『マクロスⅡ』について語りたいと思います。

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