第172話 機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY その9 コロニーは現にあるのだ!編

 0083語りも9回目、そろそろ巻いていきたいところです。今回はデラーズ閣下と、味方キャラについて語りたいと思います。デラーズ閣下以外の敵キャラで目立つビッター少将とかケリィ・レズナーとかカリウス軍曹とかについては、既にMS語りの所で語ってしまっていますので。結局サブタイは前話で書いたデラーズ閣下の名言を短縮する形で使用しました。


 さて、そのエギーユ・デラーズ中将ですが、信念誠忠の人であることは既に書きました。ただし、その信念の強さゆえに、スペースノイドの自治権獲得という目的のためには手段を選ばず、大量虐殺も辞さないという意味では危ない人です。カッコ良いのですが、実際にやってることはただのテロリストであるとして、特に9.11以降は低く評価されることもあります。


 この人が立案した「星の屑作戦」とは、ガトーのGP-02による観艦式襲撃を陽動として、その隙に戦後再建のため壊滅したサイドから別のサイドへ移動中のコロニーを奪って地球に落とすというものです。その際に、一度は月の裏側の月面都市フォン・ブラウンに落とすと見せかけて、そのフォン・ブラウンとの裏取引でコロニーに推進レーザーを照射させて加速し、一気に加速させて地球に落とすという手の込んだ作戦です。


 そして、その落着目的地点についても、手が込んでいました。かつてのコロニー落としと同じく南米の連邦軍本部ジャブローに落とすと見せかけておいて、実際の落着目的地点は北米の穀倉地帯でした。


 これは、地球の食料生産能力を落として、地球内での自給自足を不可能にし、食料生産能力を握るスペースコロニーの発言権を強化しようという目的によって行ったものです。


 この目的については、作中では明確に語られておらず、販売当時のアニメ誌などの二次資料で知りました。このときは「何だか迂遠な方法だなあ」と思ったものです。


 ところが後年になって『UC』の小説版を読んだときに、ラスボスであるフル・フロンタルが率いるネオ・ジオンの行動についての論評のところで「もう地球圏の経済はコロニー無しでは成り立たなくなっている。コロニーの意志は政治的にも無視できず、表面的には地球連邦に所属していても、実質的には独立しているのと同じだ。独立のための軍事行動など起こす必要はない」みたいなことが書かれていたのですよ。


 『UC』は宇宙世紀0096年の話です。上記の記述については、たぶん『0083』の裏設定を拾ったのだと思うのですが、それがそのまま『Vガンダム』の宇宙世紀0152年頃には連邦がコロニーの統制を取れなくなって、コロニー国家が乱立する「宇宙戦国時代」になっているということへの説明にもなっているという。


 つまり、デラーズ閣下の戦略目的は十三年後には効果を現しており、七十年後にはデラーズ閣下の宿願だったコロニーの自治権獲得は現実になっているということです。


 デラーズ閣下の名言に「我々は三年待ったのだ!」というのがありますが、その行動が結果として結実するまでには十三年以上の月日が必要だったということです。


 明治維新の志士というのは、最終的には新政府の要人となるのですが、維新前にやっていることは、だいたいテロリストと同じです。世の革命家もだいたい同じで、失敗すればテロリストなんですよ。もっとも成功したら逆に独裁者コースというのもフランス革命の頃から定番だったりしますが(笑)。


 そう考えると、デラーズ閣下をはじめとするデラーズ・フリートが大量虐殺系のテロリストであることは否定できないのですが、時代を動かしたという意味においては「革命家」であったと言うことはできるのではないかと思います。


 さて、このデラーズ閣下ですが、ガトーと並ぶ名言の宝庫です。カッコ良いのですよ。ただ、外見は非常に陰険凶悪な面構つらがまえをしておりまして(笑)、初見では「絶対にこいつ腹に一物抱えていて、ガトーを裏切って使い捨てにする」と思っていたんですよ。


 ところが、最後まで信念誠忠の人だった上に、シーマ様に裏切られて人質にされても泰然としてガトーに自分のことは気にせずコロニー落とし作戦を遂行しろと命令します。サブタイにいただいたのが、その際の名ゼリフです。結果としてシーマ様に射殺されるのですが、実に漢らしいカッコ良さに満ちあふれている人でした。


 ただ、自信過剰な面は確かにありまして、自分ならシーマ様たちを導けると思って味方に引き入れたものの、結局は裏切られているんですよ。これが前話で語ったようなシーマ様の背景を知った上で彼女の怨念を見誤っていたのか、シーマ様の背景を知らずに無意味に自信を持っていたのかは不明です。


 また、信奉するギレンにならって、作中で大演説をぶちかますのですが、カッコ良いものの内容には多少の疑義があったりします。GP-02について「南極条約違反」と言っているのですが、あれは戦時条約なので一年戦争終結後は無効です。まあ、同じ演説内で終戦協定自体を「ジオン共和国を騙る売国奴によって結ばれたもので無効」と言っているので、まだ戦争中という建前なのでしょうが。


 しかも、その奪った核兵器を使ってしまうという。それだったら連邦のことを南極条約違反とか責められないだろうというツッコミが入ってしまうんですね(笑)。


 あと、この人の乗艦はグワジン級戦艦グワデンと言いまして、作画上は多少ディティールアップはされているものの、初代ガンダムに出てきたグワジンと同じデザインです。


 ところが、なぜかサイズが異常にデカいという(笑)。設定上通常のグワジン級は全長二百九十四メートルなのに対して、グワデンだけ四百四十メートルもあるんですね。ただし、これについてはググってみたところ「作中の描写からするとグレート・デギン以外のグワジン級は全長四百四十メートルの方が正しい」説もあります。このあたり、むしろ初代ガンダム時代の作画が適当だったせいかもしれません。


 それから、第1話でガトーが強引に乗ろうとしていたカラーリングが独特なリック・ドムはデラーズ専用機という説があります。作中では描写されませんでしたが、パイロットとして活躍していたこともあったのかもしれません。


 ああ、結局デラーズ閣下だけで終わってしまいました。次回こそ味方パイロットについて語り、作品全体を総括したいのですが……できるかなあ?(爆)

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