第140話 マシンロボ クロノスの大逆襲(1986-87年)

 今回の作品『マシンロボ クロノスの大逆襲』(以下『クロノス』と略記)については、TVアニメについて語る前に、まず玩具について説明する必要があります。


 「マシンロボ」は1982年からバンダイが発売していた掌サイズの小型の変形ロボ玩具で、六百円均一というお手頃価格で販売されていた玩具オリジナルシリーズでした。特に設定などは無く、名前の通りさまざまなマシンに変形するロボが、どんどん発売されていました。Wikiによると、一応『テレビマガジン』では連動企画もあったようですが、当時は『テレビマガジン』を買っていなかったので、そちらはあまり知りませんでした。ただ、マシンロボ図鑑は買ったおぼえがあります。


 このマシンロボは、六百円というお手頃価格もあって、結構買っていました。ただ、初期シリーズの変形は単純に前屈して背中に手持ちのビーム中を取り付けるだけで戦車に変形するバトルロボみたいなのもあり、しかも腕が固定できないので戦車形態では真っ直ぐ伸びるはずの腕が斜めにずり下がるという安っぽいできだったりしました。まあ、これは六百円という値段からすると仕方ないかなという所ではあったのですが。


 そんな初期シリーズ六体の中で、比較的できが良かったのがジェットロボでした。第二期シリーズのバギーロボやスーパーカーロボは変形やデザインも改善されています。初期シリーズは実在しない自動車や飛行機に変形していたのですが、後期シリーズになるとF-15に変形するイーグルロボとか、旧帝国海軍の零式艦上戦闘機に変形するゼロ戦ロボ、スカイラインに変形するスカイラインロボやミニクーパーに変形するミニクーパーロボのように、実機や実車に変形するロボも増えてきました。


 このマシンロボには結構はまっていて、弟と合わせると相当な数を持っていました。初期六体のバイクロボ、バトルロボ(戦車)、ジェットロボ、ジャイロロボ(ヘリ)、スチームロボ(蒸気機関車)、ハイウェイロボ(高速バス)は全部持っていましたし、スーパーカーロボ、バギーロボ、ダンプロボ、ファイヤーロボ(消防車)、ブルドーザーロボ、新幹線ロボ、パトカーロボ、シャトルロボ、救急車ロボ、スクーターロボ、ドリルロボ、トレーラーロボ、ハリアーロボ、ポルシェロボ、カウンタックロボ、清掃車ロボ、ニュー新幹線ロボ、クレーンロボ……ってえ、Wikiのリストにある奴、ほとんど持ってたじゃないか!(爆) 後期の奴にいくつか抜けがあるものの、持ってない方探す方が早そうな。


 あとバトルベースという基地を買ったりもしていました。また、マシンロボを中に入れることができる合体ロボ――というよりは、マシンロボが着込むパワードスーツ的なパワーアップパーツという感じの設定ですが――のバトルアーマー5なんて大型玩具も買ったりしていました。


 また、六百円サイズで「敵ロボ」も出ていました。「異常適応ロボ」という怪物的な外見でモンスターに変形するロボで、キャスモドン、ファルゴス、ザリオスの初期三体は持っていました。


 そういうことでマシンロボを相当に気に入っていた私なのですが、アニメ化するという話を聞いたときは、不安が先立ちました。明らかに『トランスフォーマー』の成功を見ての後追い企画だというのが見え見えだったからです。


 超ロボット生命体同士が戦い合う作品になるんだろうなあと漠然と予想していて、その予想は的中しました……が、実際に見てみた作品は、予想の斜め上を行く傑作だったのです。


「人それを●●と言う!」

「貴様らに名乗る名前は無い!」

「闇有るところ光有り、悪有るところ正義有り!」


 主人公ロム・ストール(人間型だがロボット生命体)の前口上と決めゼリフが毎回のお約束という、恐るべきスーパー系の巨大ロボットアニメだったのです!


 この当時読んでいたアニメ誌に『アニメック』がありました。その連載コラムに「王道秘伝書」というのがありまして、毎回アニメのよくあるパターンをネタにおり、この『クロノス』についても第1話が放映されたあとに発売された号で言及していました。それで、コラムの筆者が書いていたところによると、最初は「お、久しぶりの王道セリフ、メモしておこう」みたいに思っていたのが、見続けていたら「こ、このままでは単なるシナリオ再録になってしまう!」と頭を抱えてしまったという(笑)。それくらい「お約束」的なパターンと決めゼリフが毎回多用されるという作品だったのです。


 ただ、この当時は、それが一周回って逆に新鮮だったんですよね。


 この『クロノス』なんですが、『マシンロボ』と銘打っている割には、マシンロボの中で活躍するのが、レギュラーのブルージェット(ジェットロボ)とロッドドリル(ドリルロボ)ぐらいしかいないという(笑)。この二体は玩具で人気があったからレギュラー起用されたのかなと。ちなみに、ジェットロボは基本色が赤と黒で、これはアニメのブルージェットでも変わっていないのに、何でジェットなんだろうと不思議に思ったものです(笑)。


 また、前に『ゴーディアン』の回でも書きましたが、主人公ロムが乗り込むバイカンフーはゴーディアンの金型流用玩具でした。ほかにも『太陽戦隊サンバルカン』の母艦ジャガーバルカンが流用されて敵軍の母艦バリガールXになったりしていました。あと、Wikiによるとプロトラックレーサーも『超新星フラッシュマン』のタイタンボーイの流用だったそうなんですが、これはリアルタイム当時は気付いていませんでした。フラッシュマンも見てたのに……不覚ッ!!(爆)


 敵側レギュラーとしては、モンスターに変形するロボが合体するデビルサターンシックスがおりまして、これは玩具も出ていました。また、先に書いた玩具で出ていた「異常適応ロボ」からキャスモドンとザリオスも出ており、キャスモドンはメインの強敵として出てきた回がありました。


 ただ、敵軍である宇宙犯罪組織ギャンドラ―のボスであるガデスや、幹部のグルジオス、ディオンドラなども、アニメオリジナルのキャラであり、玩具は出ませんでした。


 中盤以降は味方マシンロボも活躍するシーンはあるものの、何というかオマケっぽい扱いで、メインはロム一行の活躍と、毎回ゲストキャラとのからみだったりします。


 これでストーリーが詰まらなかったら目も当てられない駄作になっていたところですが、面白かったんですよ!


 また、キャラクター人気で言うと、ロムの妹であるレイナ・ストールが実質的にヒロインとして活躍しております。人間型とはいえ「ロボなのに妹?」とかツッコみどころではあるのですが、アトムにウラン、ドラえもんにドラミちゃんという前例がありますからねえ。このレイナが結構強烈なブラコンだったりするんですが、ロムの方も実はシスコンだったりするという(笑)。最初はロボっぽかったのですが、エンディングでヘルメットを脱いで髪をなびかせているのを見せたりしていました。


 レイナは人気がありすぎて、TV版終了後にレイナを主人公にした『レイナ剣狼けんろう伝説』なんてOVAも作られたりしていました。ただ、こちらは未見です。あ、この「剣狼」というのはロムが使う剣で、バイカンフーを呼び出すのにも使います。また、バイカンフーの武器も巨大化した剣狼です。


 なお、Wikiによると、このOVA版でロムとレイナは実の兄妹ではないということが明かされたそうですが、TV版ではそのような設定は明かされていないので、私は実の兄妹として見ていました……いかにも義妹設定になりそうだなあとは思ってはいましたが(笑)。


 面白い作品だけど玩具の販促の役に立ったのだろうかという疑問はリアルタイム当時から持っていたのですが、今回ググってみたところ、同じような評をあちこちで見かけました(笑)。


 そうそう、スパロボにも結構出てるみたいなんですが、残念ながら私が遊んでいたころのスパロボには出てなかったんですよね……。


 最後に、主題歌についてなのですが、前期オープニング「マシンロボ・炎」も、後期オープニング「勝利のマシンロボ」も非常に燃えるロボットソングだったりします。特に後期オープニングを歌っているのは、何とあの「アニソンの帝王」子門真人!


 この前に、アイドルとのタイアップでまったく巨大ロボットアニメにふさわしくないような主題歌ばっかりだったことへの反動なのか、ものすごく「巨大ロボットソング」している歌になっております。


 「マシンロボ・炎」については、リアルタイム当時に聞いていて「あれ、何か歌い方が変わった?」と感じていたのですが、今回Wikiを読んでみたら、やはり歌い方が違うバージョンがあったようです。


 そして「勝利のマシンロボ」については、作中で「公式マッドテープ」みたいな編集がされてしまったことが当時からネタにされていました。合体BGMにも使われていたのですが、その際に「弱い相手はもう飽きた」と「強い相手はどこにいる」という、同じメロディーの繰り返しになっている歌詞を、「弱い相手はどこにいる」と短縮してしまったんですね(笑)。こうなったのは一回だけなんですが、その一回で強烈な印象を与えてしまい、今日まで語り継がれるネタになってしまったという(笑)。


 なお、エンディングテーマの「青いハートのストレンジャー」も名曲です。こちらはラブソング系だったりするのですが、エンディングテーマとしては悪くないでしょう。


 というわけで、三番組しかなかった86年はこれで終わりです。続けて、同じく三番組しかない87年に突入したいと思います。

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