第117話 戦え!超ロボット生命体 トランスフォーマー その3 デストロン軍団アターック!編

 さて、トランスフォーマー語りも3回目、今回はもうひとりの主役、悪の軍団デストロンのリーダー、破壊大帝メガトロン様について語ってみましょう。なので、サブタイトルはメガトロン様の定番セリフからです。


 この人は有名拳銃「ワルサーP-38」から変形します。ルパン三世の愛銃として日本でも知られていますね。かなり複雑な変形をするので、アニメでは玩具通りの変形はあまりせず、どちらかというとクニャクニャ変形ですね。あと、ロボ形態だと銃口が腹の脇に出たり、股間のトリガーガードが結構前方に張り出してたりするんですが、アニメだとそこらはリファインされています。その一方で玩具の銃形態は非常にリアルだったり。


 さらに、変形後のワルサーP-38は、素のタイプではなく、消音器サイレンサー照準器スコープ、それに簡易銃床ストックがついたタイプなんですね……って書きつつも、あれ消音器サイレンサーじゃねえよなと思って調べてみたらエクステンション外付延長バレル銃身って書いてあったよ(笑)。


 これ、実は元ロボであるミクロマンの「ワルサーロボ」のデラックスセットとして販売された「アンクルセット」の装備なんです。特に、照準器スコープは腕に装備して武器になるという。これはメガトロン様でもそのままメイン武器の「融合カノン砲」として採用されています。


 ただ、メガトロン様の玩具はアンクルセットではなくワルサーP-38単体でしか販売されず、本編が終了して続編『2010』ではデストロンのリーダーがメガトロン様ではなくなるときに「グッバイ メガトロン」キャンペーンとして融合カノン砲になる照準器スコープのみが付属したセットが販売されただけでした。


 さて、正義の軍団サイバトロンが自動車変形ロボメインであるところあたり、さすが車社会のアメリカといった感じなんですが、悪の軍団デストロンの方は銃や戦闘機などがメインになっています。


 これ全米ライフル協会あたりが文句つけるんじゃね? とか今更ながらに思ったりもしたのですが、そこから考えを進めたら、逆に「何でワルサーロボがメガトロンになったのか」の理由もわかってしまったりしたんですよ。


 実は、ミクロマンのガンロボは、ほかにもいくつか種類が出てまして、一番最初は峰不二子の愛銃「ブローニングM1910」が変形する「ブローニングロボ」だったし、ダーティーハリー愛用の「44マグナム」こと「スミス&ウェッッソンM29」が変形する「マグナムロボ」もラインナップにありました……ってか、次元大介の愛銃って357マグナム弾版の「コンバットマグナム」こと「スミス&ウェッソンM19」ですけど、サイズはともかく外見はM29そっくりなんだから、このラインナップってモロにルパン三世系じゃん(笑)。これで銭形警部とっつぁんの「コルトM1911ガバメント」があったら完璧だったな(笑)。


 ともあれ、ラインナップとしては「アメリカ製拳銃」の名銃がほかに二つもあるのに、悪ボスとして選ばれたのはワルサーP-38がモチーフなんですよ。ブローニングロボとマグナムロボはトランスフォーマーには登場していません……って書いたあとで、ブローニングロボはシリーズ第四作『超神マスターフォース』(日本製)にデストロン側のマスコットキャラとして登場していることを見つけました。そんなん、すっかり忘れてたよ(笑)。


 これ、大きな意味があります。


 日本だと、先に挙げたようにルパン三世の愛銃としてのイメージが強いんですが、世界だとまた違うんですね。


 ワルサーP-38って、あの「悪の独裁者」アドルフ・ヒトラーの愛銃というがあるんですよ。


 これ、変な所で知ったんですよ。井沢元彦『逆説の日本史』シリーズの初期の頃に「『天智天皇』というのは悪い諡号しごうである」ということを論考している所で、「天智」の元ネタが「天智玉てんちぎょく」であって、これは中国史上の悪王として知られる「いん紂王ちゅうおう」が持っていた宝石で非常にイメージが悪いということを、もり鴎外おうがいの『帝謚考ていしこう』の記述を元に論じていたんです。それの例えとして「映画007シリーズのタイトルのひとつに『黄金銃を持つ男』というのがあるが、これはことから、『黄金の銃』=悪い奴というイメージがあるのを利用したタイトルのつけ方」みたいなのを挙げていたんですね。


 ただ、これ調べてみると実話ではないらしいという。実際にはヘルマン・ゲーリングが黄金貼りの「ワルサーPPK」を持っていたらしく、こちらは競売にかけられています。もっともゲーリングの黄金銃は「ルガーP-08」説もあって、こっちはモデルガンを見かけました。また、ヒトラーの黄金銃についても「ワルサーPPK」説もあって、最後はそれで自殺したという説もあったりするのですが、これまた伝説で実話ではないそうです。


 ヒトラーが黄金貼りのワルサーP-38を持っていたという描写は「ゴルゴ13」にも出てくるそうなので、伝説としては結構流布している類のものなのかなとか思ったりもします。


 実は私も幼少期に金色のワルサーP-38のモデルガンを持っていました。弾丸は出ない、本当に飾りタイプですね。今で言うフリーマーケットで売ってたのを買ったんです。ちなみに、私の住んでるところには戦国時代からフリマの伝統がありまして「ボロ市」って名前の伝統行事になってるんですね(笑)。閑話休題。


 また、ワルサーP-38についてWikiで見てみると、第二次大戦中のアメリカ軍兵士からは、仕上げ色とナチスの制服の色から「グレイゴースト」なんて呼ばれていたという(「要出展」とか注記あり)もあるようで。このイメージに合わせたのか、ワルサーロボの成型色は黒だったのが、メガトロン様では灰色になっています。


 ともあれ、「悪の軍団」のボスにアメリカ製拳銃を使うわけにはいかないということで、ドイツ製、それもヒトラーやナチスの印象が結構強いワルサーP-38が選ばれたんだろうなあと、今にして推測するわけなのですよ。実際、作中でもナチス式敬礼して「ハイル、メガトロン!」とかやってましたんで、ナチスへの仮託はあるんじゃないかと思います。アニメのメガトロン様の頭部形状も、どことなくナチスのヘルメット風ですし。


 さて、その悪の帝王メガトロン様ですが、迫力満点威厳充分の悪の大ボスだったりします。かなり狡猾で卑怯な真似もしますけど。


 この人もコンボイと同じで、声優の故・加藤精三の声が非常に似合っていたんですね。星一徹の声優として知られていますが、私の中では加藤精三=メガトロン様です。


 これだけ威厳たっぷり、かつ強いボスなのに、サブリーダーであるスタースクリームがしょっちゅう下克上を狙っていたりするんで、部下の統率に問題があるんじゃないかとか思われてしまうところが残念だったりもするのですが(笑)、あれはむしろスタースクリームの方に問題があるからなあ(爆)。


 また、変形するとほかのロボの手に収まるくらい小さくなっちゃうというネタは既に書きましたが、その際に大抵はスタースクリームが撃ってるんですよね。ときどきサウンドウェーブも撃ってますけど。また、飛び上がって変形したあと、誰かの手に収まらずに、重力に引かれて落ちる前に空中で自力射撃してることもありました。


 そういえば、コンボイたちはロボ形態だと飛べないんですが、メガトロンやサウンドウェーブたちデストロン軍団は飛行機に変形しない連中でもロボ形態で飛行できましたね。


 ともあれ、裏切りまくってるスタースクリームを毎回許す度量の深さも魅力的だったりします。


 ところが、劇場アニメ版『トランスフォーマー・ザ・ムービー』だと、そこが微妙に変わっちゃったりするんで残念なんですよねえ。


 その『ザ・ムービー』で死亡し、その作品のラスボス「ユニクロン」の手によって「新破壊大帝ガルバトロン」として蘇ることになるのですが、コンボイと同じく、それはまた別の所で論じることにいたしましょう。トランスフォーマー語りは、まだまだ続きますよ。


「さあ、戦いだ!」

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