第91話 機動戦士Zガンダム その2 黒いガンダム編

 と、いうことでZガンダム語りの2回目です。今回は劇場版サブタイトルは使うのをやめました。だって劇場版のⅡって「恋人たち」ですよ(笑)。さすがに似合わないことおびただしい。引き続きマーク2語り回なので、第1話サブタイをそのままいただきました。


 さて、そのマーク2。本来は、敵軍にあたる「ティターンズ」が自軍の象徴にするために、一年戦争(ガンダムの舞台だった戦争は戦後にこう呼ばれるようになった)の伝説の機体であるガンダムの名を冠したMSとして製造しました。


 このティターンズというのは、地球連邦軍内のジオン残党刈りを目的とするエリート部隊です。一般の連邦軍に比べて、階級が1つ上相当になります。つまり、ティターンズの中尉は、一般連邦軍の大尉相当になるということです……って、第二話でジェリド中尉たちがブライト中佐を集団リンチしてなかったか? さすがに三階級上の人に私的制裁を加えるとか軍隊としてどうよ?(笑)


 ただ、こんな無理無茶がまかりとおるような組織だというのが最初に描写された上に、軍服やMSも黒系を中心にしていて、ビジュアル的に「こいつらが悪」というのが明確にはされていました。


 それに対して、主人公カミーユ・ビダンが所属する「エウーゴ」は反地球連邦組織ということになっています。つまり前作ガンダムとは立場が逆になっているということです。ただし、エウーゴも立場としては連邦軍内の非主流派です。連邦軍なのに反地球連邦組織という、ちょっとワケのわからない組織だったりします(笑)。この複雑さが、Zガンダムを難解なものにしているとは、リアルタイム当時から指摘がありました。


 ティターンズが黒なら、エウーゴの方は白という感じで、カミーユが所属することになるエウーゴの旗艦フラッグシップ「アーガマ」は純白です。そして、マーク2も奪取された機体は薄いグレーという白系の色に塗り替えられます。


 ただ、この対比は作中でも徹底されているわけではなく、エウーゴ初期の主力量産機「リック・ディアス」は初期は黒塗りだったりします。ただし、これはティターンズとの対比上うまくないと気付いたのか、のちに全機赤色に塗り替えられます。


 また、「ジムⅡ」や「ネモ」といった量産機の色は緑色(ジムⅡは白地に緑)であり、アーガマ以外に登場する戦艦「ラーディッシュ」も薄緑色をしているなど、エウーゴは緑系をイメージカラーとしているフシもあります。


 ビジュアル面で言うと、ティターンズのMSというのは、基本的にジオン系の曲線が多くてモノアイが付いているデザインのものが多かったりします。それに対して、エウーゴのMSは直線的でゴーグル目の、連邦軍直系のデザインが多くなっています。


 これ、ビジュアル的には前作ガンダムの「敵」と「味方」を正当に受け継いでいるんですが、思想的にはむしろ相手陣営側のデザインラインなんですね。リアルタイム当時から「何でだ?」と不思議に思っていたんです。


 このあたり、思い切って前作の敵味方のデザインラインを逆にしてもよかったんじゃないかと思うのですが、この当時はまだそれは難しかったんでしょうね。


 これが、2004年の『機動戦士ガンダムSeedシード Destinyディスティニー』になると、前作『Seed』の敵陣営が主人公陣営になって、MSも前作の敵のデザインラインの味方機が登場するということをやれるようになっています。もっとも、この作品の場合、前作主人公が敵として登場して「どっちが主人公だ?」という扱いになってしまうという大問題があったりするのですが(笑)、それについては、いずれ『Destiny』を語るときにいたしましょう。


 さて、そのマーク2ですが、第1話でいきなり主人公カミーユは、こいつを奪ってエウーゴの方に行ってしまいます。何でそんなことができたのかというと、カミーユの父親フランクリン・ビダンが設計主務者だったんで、データを盗み見て操縦法を知っていたんですね。このあたり、前作ガンダムのテム・レイとアムロの関係をなぞっていると同時に、実は巨大ロボ伝統の「父親の博士が作ったロボ」の最末期の一体だったりします。これ以降では、私は『ガオガイガー』ぐらいしか父親がロボ作った博士だという例を知りません。


※「なろう」の方の感想欄で、はいよるくま様から「F91やVガンダム、エヴァンゲリオンなどは主人公の母親が作った」というご指摘を受けました。ボルテスみたいに母親作ロボの伝統もあって、そっちの方が長持ちしているんですね。


 ちなみに、こいつもダンバインと同じく三機いましたが、全部エウーゴに奪われてしまいます。奪われたあとは、少しの間は複数出ていましたが、結局常用するのは一機だけになったので、残りは研究用にバラしてリバース・エンジニアリングとか部品取り用にされたんだろうと思ってました。Wikiだと、一機は研究用として残され、一機がバラされたということです。


 このマーク2の最大の問題点は、主人公機のくせに「弱い」ということでしょう。というか、「ガンダム」を名乗るくせに全然強くないという(笑)。


 まず、装甲が旧式です。チタン合金セラミック複合材。量産型のジムⅡとかと一緒です。ガンダムの特徴だったルナ・チタニウム合金=ガンダリウム・アルファ合金を使っていません。


 そう、このZガンダムにおいて行われた設定変更のひとつが、装甲材質の名称変更です。前作主人公機ガンダムの作品序盤での「硬さ」を象徴するルナ・チタニウム合金は、ガンダムの名を冠した「ガンダリウム合金」に名前を変えたのです。


 こいつ、その名前を受け継いでいながら、肝心のガンダリウム合金を使ってないんですよ。したがって、脆い。


 エウーゴ序盤の主力量産機リック・ディアスの方は、ガンダリウム・アルファ合金を更に改良したガンダリウム・ガンマ合金を使っているのに。このため、開発コードネームはガンマ・ガンダムという名前だったなんて裏設定が、リアルタイム当時から二次資料には書いてありました。


 さらに、リック・ディアスの方がセンサー性能も上とされています。


 実際、エウーゴのところに一度は亡命したはずのフランクリン・ビダンはリック・ディアスの先進的な技術を見て、一機を奪って持ち逃げしようとしたほどです。その際に「マーク2などもう役目は終えた」的な言い回しで、自分の作品であるマーク2をディスっています。まあ、結局そのせいで死ぬことになるんですが。


 初の本格ムーバブル・フレーム使用機ということで、画期的な技術も使われている代わりに装甲がヘボいという扱いで、最初からイマイチ感が漂ってたりする悲しいガンダムなんですね。


 ただ、運動性は高いという設定になっています。また、実際にカミーユの高いパイロット能力のおかげで被弾とかしないので装甲がヘボくても問題ないという。


 最初のガンダムが、序盤は特に装甲の優秀さで素人のパイロットだったアムロを補っていたのと真逆で、装甲のヘボさをパイロットの優秀さで補っていたんですね。


 ビームライフル、ビームサービル、ハイパーバズーカと基本武装はガンダムを受け継いでいるのですが、いずれもデザインは格段にカッコ良くなっています。


 特にビームライフルはエネルギーパック交換式になっており、前作でガンダムがよく「エネルギーが上がった?」とか言って弾切れになっていた欠点を補っています。


 フライングアーマーなんていう運動性の高い大気圏突入用オプションもあったり、のちにはGディフェンサーというパワーアップメカと合体してスーパーガンダムになったりもします。このあたり、Gアーマーと合体したガンダムを思わせるパワーアップなのですが、いかにもスーパー系だったGアーマーと違って、遠距離狙撃用の大型ライフルが装備されたり、増速用ブースターが追加されるなど、かなりリアル系なパワーアップパーツでした。


 作中でも結構ヘボいとディスられてる割には、後継主人公ロボのZガンダム登場後には、重要レギュラーキャラのエマ・シーンに譲られ、最終決戦まで生き残って活躍します。


 その最終決戦で大破したものの回収され、次作『ガンダムZZダブルゼータ』でも味方レギュラー用の機体として使われるなど、息の長い活躍をしました。


 性能面ではイマイチとされながらも、実績から見れば立派に「ガンダム」の一員として恥じない機体だったと言えるでしょう。


 さあ、次はいよいよ後継主人公機で、作品タイトルのロボ、Zガンダムを語りましょう。


 君は、33年の涙を見る。

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