第92話 機動戦士Zガンダム その3 ゼータの鼓動編

 さてさて、お次は本命主人公ロボ、Zガンダムの登場です。作品タイトルにもなっている本機ですが、登場は前述したように第21話で、このときはマーク2で苦戦するカミーユを助けに来た際に別のパイロットが乗っていました。飛行形態であるウェイブライダーのみの登場で、MS(ロボ)形態にもなりません。本格登場は第22話からです。ただ、第21話のサブタイトルでは、その登場が予告されていました。それこそ、今回のサブタイにいただいた「ゼータの鼓動」です。


 つまり、ほぼ二クールの間はマーク2が主人公ロボを勤めていたわけで、事実上の二号主人公ロボになります。ただ、作品タイトルの本命ロボがあとに来ているというのは、本作と直接の続編である『ガンダムZZ』とか、のちの『Gガンダム』や『ガンダムOOダブルオー』くらいしか思い当たりません。結構レアケースですね。


 こいつについては、マーク2と違って「ガンダム」の名に恥じない超高性能MSです。Wikiとかだと「UC宇宙世紀100年台のMSに匹敵」とかまで書かれています。Zガンダムの設定年台がUC0087ですから、十三年以上も先進的という扱いです。


 ウェイブライダーという飛行形態に変形しますが、こいつは単独での大気圏突入能力を持ちます。それも、前作のガンダムみたいに「耐熱フィルムをかぶる」(TV版)、「機体各所から冷却用のエアーを放出する」(劇場版)といった「とりあえず何とか突入だけはできます」といった扱いではなく、ある程度飛行体勢の制御もできる大気圏往還機レベルの性能をもちます。実際に作中では大気圏離脱をしたことはありませんが、ブースターを付ければ大気圏離脱は可能じゃないかと思えます。上に別のMSを乗せて大気圏突入したこともあります。


 さらに、大気圏内での飛行性能も高く、やはり別のMSを乗せての空戦も可能です。このZガンダムの時代の大気圏内戦闘は、かつてのガンダムがGファイターの上に乗っていたり、グフがド・ダイYSの上に乗っていたような感じで、サブフライトシステムに乗って空中戦を行うのが普通になっています。Zガンダムは単機でSFSの機能も兼ね備えているわけです。


 そして、ビームライフルもロングサイズで高性能。エネルギーパックはマーク2と同タイプで互換性があります。銃口からビームをサーベル状に固定してビームサーベルとしても使用できます。リアルタイムで見てた頃は意味あるのかと思ってたんですが、今にして思うと銃剣的な運用なんじゃないかという気もします。また、逆にビームサーベルから低威力のビームを発射して簡易ビームガン的に扱うこともできます。ただ、ビームサーベルの装備位置は腰になって、ガンダム伝統のバックパックに背負う形から外れています。


 さらに、大型オプションとしてメガ・ビームランチャーという大型ビーム砲も使用できます。これ、スパロボでは常用武器になっており、スーパー系の必殺武器に準じる威力がありました。


 その代わり、マーク2までは標準装備のひとつだったハイパーバズーカ系の実体弾武装は廃止されています。ただ、まったく無くなったわけではなく、ガンダム伝統の頭部六十ミリバルカン砲は残っているほか、腕部装備の固定武装としてグレネード・ランチャーが追加されており、さらに劇場版だとシールドの裏にミサイルが装備されています。


 とまあ、このようにスペックだけ見てくると、確かに「ガンダム」の名に恥じない高性能機です。敵味方ともにディスられてたマーク2とはえらい違いです。さすが番組タイトル名になっている主人公機!


 ……ところが、作中で見る限り、それほど強そうに見えないというところが大問題でして。


 ぶっちゃけ、マーク2と同じで、画面上だと全然強そうに見えなかったんですよ。これ、リアルタイムの頃には結構強く印象が残ってて、のちに再放送で見ても、あまり印象が変わりませんでした。


 これは、ごく簡単なことで、登場が遅いから既に「強敵登場」パートに入ってしまっていたんですね。前作ガンダムの場合は「序盤は性能差で無双できるけどシャアには勝てない」→「敵も高性能MSが登場して苦戦」→「アムロが覚醒するがガンダムが追いつかない」→「ガンダムを強化してアムロ無双」という流れでした。


 ところが、Zガンダムの場合は「序盤からマーク2だと大した性能差が無くて無双というほど強くない」→「Zガンダムに乗り換えたのに敵も高性能MSなんで結構苦戦」なんですよ。何というか、全般的に爽快感が無い。


 たぶん、これがZガンダムが登場して少しあとに切っちゃった理由のひとつなんじゃないかなと思います。


 ということで、あんまり「強い」印象が無いんですよねえ。そこが「ガンダム」としては物足りない。


 ただ、ロボ単体で見ると、それを補って余りあるくらい「カッコ良い」ロボなんですよね。


 デザインが全体的に鋭角的で、スラっとした細身であることは、七十年代的な力強さや無骨さとは一線を画し、いかにも八十年代的なスマートさにあふれています。


 また、顔デザインも、いわゆる「ガンダム顔」の印象を残しながらも細面で目が細いカッコ良いフェイスで、これ以降も通常の「ガンダム顔」以外に歴代ガンダムの一部に受け継がれる「ゼータ顔」の原型になっています。


 いろいろな意味で、初代ガンダムからは変化が大きいものの、このZガンダムを元祖として、のちのガンダムシリーズに受け継がれている要素も多いんですね。


 そういう意味では、やはり画期的なロボだったと言えるでしょう。


 続編『ガンダムZZ』では、立場が変わってZガンダムが一号主人公ロボとして序盤は活躍します。ただ、Zガンダムの登場が遅かった反省からか、ZZダブルゼータガンダム(以下ZZと略記)は登場が早いので、比較的早くに脇に下がります。もっとも、脇に下がっても元主人公ロボだったからか、扱いはむしろ主人公ロボだった頃より良い印象があり、かえって脇役ロボ時代の方がその高性能ぶりを発揮していたような印象があります。


 ただ、修理の都合で一時的にザクの頭を付けてたことがあって「Zザク」なんて呼ばれたりもしていましたが(笑)。当然、頭部が邪魔になるので、この状態だと変形できませんし(笑)。


 ZZの最後で大破するまで、約一年半にわたって活躍しました。それ以降も『逆襲のシャア』の「リ・ガズィ」や、『ガンダムUC』の「リゼル」などのほか、プラモやゲームでもZガンダムを元にしたバリエーション機や量産機がいろいろ出ていたりするので、その人気ぶりがうかがえます。


 アニメ作品としての『Zガンダム』は決して面白いとは思わない私ですが、ロボとしての「Zガンダム」は好きなんですよね。


 さて、次からは敵味方のMSなどを順番に語っていきましょう。まずは、序盤にでてくる「前作引きずり系MS」からにしたいと思います。


 君は、33年の涙を見る。

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