第72話 聖戦士ダンバイン(1983-84年)

 オーラロードが開かれた! ということで「呪われた名作」ダンバインの登場です。……と言っても、こんな風に呼んでいるのは私だけかもしれませんが。


 ダンバインについては、リアルタイムではほとんど見ていません。第1話から数話は見ました。日本に帰ってきたあとの話もチョロ見したおぼえがあります。主人公ショウ・ザマがバイクに乗ってるシーンを見たので。しかし、それだけです。当時話題になっていた富野監督による小説版『オーラバトラー戦記』も読んでいません。ただし、後年大人になってからCS放送で全話見ました。OVA版もCS放送で見たようなおぼえがあります。また、本作についてはスパロボに結構登場していて、むしろ最初はそっちで知ったと言ってもいいでしょう。


 要するに、リアルタイム時には切ってしまったんですね。これは、かなり明確な理由があって、ロボのデザインになじめなかったんです。これはWikiにも「生物的なデザインが幼年層に受け入れられなかった」みたいなことが書いてありました。そうか、当時の私は既に小学校高学年でしたが、幼年層並みの美的感覚だったのか!(爆)。


 あと、実は湖川キャラにもなじめませんでした。前作ザブングルも湖川キャラでしたけど、あっちはギャグっぽかったんで許容してたんですが、シリアス系のダンバインだとダメでした。イデオンはリアルタイムでは見てませんでしたし。これは完全に好みの問題かなと思います。おっかしいなあ、ほかの湖川キャラはそんなに気にならないのに、どうしてダンバインだけダメなんだろう? 目か? 目の描き方なのか!?(笑)


 ただ、これが理由で「呪われた」なんて書いてるワケではないです。現実の問題として、スポンサーであるクローバーが本作放送中に倒産してるんですよ。要するに、ダンバインの玩具が売れなかった、というのが大きいはずです……ってWiki見てみたら前回書いたスラングルもクローバーがスポンサーじゃん! そっか、どっちも玩具欲しいと思わなかったモンなあ(爆)。


 しかし、ダンバインの方はスポンサー倒産が大きなトピックとして書いてあったのに、スラングルの方は大して書いてなかったのは、スラングルのスポンサードにおいてクローバーは大して重要じゃなかったのかな? むしろアオシマの意向の方が大きいような記載がありました。


 ともあれ、スポンサー倒産という大きな事件を含みながらも、全49話がきちんと作られ、「陰の富野」らしく全滅エンドながらも物語はきちんと完結しています。ストーリーラインで言えば、名作と言えます。


 特に、この83年という時代でありながら、「異世界召喚」「ファンタジー」を組み合わせた富野監督のセンスには脱帽します。Wikiだと「ナウシカ」を意識したとか書いてありましたが、あれは未来の地球を描いたSFですから。ダンバインだと今日のWeb小説のパワーワード「異世界召喚俺Tueee!」をやってるんですよ。 『ドラゴンクエスト』(1986年)どころか『ドルアーガの塔』(1984年)すらまだ存在していない、この時代にやってる先見性はさすがとしか言いようがありません。


 ただねえ、早すぎた。私がついていけなかったように、そのセンスについていける子供は少なかったんでしょう。もっと高年齢層には受け入れられたのは富野監督によるノベライズ『オーラバトラー戦記』がベストセラーになって十巻以上出たことからもわかります。スピンオフシリーズもいくつか出ていますし。


 だから、作品としては面白いんです。実際、後年になって初めて全話通して見たら面白かった。


 特に、ヒロインのマーベル・フローズンは性格的には非常に私好みの女戦士だったんですよね。最初はガチ敵として出てきますし(笑)。ちなみに声優は早瀬未沙と同じ土井美加です。ただ、あのタラコ唇を含むキャラデザは受け入れがたいという(爆)。彼女が出る前に切ってたんですけど、当時の私なら彼女見たあとでもやっぱり切ってたでしょうね(笑)。あと、妖精キャラのチャム・ファウは面白かった。現在でも、彼女がモデルとおぼしき妖精キャラはWeb小説でも結構見かけますね。


 しかし、しかしながら! 後年大人になってストーリーは魅力的だったということを認識した上であとでも、やっぱりロボは受け入れられなかったんですねえ。オーラバトラー(ABと略記)と呼ばれる、生物部品を利用した比較的小型(七メートル前後)の巨大ロボは、私にとっては魅力的ではなかったんです。


 主役ロボのダンバインについては、第1話で色違いの三機があって、うち一機はショウのライバルになるトッド・ギネスに与えられていたという。ただ、ザブングルとマクロスを見たあとでは、主人公ロボが三機ぐらいは珍しいとも思わなくなっていました。これでトッドがずっとダンバイン二号機に乗り続けてショウと戦い続けてたなら面白かったと思うんですけどね。そういえば色違い同型ロボがライバルになるって展開は、後年『ガンダムUC』でやってましたね。さすが福井晴敏(笑)。


※うっかり、トッドとバーン・バニングス取り違えてました(汗)。@ikutose03様、ご指摘感謝です。


 ビルバインの方は結構カッコ良い変形ロボなのですが、クローバーにとっては時既に遅し(爆)。商品はトミーから発売されたのでした。これはCMを見る限りできも悪くなかったので、少し欲しいかもと思ったおぼえがあります。


 そして、こいつらについて言えば、スパロボでの活躍が凄かったことの方が印象に残っています。


 私がスパロボを始めたのは、プレイステーションの『第四次スーパーロボット大戦S』からなのですが、この作品だとオーラバトラーって「オーラバリア」を積んでて、ダメージ三千以下のビーム攻撃は全部無効化しちゃうんですよ。そのくせ、機体サイズはSでリアルロボ扱いなんで回避力も高いという。おまけに、リアルロボのくせに装甲値が高いという。


 「当たらなければどうということはない!」を地で行く回避力を持ちながら、当たったら当たったでビクともしないという恐ろしさ(笑)。


 あまりにも便利すぎて、ショウの乗ったビルバインに「集中」(回避力が上がる精神コマンド)をかけて敵のど真ん中に放り込んで「回避」させたら、非常に使いやすい囮になってくれて、敵の攻撃を全部吸収して全部回避なんてことはザラでした。余裕があったら「反撃」させて、その反撃だけで敵の雑魚ロボは撃墜されてましたし(笑)。


 ということで、本作のロボについては、玩具だとかプラモの印象はまったく無く、かわりにスパロボでの印象が非常に強いという、今までに無いパターンで刷り込みがされていたのでした。


 あ、そうだ、ダンバイン系の玩具でいうと、弟がSDダンバインの消しゴム集めてたな。それくらいしか我が家にはありませんでした。


 そうそう、主題歌はこれまた名曲です。カッコ良さと熱さと作品の主題を兼ね備えたロボソン、いやアニソンの名曲中の名曲。まだ若手レスラー時代の前田まえだ日明あきらが入場曲に使っていて……って、こういう直接は知らんことまで知ったかするのがアニヲタ、プヲタ共通の悪いところだったりするのですが(笑)。


 歌手のMIOは、のちに水木一郎が歌う前の「熱風!疾風!サイバスター」を歌ってるんですね。スパロボオリジナルの巨大ロボであるサイバスターって、元々はスパロボの「第二次」で登場予定だったダンバインが出られなくなった代わりに作られたオリジナルロボだったという話は前にスパロボのプロデューサーのインタビューを読んで知っていたんで「それでMIOかよ」と思ったものです(笑)。


 これは、改めて見てみると、リアルタイムで切ってしまったことが悔やまれます。やはり「早すぎた」名作だったんじゃないかなと思います。

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