第73話 装甲騎兵ボトムズ(1983-84年)

 いよいよ来ました、リアルロボットアニメの極北きょくほく、ボトムズです。これについては、リアルタイムでは一切見ていません……なのに、何で後番組のダイアポロンの再放送は見てたんだ?(笑) タカラ系なので私がやっていた頃のスパロボには登場していません。また、『青の騎士ベルゼルガ物語』などのスピンオフ小説も読んでいません。しかし、後年CSで再放送されたときに全話視聴しました。OVAも数多く作られていますが、CSで続けて放送された『赫奕かくやくたる異端 』しか見ていません。


 本作については、タイトルからして異端です。主役ロボの名前でも、主人公ヒーローの名前でもない。アーマードトルーパー(以下ATと略記)という身長四メートルほどのロボと、それに乗るパイロットを総称してボトムズと呼ぶという設定になっているのですが、同時に「最低野郎BOTTOMS」という意味でもあると説明されています。


 なんで主役ロボの名前ではないのかというと、これは簡単で、そもそも「主役ロボ」がないという大胆すぎる設定によるものです。もっとも、主人公キリコ・キュービィは好んで「スコープドッグ」というを愛用するので、これが事実上の主役ロボになっています。しかし、最終決戦では専用機「ラビトリードッグ」に乗り換えたりしています。


 「機種」と書いたように、キリコはスコープドッグを何度も壊しては捨てて、新しい機体に乗り換えています。乗り換え自体はマクロスでもありましたが、完全に使い捨て兵器として扱われているのがATの特徴です。当然ながら、スーパーロボとしての超越性など、どこを探してもありません。大きさから言っても「巨大ロボ」と呼ぶのがはばかられるサイズです。装甲も薄く、簡単に破壊されるシーンが随所で見受けられます。


 おまけに、角張ってはいるものの寸胴体型で、主役ロボ格のスコープドッグでも頭部は三連のメインカメラが前面に付いているだけというデザインです。


 しかし、これが実際に見てみると実にカッコ良かった! メインカメラがガシャンと回ってレンズが回転しながら伸縮してピントを合わせる様子が、妙にリアルに思えたのです。


 そして、AT全体の特徴として、脚に車輪が付いていて「ローラーダッシュ」と呼ばれる前傾姿勢での高速走行が可能だということが挙げられます。これがまたメチャクチャカッコ良い。


 私、実はこのローラーダッシュ機能を装備した「装甲アーマード騎兵トルーパー」の意味を、リアルタイムの頃、小学校高学年時には分かっていなかったんですよ。しかし、再放送で見てハッキリ意味が認識できました。本当に「騎兵運用」を前提とした兵器だったんです。


 ローラーダッシュで高速移動して、敵陣へ迂回突撃をかける、あるいはその高速性を利用して追撃、奇襲を行うという「騎兵的」な用兵思想を元に作られた兵器だったんです。


 ガンダムやダグラムは「歩兵」的な運用の兵器です(ガンダムの場合、宇宙では宇宙戦闘機になりますが、ここは地上戦での話に限定します)。まあ、装甲の厚さと攻撃力の高さから戦車的運用の方が正しいと思われますが、基本的に機動戦を前提にしていません。もちろん、ドムのような例外はあるかとは思いますが。


 それに対して、ATというのは「騎兵」なんですよ。だから、「装甲アーマード」と称していながらも、その装甲は薄い。機動性を重視している。これはWikiで読んだ設定でも書いてありました。


 だから、使い捨て的に戦線に投入されるんです。大きな損耗と共に大きな戦果を上げることを期待される兵種。それゆえにロボの性能にも兵士の質にも大きな期待はしない。まさに「最低野郎ボトムズ」なワケです。


 そんなボトムズの中でも、特に最強最悪とされる「吸血部隊」。右肩を「どす黒い血の赤」で染めた「レッドショルダー」の出身者がキリコなのです。


 この「レッドショルダー」の設定には、リアルタイムの頃には二次資料で読んだだけなのに痺れましたねえ。カッコ良いわあ。何というか、厨二心を非常に設定です……当時はまだ小学生でしたが(笑)。なんで、自作でもパクりました(笑)。


 ストーリーラインもハードでシビア。しかしながら、実はメインストリームは主人公キリコの自分探しと、ヒロインであるフィアナとの恋愛だったりします。


 そのフィアナの何が衝撃的だったかって、初登場時がスキンヘッドという(笑)。AVEXエイベックスの韓流廃品利用アーティストICONIQアイコニックも真っ青だよ! ……って、今は「伊藤ゆみ」名義の女優さんみたいですね。


 そういえば、このフィアナも最初はガチ敵として出てきますね。それも「最強の人工兵士」パーフェクトソルジャー(以下PSと略記)なんて強敵として、専用機ブルーティッシュドッグ(スコープドッグの改造機)に乗ってくるという。最初はシャア的な立場のヒロインだったんですね。


 そのほかの登場キャラもいろいろ個性的なんですが、いろいろなことの仕掛け人っぽいロッチナ(声優は銀河万丈)と、無能で姑息かつ卑怯な上官としてロボットアニメどころかアニメ史に名を残すであろうカン・ユー大尉(声優は広瀬正志)が特に印象に残っています。この二人、それぞれの声優が得意の類型のキャラで練達の演技をしていて存在感ありすぎです(笑)。


 結局、ラスボスのワイズマンは、作品の舞台である「アストラギウス銀河」の戦乱を背後から操っていた「神」を自称する集合意志体で、キリコはその後継者として選び出された「生まれながらのPS」=「異能体」だったという。しかし、キリコは「神」の後継者となることを拒否してワイズマンを滅ぼし、それにもかかわらず再開した戦乱において、自分たちの能力を利用されることを避けるために、愛するフィアナと共に宇宙でコールドスリープする道を選ぶところでTV版本編は終わります。


 このTV版本編を見終わった直後に、続編のOVA『赫奕たる異端 』を見たんですけど、正直見ない方が良かったと思いました(笑)。蛇足だわ、アレ。なので、語ることはいたしません。


 このボトムズについては、玩具やプラモについても、リアルタイムの頃は完全にノータッチでした。ダグラムについてはプラモとかは見かけてましたし、デュアルモデルみたいな玩具も欲しいなと思ってたんですが、ボトムズについては、それも無し。


 スコープドッグについては特にカッコ悪いとは思っていなかったのですが、ここまで興味がなかったというのは、実のところ当時は静止画で見てただけなので琴線に触れなかったからなんでしょう。あのカッコ良さは演出による部分が大きいので、実際に動いてるところ見ないと分からないですし。


 あと、主題歌「炎のさだめ」は超名曲です。ただ、これ「ボトムズ」って言葉はまったく入ってないんですよね。作品の主題テーマはこれ以上なく歌い上げている、こよなくカッコ良い歌ではあるのですが。この頃からアニメの主題歌にタイトル名を入れない風潮がはびこりだしたように思えます。なお、前にも書きましたが、なぜかアニオタ御用達カラオケ店「パセラ」では、これ選ぶと一番しか入ってないバージョンが最優先で選択されるという不思議な現象がありました(笑)。


 関連したスピンオフ小説やOVAなども数多く作られており、今なおプラモの再版や新作が作られているという、ガンダムやマクロスほどではないにせよ名作と呼ばれるにふさわしい「究極のリアルロボ」作品だったと思います。

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