第69話 超時空要塞マクロス その11 ミス・マクロス編

 さて、マクロス語りも11回目。今回はストーリーとSF設定について語りたいと思います。それなのに何でこのサブタイ(第9話からいただきました)になったのかは、最後まで読めばお分かりいただけるかと思います。


 さて、何でストーリーとSF設定について一緒に語るかというと、この二つが密接に関係してるからなんですね。マクロスの設定年代は2009年。なんと今から九年も昔ですよ! リアルタイム当時は二十七年も未来の話だったはずなのに!!(爆)


 えー、しかしながら、その年代でも人類が十メートル級の可変巨大ロボを作る技術は持ってないだろうというのが当時の未来予想でした。現実の2009年でも等身大ロボアシモは歩いてたり、巨大ロボガンダムの実物大像が建ったりはしていましたが、巨大ロボの実現はしていませんでした。その未来予想の問題を解消するのが、1999年に宇宙から落ちてきた巨大宇宙船マクロスなワケです。そこから得た超技術オーバーテクノロジーによって、人類の科学技術は飛躍的に進歩して、作中の2009年には可変巨大ロボを作れるようになったという設定なんですね。


 しかしながら、そこで異星人の存在が確認され、それに対抗するため地球全体を統合しようとする国と、それに反対する国の間で戦争が起こり、統合派の国が勝利して地球統合政府と、統合軍ができているのがマクロス世界の基本設定となります。


 このあたり、近未来を描く設定としては非常に上手いなあと思ったものです。ガンダム以降のリアル路線で考えれば、1982年当時において二十七年後にロボや地球統合政府ができていることはリアルではない。しかし、それを「宇宙から落ちてきた超技術を秘めた宇宙船」というガジェットで無理なくリアリティを持たせているという。


 そして、戦う敵である異星人ゼントラーディもまた、非常に特色がありました。その第一の特徴は、既に前述した「巨人」であること。この設定によって、人類側が「巨大ロボを作る」必然性というものが生まれたんですね。巨人と白兵戦をする可能性を考えていたという。


 そして、もうひとつの大きな特徴が「文化を持たない」こと。それによって、「キス」や「アイドルの歌」といったものに大きな衝撃を受けるという。これによって、「アイドル歌手リン・ミンメイ」というキャラクターが登場するという必然性が生まれたんですね。


 そう、「文化を持たない巨人とのファーストコンタクト」という実にSF的な設定それ自体が、ストーリーラインと密接に絡みついているんです。


 そして、この二つの設定が作品にもたらしたものは何か?


 「巨大ロボット」と「アイドル」=「美少女」なんですよ!


 巨大ロボットアニメが本来ターゲット層としていた、未就学幼児から小学校低学年クラスの男の子が好きな「巨大ロボット」。そして、それを卒業した「少年」が興味を持ち始める「アイドル」と、そこから更に上のティーンエイジャーの興味の中核たる「美少女」。これらを、ひとつの作品に、その作品の根幹をなすSF設定に絡めて無理なく押し込むことができたという。


 そして、これらはのちに「オタク」と呼ばれる、こうした幼年期やティーン期を過ぎたら卒業するのが当然と思われていた趣味嗜好を、それ以降も持ち続ける層に強烈にアピールする要素だったのです。


 感想欄でもご指摘があり、またマクロスについてWikiで調べていたときにも出てきたのですが、「そもそも『オタク』という言葉自体が実は輝が使った二人称が元ではないか」という説もあるくらいに、マクロスという作品はオタク層に強烈にアピールする作品だったわけです。


 だから、人気があった。だから、売れた。


 日曜午後二時という、子供向けアニメとしては信じられないような辺鄙へんぴな時間帯にやっていたにもかかわらず、です。実際、直前の時間帯にやっていた『レインボーマン』は、名作特撮作品のアニメ版という有利な条件がついていたにもかかわらず、討死しています……追加された巨大ロボ「レインボーセブン」のデザインが同時代的に見て余りにもダサかったという非常に大きなマイナス要因があるにせよ(笑)。ちなみに、私も見ていなかったので、当エッセイではアニメ版レインボーマンは扱いません。


 ただ、ひとつマクロスの影響があったことがあると思うんですよね。ガンダムについて書いたときの感想に、こんな主旨の書き込みがありました。「ガンダムも今では美少年美少女ばっかりになってしまった」と。


 つまり、マクロスの成功で「ロボ+美少女」の組み合わせが成功条件と思われてしまった、ということです。まあ「美少年」も入ってるのは、前述したゴッドマーズのせいじゃないかという気もしますが、「美少女」が入っているのは、かなりの部分でマクロスの影響が大きいかなと思えます。


 もちろん、マクロス以前にも美少女はいましたし、マクロス以降のフォロワーも大きな影響を与えたことは否めません。


 しかし、リアルロボ路線を継承した『ダグラム』においては美少女と呼べる存在が少なかったということを思うと、作品の象徴としてリン・ミンメイという美少女アイドルが存在するマクロスは、成功要因に「美少女」を組み込む大きな原因になったのではないか、と思えるのです。


 ただねえ、ばっかりじゃあ、やっぱり何か違うなあと思うんですよね。おっさんのごとなのかもしれませんが。


 前述したように、主人公一条輝のヒロインは早瀬未沙です。しかし、マクロスという「作品」を象徴する女性キャラはリン・ミンメイの方なのです。


 そういう意味では、リン・ミンメイというのは、正に「偶像アイドル」であり「マクロスを代表する美少女ミス・マクロス」なのかもしれません。

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