第9話 勇者ライディーン(1975-76年)

 今回は元祖変形ロボ、ライディーンです。今回放送年を調べて意外だったのは、これ放送開始日が1975年4月4日と、グレンダイザー(1975年10月5日)やゲッターロボG(1975年5月15日)より前なんですよ。漠然と、もっと後の作品だと思っていました。


 リアルタイムで見ていた覚えもあるのですが、実際に記憶に残っているのは再放送ですね。これは絵本や漫画の記憶がないので、テレビで見たものと、スパロボでの印象が大きい作品です。


 ライディーンについては、何と言っても元祖、まともな変形ロボという点でしょう。ただ、これはスパロボで認識したんですが、ゴッドバード形態って、ほぼフィニッシュ用なんですね。通常のロボ形態で飛行可能なので、別に飛ぶために変形する必要性が無いという。一応、たまに長距離移動とか敵の追撃で使ったこともあるんですが、実質フィニッシュ専用に近いんですよね。


 また、実はアストロガンガー以来の唇があるロボで、マジンガー的な黒目の無い角張った目と、唇を組み合わせた初のロボだったりします。


 武装の特徴は、左腕に固定武装として弓を持っていること。また、剣が盾と一緒になって右腕腕部装備型であるのも珍しいと言えるでしょう。


 フィニッシュは序盤はゴッドバードで、のちにより強い武装としてゴッドボイスが登場します。ゴッドバードは武装というよりは必殺技といったおもむきがありますが、初の体当たり系の技です。ゴッドボイスは音波系の攻撃というのが珍しく、また威力が強すぎて機体やパイロットに悪影響を与えるので多用できないという制限がかけられている珍しい武装です。


 設定的な特徴としては、古代ムー文明によって作られたロボットということで、外見はメカ的なものの、内部は奇妙に生体的なデザインだったり、自分の意志を持っているように描写されることがあったり、神秘のパワーを秘めていたりします。このあたり、現代人類以外の叡智の結晶であるためワンオフ機で量産できず、ムー人の子孫である主人公しか操縦できないという理由付けにもなっていたりします。


 操縦法として、主人公の動きをトレースするという方式を採用しているのも初です。椅子に座っているので上半身のみですが、後にダイモスも同じ方式をとり、さらに後年には全身トレースのGガンダムも現れるなど、格闘技術のあるパイロットが格闘系ロボを操るときに説得力のある操縦法になります。


 ストーリー面でいうと、前半の富野監督と後半の長浜監督で路線変更があったというのがオタ的には有名なんですが、実際に見ていたときには、そんなこと分かるはずもありません(笑)。


 悪役として元祖美形悪役プリンス・シャーキンが前半の敵司令官役です。声優の市川治は、このあとコンバトラーのガルーダ、ボルテスのハイネル、ダイモスのリヒテルと長浜ロボの美形悪役を連続で勤めますので、ミスター美形悪役と言えるでしょう。


 後半は後任司令官の巨烈兄弟が自分たちの巨烈獣を戦わせて、勝った方がライディーンを襲撃するという展開になるのですが、幼心に「二体で襲わせればいいのに」と思ったものです(笑)。


 いろいろとツッコみどころがある作品なのですが、再放送で見たときに一番強烈に印象に残っているのが中盤での主人公死亡事件です。


 敵司令官のシャーキンを倒したあと、巨烈兄弟が現れて、それまでの化石獣からパワーアップした巨烈獣でライディーンを襲い、ライディーンは大苦戦をしいられてボロボロにされます。そして、何とか巨烈獣を倒すものの、相打ち状態でライディーンは大破し、主人公も死亡(仲間の超能力者が「命が感じられない」というようなセリフを言う)してしまいます。


 嘆き悲しむ仲間たち。ところが、その直後に神秘のパワーが発動して、ライディーンは完全に修復され、主人公も生き返ります。


 はっきり言って「はぁ!?」でした(笑)。


 再放送時には、既に小学生でした。だから、このエピソードの持つ恐ろしさに気付いてしまったのです。


 だってこれ、ライディーン倒しようが無いじゃないですか。相打ちとはいえ、事実上の敗北状態で主人公も死亡したというのは、敵にとってはベストエンドですよ。それがチャラにされてしまうということは、敵には絶対勝ちようがないってことです。これ以降、どんなに強力な敵が出てきたって、負けて死んだりしても復活できるんだから最後には勝てる。


 こんな状態になったら、どんなにピンチを演出したって、緊張感もクソも無くなっちゃうんですよ。


 そして、たった今、これを書いてて気付きました。これ、ドラクエの勇者と同じです。負けて死んでも「おお しんでしまうとは なにごとじゃ」という王様のお叱りだけで復活できるドラクエ勇者。


 そうか、伊達に「勇者」と名乗ってないぞライディーン!(笑)


 それでも、ドラクエは自分でプレイしてて、死んだら所持金半額というペナルティがあったので、それなりの緊張感はありましたが、見てるだけのアニメでこれやられたら致命的でしょう。


 Web小説だと「死に戻り」ジャンルがありますが、あれは死に戻って工夫するのが売りで、緊張感は売りにしてないからまだいいんですけどね。


 スパロボでも普通に使えるスーパーロボットなのですが、前記の自己修復設定があるので、撃墜されたときに修理費が必要というのが納得できなかったり(笑)。


 なお、はるか後年になって後継作『超者ライディーン』が作られますが、一応終盤にゴッドライディーンというロボは出るものの序盤はヒーロー物になっており、未見でもあるためこのエッセイでは取り扱いません。


 さらに後年、衛星放送で初放映された『REIDEEN』という作品も作られるのですが、こっちはCSで再放送されたときに全話チェックしちまったんだよなあ……あとで書くかもしれませんが、正直気が進まないというあたりで、出来をお察しください(笑)。

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