子供や老耄共が穏やかに行き交うこの河川敷、そのど真ん中で札束が宙に舞うのはとても異様だ。

 そこに、突風が吹き付ける。

 中央に固まっていた万札が俺の方まで飛んできた。

 それでも彼女は高笑いを続けた、と言うより更にボリュームを上げてきやがった。

 五月蝿い訳じゃないが、奇態だ。

 俺は誰も取ろうとしなかった、宙に舞う万札を1枚取ってポケットにしまい、彼女の方へ向かった。

 もう一束、札束の帯を切ろうとしていた彼女の腕を掴み止めた。

 「何をやっているんだ君は...」

 恐る恐るの口調で自分は言った。

 「何って、お金を捨てているんですよ。」

 冷静な口調だ。

 「取り敢えず、お金を捨てるのはやめな、お金を捨てると...ほらっ!...警察的な何かの厄介になることなるよ…きっと。」

 「そうすると、道端に1円玉を落としてしまった人でも厄介になるということですか?」

 「へ?」

 ヤメロォ浅学がしれる。

 「そ、それよりなんで君はお金を捨てているんだい?今の御時世お金があれば何でもできるのに。」

 「私はそれが罪に感じるのです。」

 「へ?」

 奇特なやつだな。

 金さえあれば何でもできる、金さえあれば誰も自分に屁理屈な大人理論をぶつけることはないだろう。

 金は善きものなのに。

 「罪とはなんだい?」

 「この金は、私が貯めたお金なんです。」

 「あ、あぁ、うん、え?、あぁ」

 理解理解

 「貯金にはこれの何百倍のもお金があります。」

 「えっ、」

 このトランクだけでも、最低三千万は有ると見込んでいるのだが。

 日本にそんな大富豪居るの!?

 「私は、それだけ他の民からその分お金を奪ってきたことになります。」

 民とか言ってるよ。

 「私はただ働いていただけ、お金なんて要らなかった、こんな罪悪感と共同体になりたくなかった。」

 彼女は興奮していた。

 口調も冷静さを無くしていた。

 「なぜだ、なぜ、金とはこんなものなのか、ならこんなもの芥になればいい、私はいらない!」

 そう言い、帯を切りまた宙に投げた。

 何度も切っては投げを繰り返していた。

 その時だけ彼女は笑顔で、高笑いをしていた。

 最後のひと束になったところで、自分はその札束を取った。

 「あれれ、盗みですか?そっちが警察の厄介になりますよ。」

 不遜な笑みだな。

 「まぁ、そうなるかもしれないけど、君は金がいらないのだろ。」

 そう言い、札束から十万程抜き取り、残りの札を宙へ投げた。

 「腹が減った、君も来い、鬱憤的なものは飯の場で話して晴らすのが一番だ。」

 そう言い彼女と一緒に飯を食うことになった。

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知らず知らずの未知すがら @atirakotira

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