Rouge-2
「おい、こいつ───」
凪はこれ見よがしに突き付けられた、犯人と思しき人間の写真を見て呟く。
「───女じゃねえか」
その一言に、またもや廻間は固まった。
「えぅ嘘っ!?」
「嘘じゃねえよどうやったらコレ男に見えんだよ」
「えっ、えっ」
「うん、確かに女だわ」
嵜もそういったことにより、廻間はさらに背筋を凍らせた。白昼堂々目をつけられて後を追われたのにも悪寒が走るが、それよりも女装していたにもかかわらず、相手が異性だったことに正直この上ない虫唾が走った。なぜなのかはわからない、けれどもどうしても気持ち悪さを感じられずにはいられない。
「マジぃ…?」
「マジだ。変なヤツに目ェつけられたもんだな」
「やめてぇ…」
廻間は凪から肩をポンとたたかれ、同情にも似たそれを言われるとなんだか悲しくなって、その場にうずくまる。哀れ廻間、とぼそりと嵜はつぶやく。
「どうすんだ」
「どうするも何も…」
殺す以外ないでしょ、僕の保身のためにも。そう廻間が小声になりながら言うと、凪と嵜はため息をつく。やっぱり殺さなきゃなんないのか。コイツの為にも。と凪は思う。なぜだろう?わからない。
「やだよ?女の子にあんなことやこんなことされるなんて」
「知らねーよ勝手にやられてろ」
「ひどいっ」
「なんにせよ。こののまま殺人鬼を放っておけば被害が拡大するのは事実です。早めに対処しなければ廻間さんの処女も奪われてしまいます」
「ねえ、一縷?ちょっとこら?」
廻間は一縷の一言に、何か言いたげにする。が、他の3人は廻間を置いてどんどん会話を先へとすすめる。1人取り残された廻間は、なんでぇ、とつぶやいてみるも、悲しいかな、それを拾うものは誰もいなかった。確実に廻間を囮にして殺す作戦で進められていっている。勘弁願いたいのだが、今ここで口出しをすればもっとひどいことになる。そう思った廻間はますます何も喋れなくなっていく。それに3人が気づくわけでもなく、彼らだけで話をすすめる。
「ま、廻間の処女がどうこうは置いといて、だ。こいつについての詳細な情報はつかんでるのか、一縷」
「ええ。もちろんどっさりと」
「詳しく」
一縷はまっすぐに凪と嵜を見据えて、彼女が調べた限りの情報を、そのまま自らの推測は混ぜずに、語り始める。
年齢は20代。現在大学4年生で、絶賛就職活動中。名は『 』。両親は大企業のサラリーマンと国家公務員。家族中は比較的良好だが、箱入りのケがある。異性とはほとんどかかわりを持たずに生きていたため、性対象が同性に傾くようになった。が、それで抑えられれば別によかったのだが、ある時ついにタガは外れ、気になった女性を取っ捕まえて『そういうこと』を施したのちに、興奮しすぎて惨殺するようになった。1人では飽き足らず、幾人もの女性を捕まえては『そういうこと』をして惨殺、その後は適当な場所へ遺棄。その繰り返しがもうどれだけ続いてるだろうか。凶器は包丁。それもかなり刃渡りが大きめのものだという。
「これくらいですかね。何か質問は」
「今そいつは誰かと暮らしてるか?」
「非常に言いにくいのですが、ご両親はキンシンナンチャラというものをされた後に、惨殺されています。親でも守備範囲に入っていたようです。幸か不幸か、ご両親は殺害される前に、娘にかかりっきりになりたいと、退職届、または辞職届をだしていたようです」
「つまり1人暮らし…」
「そういうことになります」
一縷は首を縦に振る。凪と嵜はそれに、うげえ、と言いたげな顔になっていく。無理もない。『キンシンナンチャラ』をされた後に、むごたらしく殺されるというのは、想像もしたくないし考えたくもない。というか気持ち悪いだけだ。まさか肉親までもターゲットに入っていたとは。自分たちだったら死んでもやりたくはない。否、それが普通なのだろうが。
その話を聞いていた廻間もそれこそ表情は、覆い隠している白い紙のせいでわからないが、彼自身の雰囲気が悪くなっていく。それが『普通』の反応だろう。会話をぽろぽろと聞いていても、ドン引きさせるのには十分なものだった。どう教育したらそんなことができるのだろうか。恐ろしすぎる。というか最近の若い子たちすんごく進んでるんだね。廻間はあまりの内容に、突飛な発想まで頭に浮かんでしまう。が、すぐにいやいやそりゃないだろ、とその考えを打ち消す。そんなんだったら凪と嵜もとんでもないことになってる。主にキンシンナンチャラとかいうやつの意味で。
凪はいくらか話がそれたな、と話題を元に戻した。
「で、だ。決行はいつにする?」
「まった。まだ話が早すぎるよ凪」
とそこで嵜が待ったをかけた。
「いくらなんでもターゲットと手法が分かったとはいえ、今日出るかなんて決まってない。それに」
「それに?」
嵜は廻間のほうをチラリとみて、
「こんなので釣れるとも決まってないじゃん」
と、爆弾を輪に落とした。
「は?」
「もし仮に今日やるとするよ。コイツで釣るとするよ?本当に引っかかるかなあ。しかも出現場所もわかってないんだよ。どうやんのさ」
「え、何それどういうつも──」
「確かに一理あるな」
「凪?ねえ凪?」
嵜の意見に賛同の意を見せる凪。だが1人廻間は、『何を言ってるんだこの双子は』と、焦って意味のない動きをするばかりである。見ていて滑稽な動きではあるのだが。それでも鬱陶しいことには変わりない。凪は廻間の頭上に手刀を振り下ろす。
ドゴン、といい音。
「ったあ…」
「一縷、出現場所については?」
「廻間さんが行かれたショッピングモール付近に、目撃情報多数」
「なるほどな。目撃情報があった平均時刻は?」
「深夜2時あたりです。その時間をうろついているほうもうろついているほうですが」
「そこは気にするな。ま、大方遊びあるってたんだろ」
一縷は若干小さいため息を漏らすが、反対に凪は多少のことは言わないでやんな、と彼女をなだめる。多少のこと、ではなさそうなのだが。嵜は心の中で思うがそっと胸にしまっておく。もちろん、痛みに耐えている廻間は3人ともスルー。
「みんな、さすがに気にしてよ僕の現状…」
「こりゃ、今日中にいけるんじゃないか」
「だといいけど」
「そうとなれば準備をしましょう。私は機材を用意して車を回してきます」
一縷はそれだけ言うと、すぐに会話から抜けて、いつのまにやらどこかへと去っていった。瞬きをしている間にすでにいなくなっていたようだ、一瞬で彼女の姿はどこにもなく消え去っていた。それどころか気配もない。やれやれ、アイツは忍者の末裔かなんかじゃねえのか?凪はそう思うが、んなわけねえか、とすぐに否定した。
よし、と凪は多少背伸びをして、ズボンのポケットに手を突っ込む。嵜も同様にあくびをしつつ、メガネの位置を直す。
「じゃ、こっちも用意しねえとな。廻間、オメーも」
「え?なんで?」
ごく自然な流れで名前を呼ばれた廻間は、いまだ痛む頭頂部をさすりながら、凪のほうを見る。だが凪の、こちらを見るその眼には、嫌な予感しかしなかった。当然のことながら嵜の多少口角をあげて(アルカイックスマイルといったか)、廻間を見てる。なんだこれは。自分は何かしたのだろうか。とても気味が悪い。身内に根田ことを思うなんて、久しぶりな気がしてならなかった。
その直後、廻間の両腕を、凪と嵜の手ががっしりとつかんだ。意外と力が強い。それもそのはず、片方は刀をブンブン振り回して、もう片方は銃をバカスカ撃ちまくっているのだ。それなりに腕力や握力はあるはずだ。自然と身につくはずだ。『ほとんど運動しない人間の腕をガッシリとつかんで離さない』くらいには。こころなしか、メキッと嫌な音が腕からなった気がした。絶対になっちゃいけないタイプの。
「えーと?何をするつもりなのかな?凪さん?嵜さん?」
「安心しろ。抵抗しなければ痛くはねえだろ」
「ねえそれ悪役のセリフだよね?」
「私たちがいいオンナに仕立ててあげよう」
「ねえ、嵜?それどこで覚えたの?ねえ?」
そんな茶番が続いたと思ったら、いつのまにやら廻間は強い衝撃により意識が飛び、凪と嵜は動かなかくなった廻間をずるずると、一室に連れて行くのだった。
その姿はさながら、連行されるエイリアンの写真のようだった。
◇
深夜2時。草木も眠る丑三つ時。人々はとっくに眠りについているころ。あたりはじいん、と静まり返っていて、鳥のさえずりすら聞こえない。いくらかぬるい風が、頬をいやらしげに撫でて通っていく。まるで骸の手で、ぬるりと撫でられたかのように。気味の悪い風が音もなく、伝う。
そんな夜にたったひとり、ぽつぅん、と閉店したショッピングモールの駐車場で立ち尽くす少女がいる。つややかな、流れるような長い黒髪をたなびかせ、まるで育ちの良い場所の生まれなのかと思わせるほどの、淡く彩られたワンピース。首元には似合わぬチョーカーを巻き付けて、その色白い肌は雪原を思い起こさせるようだ。
その少女にゆらりゆらりと近づく人影。少女とは対照に、肩までかかる髪をそのまま流し、現代の女子大生のようにはつらつとした恰好。おそらく成人はしているのだろう。やってきたその女は、少女に声をかけた。
「あのう。どうされました?」
「…私、ですか?」
少女は振り返る。女は少女の顔を見て、ハッと息をのむ。だがそれもすぐに押しとどめて、自然な笑顔を作る。あくまでも、自然に。
「こんなところで、何をされているのですか?」
「…私、今の家が嫌になったんです。気づいたらここにいました」
「そうですか…ところで、昼間は何を?」
「そんなことをきくのですか?その、昼間はこのショッピングモールにいましたけど…」
「なるほど。ここが心のよりどころ、というかいつの間にかくる場所、って感じですか」
「はい。そうだと思います」
女は少女のその言葉に、内心決まった、と確信する。昼間の間に目星をつけていた狙いのあの人に違いない。今日は運がついている。狙った女の子が、その日のうちにゲットできるなんて。女はひどく上機嫌だ。まだ何の根拠もえられてはないというのに。女は行動に移しそうになるその手を必死に抑え、少女に話を続ける。
「こんな遅い時間ですけど、この後どうするんです?」
「…あっ、どうしよう。こんな時間に出てきたの、戻ったらばれちゃう」
「泊まる場所あるんです?」
「いえ、ないです。お友達の家に行っても、この時間は迷惑だし」
ここだ、と女はついに踏み込んだ。
「なら、私の家に来ませんか?私1人暮らしなんで、大丈夫ですよ」
「よいのですか?」
「ええ。それに女の子同士なら、なんてことはないでしょ?」
その言葉にパァッと顔を輝かせた少女。まるで一縷の光をつかんだようだ。
「じゃ、じゃあ是非、おねがいします…」
「よかったあ!それじゃあ行きましょう!」
少女がそういうと、女は彼女の隣に立ち、満面の笑みで背後に手を回す。その手にはすでに、『何かの薬品』をたっぷりとしみこませたハンカチが握られている。手に握られたハンカチを、ゆっくりと、ぬるりと少女の口元へともっていく。
「───なんて、言うと思った?」
その瞬間、少女らしからぬ声に変わったとおもったら、少女は思いっきりその握られたハンカチをはじいた。パァン、といい音が鳴る。
「ッ!」
「あーなんでこんな事させるかなー。僕の女装はこんなのに使うためじゃないのにー」
「え──あなた女装って」
女はわなわなと震え、少女『だったもの』を見る。それはいつの間にか外していた、不似合いなチョーカーをくるくると、指で回して愚痴をこぼす。その声はまるで、『成人男性』の声で。女はしきりに震える。それを面白そうに、否、『いやそうに』少女だったそれは女を見る。そしてため息一つ。
「僕を気絶させておとりにすんだからさあ。ちゃんと『成果』は出してよ」
「そりゃもちろんだ。お前はもう下がってていいぞ」
その瞬間、女の足元にめがけて何かが飛んでくる。カツン!と音が鳴り、足元を見ればそこには銃弾。どこからか放たれたらしい。確実に、『脅迫する』ように。サイレンサーをつけているのだろうか、ほとんど音はなかった。女はワンテンポ遅れて自らの置かれた状況を理解する。
「まさかこんなハンカチで…大方眠らせようとしてたんだろうけど、ありきたりすぎじゃね。まあどうでもいっか。そんじゃ2人とも。頼んだよ。」
刹那、女は走り出した。どこかへと、自らもそれにわからずに。ただひたすら走る。なんでこんなにも必死に走っているのだろう。どうして怖いんだろう。どうして、どうして。自らに問いかけるように繰り返せば、どんどんわからなくなっていく。何が?自分自身が。わからない、わからない。
後ろをちらりと振り向けば、確かに追いかけてくる二つの陰。人に助けを求めるにしても、悲しいかな、今は草木も眠る丑三つ時。こんな時間にまともな人など活動していない。しているとしても、状況が状況、誰も信じちゃくれないだろう。というかどうしてこんな時間に、あんな場所に行こうと思ってたんだっけ。ちょっと散歩がてら、見に行ってみたかっただけだったっけ。何したかったんだっけ。
女はショッピングモールの駐車場からひたすらに走り続け、やがて細い路地の中へと入る。こんな場所あったんだ。知らなかったなあ。まるで他人事のように思う。そんなことを考えている暇なんてないのに。本当なら、あすこで狙い通りなら、いまごろ持ち帰って、楽しいことをして、その後は適当に処理してポイ、そんでいつも通りに戻るはずだったのに。なんでこんなことになっちゃうかなあ。なにがいけなかったかなあ。
女がひたすらに走り続けて、たどり着いた路地の先は一面の壁。つまりは行き止まり。さてどうしようか。この壁を上る、なんてことはできない。木登りの経験も、上り棒で遊んだことも、一度もない。だから、登れるわけがない。階段でもあったらよかったのに。あるわけがないのにそんなことを考える。あるわけが、ないのに。
やがて、二つの音が響いて、ころりとした声音が耳に届く。
「───よう。いい夜だな」
「ホント、いい月が空に出てる」
その声は双方から聞こえてくる。後ろからと、前からと。
後ろには、スラリと輝く玉鋼の刀。前には、月明かりで照らされる鈍色の銃。
二つは女を確かに見据えて、己のえものを見せつける。自慢?脅し?否、どちらでもなく、殺すために。ただただ、殺すために。
「『 』」
己の名を呼ばれた女は、名を呼んだ刀のほうにバッと顔を向ける。その姿に、刀は『にやり』と笑う。じっとりと笑う。ねっとりと笑う。「やっぱり」と言いたげに。その笑みに、女はひどく恐怖した。ひざはガクガクと面白いほどに笑い、手の先はひんやりとして冷たい気がした。その手を鞭打つように、念のためにと持っていた包丁を、腰につけていたポシェットから抜き取る。その包丁は赤黒いものがこびりついてしまっていて、本来の輝きは見る形もない。
「なぁに、その包丁。使い物にもならないじゃん。相当使い込んでるんだね、ソレ」
「使い込んでる用途が違うだろうがな」
「それもそうだね。ついてるモン見ちゃったら嫌でもわかる」
女を挟んで会話する二つ。訳が分からなかった。これらは、何が目的で自分を挟んだのか。なんで銃のほうは、『壁の上』にいるのか。どうやってきたのか。そして、『今から何をするのか』。訳が分からな過ぎて、どうにかなりそうだ。女はすでに泣きそうだった。ああ、こんなことなら、ラッキーを頼りに出歩かなきゃよかった。いつもそうしてきたから、感覚が狂ったのか。もういいや。
女はもうトんでいた。一心不乱に包丁を振り回す。近づくな、近づくな、殺すぞ。何度それをいっただろうか、前が見えない、後ろも見えない、何も見えない。くるな、くるな。
だが、その駄々っ子のような抵抗も、ひとつの弾丸によって、あっけなく終わりを迎える。包丁は手から離れ、カツン、と地に落ちる。もう包丁は動かなかった。拾う手も動かなかった。
「うちらのツレ、あれで男なんだわ」
なんともまあいまさらなことを、刀を持ったそいつは面白げにつぶやく。
「っつっても、アンタをおびき出すためにおとりにしてただけなんだがな」
せせらそいつは笑う。違う、私はただ散歩がてら来てみただけ。単なる偶然、ラッキー。それだけ。本当に偶然。
「…ハハッ、面白いこと言うな、アンタ。でも今までにしてきたことは、言い逃れできねえだろ。どうせアイツも連れ去って、いろいろシた後にポイ捨て、につもりだんたんだろ。体バラバラにして」
知らない。私はそんなことしてない。体をバラバラになんてしてない。知らない。知らないってば。
「でも。結局同じだろ。性欲処理道具にして殺してポイって、それ専用のオモチャでも買ってろっつー話だ」
「ほんそれ。なんでそれでできなかったのか」
ゆらりと刀は動く。確実に、殺しに来るように。
もう女の精神は限界だった。もうどうにでもなれ。もういいや。もう、もう───
「じゃあな。二度とそのツラ見せんなクソ野郎」
最期に見た夜空は、嫌に赤かった。
◇
「お疲れ様でした」
家に帰り、一縷は凪に声をかけた。
あの後。廻間がやってきて遺体を処理し、一縷の車で2人は一足早く戻った。車の中で手渡されたタオルで顔やら何やらをふき、今回の報告を細切れに話していたのだが、嵜は疲れたのか眠かったのか、ぐっすりと眠ってしまったようだ。そのせいで今いる部屋には凪と一縷しかいなかった。凪はもうすでに衣服を着替えてしまっていて、いつものように作務衣で過ごしている。
「さほどてこずりはしなかったようで」
「単純で助かったな」
凪は一縷が持ってきた緑茶を飲む。
「そういえば凪くん」
「なんだ」
「また追加で調べていたのですが、あの殺人鬼。殺害後の遺体の唇に、『ルージュの口紅』を塗っていたそうです」
「ルージュ?」
「理由は今となってはわかりません。ですが、その殺人鬼が好んでよくつけていたのが、ルージュの口紅だそうで」
「へぇー…」
そういえばたしかに、ちらっとだが、ルージュっぽい口紅はしていたな。凪はどうでもいいように思い出す。今となっては無用の情報だ。
「あ、そういやアイツ」
「どうされましたか?」
凪はふと思い出したように呟く。
「体バラバラにしてーって言ったら、『知らないやってない』ってずっと言ってたな」
「え」
「なーんか引っかかんだよな…」
「…」
いったい何だったのだろうか、凪は思考の海に溺れる。が、一縷の次の一言で海から救い出される。
「ですがもう終わってしまったことですし、気にしても仕方がないのでは」
「…それもそうだな」
凪は緑茶を飲み干し、空になった湯呑を一縷に差し出す。それを嫌がることなく、一縷は受け取る。
「ルージュ、ルージュねえ…」
殺人鬼の口に塗られた『ルージュ』が、嫌に凪の眼から離れない。
終
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