第10条-01-02 著作財産権

 著作者人格権は著作者の人格的側面を守るのに対して、著作財産権は著作者の財産的側面を守ろうとする。著作物を公開するにあたって、著作者が経済的な損失を受けないようにするためのものである。

 著作財産権は著作者人格権と異なり、著作者以外に対して権利を譲渡または売り渡すこともできる。著作者人格権を持つ人と著作財産権を持つ人は別、ということはざらだ。


 まずはコピーを作ることに関する権利、複製権である。形をもつあらゆる媒体に対する複製は著作者のみが自由に行えるとする権利である。


 著作物そのものまたは複製されたものを使って提示することに関する権利に分類されるものとしては公衆送信権と口述権が関連する。

 公衆送信権の中にも色んな種類があるが、ウェブ小説に関係するとなると、そのうち、自動公衆送信と呼ばれるものがあてはまる。これは早い話、カクヨム上で小説を検索して、気になったものを画面に表示する。この操作が自動公衆送信だと考えられる。


 はてさて、利用規約上に自動公衆送信を許諾するよう書いてあっただろうか?


 口述権は言葉どおり、小説を朗読などの方法で著作物を使用することである。多くの人が気づいていないかもしれないが、カクヨムでかつて開催された、「カクヨム異聞選集 ~本当にあった怖い話・不思議な体験コンテスト~」で権利が譲渡されているのだ。LisPonとコラボして開催された当コンテストだが、怪談朗読コンテスト応募作品を朗読するコンテストも開催されていたわけだ。コンテストに応募した作品はLisPonユーザは朗読することができる。

 まさに階段朗読コンテスト応募者はLisPonユーザに対して口述権を譲渡したことになるのだ。


 公衆送信権と口述権は著作物そのものあるいはそのコピーを使う権利だが、コピーのみを対象とするものもある。それが譲渡権と貸与権だ。

 譲渡権は公衆に対して譲渡することを著作者のみに認めるものである。この権利は少々複雑である。特徴をまとめると以下の通り。

・一度適法に譲渡されたものについては譲渡権が消滅する。

・「公衆向け」に譲渡された場合のみに適用されるもので、特定少数の人に対して譲渡することには適用されない。この譲渡権、もともとは海賊版コンテンツの販売を規制するために用意されたものであるためこの制限が与えられている。特定の人物に対するプレゼントには適用されず、今までどおりプレゼントを行うことができる。


(プレゼントしてくれる人がいるのは羨ましいな……)


 貸与権は言葉通り、著作物を公衆向けに貸与することは著作者のみに認めるものだ。ただし、図書館での館内での貸出は貸与に該当せず、館外への無料での貸出については例外として認められている。


 複製権・公衆送信権・譲渡権・貸与権、それぞれの説明に「公衆」という言葉が出てきたが、この語は著作権を知る上で大事な概念の一つである。公衆という言い回しをした場合、言葉が示すのは「不特定多数」または「特定多数」のいずれかをに対して公開することができる状況を示す。

 端的には「たくさんの人」である。逆に言えば、不特定少数や特定の少数に向けられた創作物に対しては、著作財産権は存在するものの実質的に行使できないことを意味する。


 最後は翻案権・翻訳権と言われるものだ。いわゆる二次創作・二次的著作物に影響する規定である。著作物に対する二次的著作物を著作者の許可なく創作されないこと、更には創作された二次的著作物を著作者の許可なく利用されないことを明記するものだ。

 この場合の二次的著作物は原著とされる著作物に対して、「創作的な加工」を施したものをいう。二次創作と一般に言われるや翻訳がこれに当てはまる。

 カクヨムにおいては、運営がリストアップした作品であれば二次創作をしてよいことになっている。これはリストアップした作品に対する翻案権を運営が認めているからこそ実現できていることなのだ。リストアップされていない作品やカクヨムの外部でリストアップした作品の二次創作をすることは翻案権の侵害にあたる。

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