第10条 知的財産権
この条文は運営と会員それぞれが保有する知的財産権について言及する。利用規約の中で注目すべき条文の一つである。
まずは運営の知的財産権についてだが、対象はサービスとソフトウェアに対するものである。つまり、カクヨムというサービスとそれに接続するアプリケーション、ウェブ・スマートフォンアプリに運営の知的財産があると主張している。
『会員』に対しては、「コンテンツ等」という表現で対象を設定している。これはカクヨムに対して送信した全てのコンテンツと情報である。作品、応援コメント、レビューコメント、近況ノートと近況ノートへのコメント。
情報、という言葉からすると個人情報も含めてしまっているかもしれない。これはいけない。個人情報は知的財産ではなくて、個人情報として扱われなければ。法律が違う。
会員が運営に許諾しなければならない項目が記載されていて注目だ。
・コンテンツ等を無償かつ非独占的に掲載すること。
・コンテンツ等を無償かつ非独占的に配信すること。
・コンテンツ等を無償かつ非独占的に複製すること。
・コンテンツ等を無償かつ非独占的に派生著作物を作成すること。
これらの内容はカクヨムが小説投稿サイトであるという性質上、『会員』は必ず受け入れなければならない。カクヨムというよりも一般的なコンテンツ管理システムでの話になるが、コンテンツを表に見えないサーバーに保存して、必要に応じてブラウザの画面に表示するのだ。この時に「掲載」「配信」「複製」という操作がどうしても必要なのだ。
しかし、その3つに比べて4項目は性質が異なる。派生著作物が何たるかは解釈が別れるわけだが、過去の事例から鑑みれば、カクヨム主導のアンソロジーである。過去に「カクヨムマガジン」として電子書籍が発行されている。このような場合、あるいはそれに類似する形での使用を想定した内容と考えられる。
最後の項目は少々怪しい。『会員』は運営または運営から権利を引き継いだ出版者に対して、著作者人格権を行使しないことに同意を求めている。
著作権については別途複数回に分けて確認してゆくとして、この条文『著作者人格権を行使しないこと』が意味するものを考えてみよう。
著作者人格権は三つの権利から構成されている。
まずは公表権。未発表の作品を公表することができる自由を著作者のみに認める権利。
二つ目は氏名表示権。作品を公表する時に著作者の名称を表示することの自由を著作者のみに認める権利。
三つ目は同一性保持権。公表する作品のタイトル及びその内容について、著作者のみが自由に改変できる権利。
著作者人格権はあらゆる著作物に作用する、著作権の中でも最も強力な権限である。この権限を行使しないでくれ、というのはこの規約だけでは違和感しかない。最も強力であるため、その扱いは丁寧でなければならない。
数十文字でしか表現されていないこの内容だが、一体なぜだか、その意図は運営ブログに書かれているのだ。
カクヨム利用規約の「著作者人格権」規定について
https://kakuyomu.jp/info/entry/2015/12/28/181231
あくまでサービスを運営するための問題を予め回避するための条文ということだが。ガイドラインには明記したとあるが。
利用規約にも反映して欲しいものである。
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