間話 メイドと日記
表表紙記載
『極秘報告書』
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大陸歴756年5月12日
今日から日記をつけようと思います。
今日、フォード様とメリッサ様のお子にして、私の偉大なる主──ルード・フォン・アストラーゼ様がこの世にお産まれになられました。
何も言うことはありません。
惚れました、濡れまし……(以下解読不能)
何でもありません。
誰も見ていませんよね?
良かった、見ていたら思わず殺し……(以下赤字だが解読不能)
それはいいとして……。
愛しています、ルード様。
命を懸けてお守りいたします。
どうかいつまでも、私をお側に置いてください。
同年5月13日
フォード様とメリッサ様が「魔の森」に存在する魔物の間引きに行かれました。
この家にいるのは、私を除くと本家から部下として渡された者とメイドや執事のみ。正直、部下の事は信用も信頼もしていません。
所詮、小間使いです。
本家からの監視が主な任務なのでしょう。盾にも劣る分際でぬけぬけと存在して。
なので、ルード様は私が守ります。
あぁ、愛しいルード様の寝顔。
ルード様を守るためにも病などに関する知識を手に入れたいと思います。
待っていて下さい、ルード様。
同年5月14日
ルード様の『眷属』という形で出来た友です。
正直羨ましいと思います。
ルード様に生み出して頂けるなんて。
なんテ贅沢ナ
コロシテヤロウカ、ハムシガ……
(黒字と赤字で多数の魔法陣が書かれている)
いけませんね、少々意識が飛んでいたようです。
それよりも、今日はルード様体調が優れないみたいです。
何時もより多く、オムツの替えもありますし……。
どうしたら良いのでしょうか?
光系統の魔法を覚えておくべきでしょうか。
メリッサ様が帰ってこられたら師事してみましょう。
後、精霊である
いけませんね、もっと感情を制御出来るようにならなければ。
ルード様のお側に居続ける為にも……。
同年5月15日
ルード様に危害を加えた
拷問にかけて、皮を剥いで、家族を目の前で嬲ってから、四肢を切り落として、奴隷商に売り渡してあげましょう。
なんて、寛大な処置なのでしょうか、我ながら甘過ぎる気もしますが……。
まぁ、いいでしょう。
それよりも、羽虫如きがルード様のご寵愛を受け賜わろう等と血迷った事を言い出すものですから、ルード様の御前にてみっともない姿を晒してしまいました、次からはばれないようにヤりま……コフ ゲフン
注意しましょうか。
それ以外の面では何気に気が合う友になりそうで嬉しく思います。
能力面でも、頭脳面でも問題はないでしょう。
あぁ、ルード様にご挨拶する時がたのしみですね。
第一眷属たる私からご説明しなければ……。
同年5月16日
自分にあてられた部屋で書類の整理をしていたら、ルード様の気配が唐突に無くなりました。
大慌てで部屋に行くと、ベットの上で愛くるしいお顔を見せて寝ておられました。
私の気のせいだったのでしょうか?
だとしたら、不味いですね。
実戦からも暫く離れてしまいましたし……。
手頃な贄はいないものでしょうか……。
同年5月17日
ルード様が火を吹かれた。
はしたなくも、口を開けて眺めてしまいました。
なんと綺麗な炎なのでしょうか。
恐らくルード様は、メリッサ様の血を濃く受け継がれておられるのでしょう。
私は前衛と護衛、どちらになるのでしょうか?
因みに、育児本には赤児が火を吹いた場合の対処方は載っていませんでした。
世の母親はどう対処しているのでしょうか?
不思議ですね。
同年5月18日
あの事件から何やら外を飛び回っていた羽虫が帰ってきました。
そのまま死ねばよかったのに………。
結局、犯人は分からなかったようです。
そのくせに、恐れ多くもルード様のお側に居るなどと。
そのような事は私が許しません。
私も共にルード様のお側に侍る事にしました。
あぁ、早く私の名を呼んで頂きたいです、ルード様。
同年5月19日
羽虫が少し世の中の事を知りたいと言うものですから、ルード様を部屋に残し教鞭をとる事にしました。
ですが、ルード様のお部屋からまたも魔力反応が出て、急いで戻るとルード様が放電されていました。
雷属性まで才能がお有りとは。
このシャルル、これまで以上に忠義を捧げたいと思います。
すると横から羽虫が、「ルード様は何かご病気なのではないか」等と言うものですから、大慌てで資料をひっくり返しましたが、何も分からずじまいでした。
無能なシャルルをお許し下さい、ルード様。
みっともなくも縋り付きながら泣いてしまいました。
安らかな寝顔を見た瞬間に、冷静になれましたが……。
私も世の中の事をもっと学んだ方がいいみたいです。
同年5月20日
本日の夕方、フォード様とメリッサ様が戻られる、と朝方伝令兵が来ました。
ルード様と共に迎えに出向いたのは良かったのですが、戦場の匂いに耐え切れなかったご様子です。
とんだ失態を犯してしまいました。
やはり、ルード様は素晴らしいですね。
まさか3属性をお持ちとは、私は何をお教えすればいいのでしょうか?
その後は、フォード様やメリッサ様に12日から本日20日までのルード様のご様子を話しておきました。
今度は、魔王を素手で殴り殺した者を見るような目で私を見られておられました。
はて? 何か可笑しかったのでしょうか?
その後は家に戻り、フォード様とメリッサ様はルード様が将来どの様な道に進む教育をするかで議論が白熱していました。
フォード様が力技に出ようとされていたので、メリッサ様の妊娠中、メリッサ様を心配しながらも娼館に入り浸っていた事をバラしたら、メリッサ様に氷漬けにされていました。
ルード様以外の殿方がその様な事をするからです。
やはり、ルード様のお側には見目麗しい侍女を付けるべきでしょうか?
それは、今後の課題としましょう。
たった数日しか共に過ごしていませんが、やはり、ルード様は素晴らしい御方です。
何度も言いましたが、私はルード様がどの様に成長されようと決して離れる事はございません。
いつまでもお側で可愛がってください。
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裏表紙記載
この日記を手に取り閲覧した愚か者へ。
今すぐ目を刳り貫き、記憶を消去した者は四肢を切り落とす程度で許してあげましょう。
しかし、この日記を見て、さらに他者へ漏らす様ならば死を覚悟しておいて下さいね♡
ルード教教祖 シャルル・ヴィアルリィ
◆ ◆ ◆
「ふぅ、こんなものでいいでしょうか」
そう言いながら私は日記を閉じた。
「明日からもルード様のお世話をしなければなりませんし、今日はもう寝ましょうか」
そして、寝間着に着替えた私はそのまま眠りについた。
これからもルード様のお側に居るために。寵愛を頂くために。
何よりも、ルード様の歩む未来の助けとなるために。
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