第8話 海賊と言えば…(シャルロッテ・グランロッシュ著)

 ドーン! ドーン!

「ふわあっ!」

 突如響いた爆音に驚いてレイナが悲鳴を上げた。

 一同が音のした方向を見ると、そこに海賊船があった。その海賊船は、空に向けて大砲を撃っている。

 そして、その船には、見覚えのある男が1人。

「野郎ども、やっちまぇぇぇぇ! オランダ人どもを蹴散らせぇ! ハーッハッハッハ!」

 あの口調、あのバンダナ、あの銀とも極端に薄い青い髪の男は…

「ジョン・シルバーだよ」

 こちらも聞き覚えのある声。振り向くと、茶色い髪の…

「ジム!」

 エクスは思わず叫んでしまった。

「どうして僕の名前を知っているの?」

 名前を呼ばれた少年は驚いて尋ねた。

 『宝島』の主人公であるジム・ホーキンスに、別な想区で会ったなどとは本来言えない。でも説明しなければ、ジムの隣にいるボサボサの金髪の男の事を聞くことはできない。

 やむなく説明すると…

「へぇ、ここの外に、何人かの僕やシルバーがいるかもしれないなんて信じられないよ。ワクワクする!」

 ジムはエクス達の話を、緑色の目を輝かせて聞いていた。

「それで、キミ達が行ったことのある世界には、ベンはいなかったんだね?」

 ジムによると、彼の隣にいる男はベン・ガン。フリント船長の船員だったが、シルバーに置き去りにされたらしい。

「で? この状況はどういうことなんだ、坊主?」

 タオが尋ねた。この「坊主」とはジムの事である。

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「シルバーがフライング・ダッチマンに戦いを挑んじゃって、僕とベンにも仲間に入れって言うんだ。でも僕らはあいつらと一緒になんか戦いたくない」

「誰が俺を置き去りにした奴なんかに協力するかよ」

 ベンがぼやいた。その青い瞳は信じられないほどに綺麗で、怒りに燃え、不満を抱えていても、純朴と高貴な光を失ってはいなかった。彼は、海賊になる前は名家の子息だったに違いない。そして、今でも身なりを整えれば、きっと立派な若者になるはずだ。

「そうだ。キミ達が全員僕らの船の船員になってよ。シルバーを説得して、このバカげた勝ち目のない戦いを終わらせるんだ!」

「どうせ行く所がないんだ。あたいは賛成だよ、どうするロズ?」

「右に同じだ、ギル」

「私も同じようなものだ」

とマクベス。

「坊ちゃん、聞きなさいよ。この方はね、スコットランド王マクベス様」

 ギルは勝手にジムに説明した。

「言ったろう、もう王ではない、と」

「それでも、元王様がいてくれるだけで心強いよ。ねっ、ベン?」

「ああ」

「どうする? お嬢。俺は海で戦うってだけで男のロマンを感じるぜ?」

「悪くないわね」

 ちょうどその時、シルバーの船が岸にやってきた。

「よ〜う、ジムにベン。腹は決まったか?」

「シルバー、フライング・ダッチマンなんかと戦うのはやめて? 死んじゃうよ」

「海賊が死を恐れてどうする。それに、もし勝てれば、俺の名声は一気に上がるんだぜ?」

「シルバー、さきほど腹は決まったかと聞いたな。ああ、決まったよ。フライング・ダッチマンを倒す前に俺達を倒しな!」

 決然としつつも挑発的なベン。

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