あさのきょうしつ
「おはよう~」
「あら、ほのか。遅めのご出勤ね。」
「うるさいよ、まな。」
「ほのかったら、今日も遅刻ギリギリまで眠ってたのよ。まなからも何とか言ってやってよ。」
「こらほのか!あまりみづきを困らせるんじゃないよ!」
「へいへい…。全く、優秀な妹を持つと本当に姉は苦労するわ。」
「よく言うわ…」
呆れた顔で、みづきがこちらに冷ややかな目線を送ると同時に、始業のチャイムが鳴った。
私とみづき、そして私達の親友であり幼馴染であるまなは、この朝日山高等学校の二年生だ。つい先月、二年生に進級したばかりの私達は、一年生の頃と同じく、三人とも同じクラスになれたことを大いに喜んでいたが、一か月も経つと、「転校生でも来ないかな~」といった口ぶりだった。
みづきは、鈍感で頭も真ん中より下くらいの私に比べるととんでもないほど優秀だった。
学校のテストでは常に1~3位の間をうろうろし、女子陸上部のキャプテンを務めるほど運動神経が抜群だ。しかも二年生にも関わらず、学生会長を務めている。更には性格も良く(私の前以外では)、異性にも同性にも人気がある。
こんな完璧な人物の姉として生まれた私の結末を想像するのは容易いだろう。
「はあ…。せめて私とみづきが血が繋がってなければ言い訳できたのに。」
「何言ってるのよ。あ、私今日は学生会と部活で遅くなるって母さんに伝えてくれる?」
「うん、了解。はあ…。私も部活とか委員会に入ろうかな。」
「いいんじゃない?どうせ続かないだろうけど。」
「なによ~」
入る気もないくせに、そういったことを口走るのは私の悪い癖だ。
自分が何をやってもできない、のではなく、何でもできる妹を比較対象にして悲劇のヒロインを演じたいだけなのだ。まあ、演じることは一秒たりとも出来てはいないのだが。
昔からよく、「行動に移しなさい。口だけなら無料なのよ。」と言われてきた。
「口に出せば夢は必ず叶う」という言葉を、自分の都合に合わせて振り回していただけなのだが、私は口だけ星人と近所では噂だったらしい。
「…ねえ、私とみづきは双子だよね?姉妹だよね?」
「…何急に。遺伝子情報が違いすぎて、自分が拾われた子だとでも思ってきたの?」
「五月蠅い!」
「…ほのかから聞いてきたんじゃない…。」
全く。なんて可愛くない妹だろう。
みづきのことは嫌いではない。というか大好きだ。もし双子の姉妹ではなくて、赤の他人同士だったら、恐れ多すぎて近寄れもしないだろう。だから、私はたまに神様に感謝しているのだ。
みづきと私を双子として結び付けてくれてありがとう、と。
・
・
・
その晩、また、同じ夢を見た。
・
・
・
君が死ぬ夢をみた 香槻イト @kanba-ito619
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。君が死ぬ夢をみたの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます