君が死ぬ夢をみた
香槻イト
きみがしぬゆめをみた
きみが しぬゆめ をみた。
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-台所から、味噌汁のいい香りが漂ってくる。
昨今の日本は、洋食文化が大分進み、我が相葉家でもほぼ毎日洋食が定番となっていた。和食の回数を圧倒的に上回る、洋食生活を送っていたせいか、味噌汁の香りがとても懐かしく感じられた。
「ほのか、そろそろ起きないと遅れるよ!」
「…うーん。おはよう、みづき…」
何だか、とても嫌な夢を見ていた気がする。起きてから夢を思い出せないのはよくあることだが、その日は違った。
頭が覚醒すればするほど、
「何、その顔。すごく眠そう。昨日夜更かしでもしたの?」
いや、みづきの声を聴けば聴くほど…
「…みづきが、死ぬ夢をみた。」
鮮明に、強烈に思い出された。
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「はいはい~。肉親が死ぬ夢なんてしょっちゅう見るじゃない。それに、死は吉夢っていうのよ。」
「違う。いつもと違った。なんか…」
「あ、もうこんな時間!もう、ほのかに合わせて遅刻してたんじゃいい笑いものだわ。先に行ってるからね。」
「あ、待ってよ~!」
確かに、小さい頃から母や父が事故死などで死ぬ夢を何度か見て、泣いて飛び起きたことが何度かあった。
妹のみづきは、そのような夢見ることがほとんど無かったようだ。あったとして、夢の中で既にそれを夢と認識しているような落ち着き加減だった。
『誰かが死ぬ夢なんて、しょっちゅう見る。』
私が泣いて飛び起きた時みづきは、冷たくいつもそう言い放つ。その目には、年齢不相応の哀愁漂った色が浮かんでいた。
しかし、今回は嫌な予感が付いてきていた。
ただ、事故死や他殺などで死ぬならば良い(良くはないが)。今回の夢は、あれは、自殺だったのだ。しかも相当リアルな。
私は自殺の夢など、見た事がなかった。どれだけ自分が失敗をして、泣いて床に入った夜も、消えたいと思ったあの夜も、自殺する夢なんて見なかったのだ。
今日見た夢は、私が見たというより、誰かの意識の-夢の中に入り込んだような感覚だった。私はその感覚をなんと伝えれば良いかわからずに、気持ち悪い思いを抱えたまま、朝食の席に着いた。
「遅いわよほのか。またみづきに起こされたのね~」
「はいはいそうですよ~。はあ、優秀な妹を持つと姉は辛いわ。」
「ははは。姉って言ってもお前は数十分早く生まれただけだぞ。」
「父さんは黙ってて!」
我が家では毎日笑い声が絶えなかった。
高校2年生に至る現在も、思春期や反抗期などはほぼ来ず、相葉家は仲の良い家族として近所でも噂になるほどだった。
しかし、最近気付いた。
みづきは、あんなに笑うことが少なかっただろうか?
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