第27話:廊下の刺客①



時は少し遡る。





「んぅ、やっぱり見えないなぁ」


感知のために魔力を広げたレインは唇をとがらせながら呟いた。


警戒すべき魔力の色はない。タテハいわく魔力を隠す香があるというが、その匂いを感じることができる人物なんて限られているだろう。

正直、レイン一人では不可能に違いない。


「タテハ、どこ行ったんだろ…」


嗅覚の鋭いタテハは今別行動をとっている。会場全体を見ているはずなのだが…。


キョロキョロと辺りを見回しながら廊下を歩いていると、向かいからダークスーツ姿の髪の長い女性が歩いてくるのが見えた。会場とは反対方向から来たことから察するに、つい今会場入りしたのだろう。もう始まってるのにいいのかなぁ、とレインが思っていると、その女性があら、と口にした。


「坊や、ここは貴方の来るような場所ではなくてよ」


上品な物腰で語りかけてくる女性。


「お姉さんこそ、始まってるよ。いいの?」


レインは面倒くさそうに返事をする。すると、女性は、ええ、と口にしながら、顔をおおう仮面をゆっくりと外した。オークションのルールで仮面を外すことはご法度だと聞いていたので、レインは驚き目を見開く。


「私の目的はオークションじゃなくて、貴方だから♪」


ねぇ?【夢魔】のレイン?


女性の楽しそうな声を聞いてレインは目を鋭くした。その二つ名は裏社会に流れる自分のもの。知っているということは…。


「お姉さん、どこの所属?」


「≪黒豹≫と言えばわかるかしら?」


「わぁ…、暗殺ギルドじゃん。僕が目的とは光栄だね」


言いつつ、レインは好戦的な笑みを浮かべると、手のひらに濃密な魔力の塊を生み出した。


「私も貴方と殺し合えるなんて、楽しみで仕方ないわ」


「熱烈だね、ドキドキする…♪」


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