第23話:オークション開催
「さあ、まずはこちらのラピスラズリから!なんと宮廷魔導師マギアの魔法陣が刻まれており、水の疑似魔法が使用可能です!では、まず10万ニケルからスタート!」
「20万!」
「30万!」
「50万だ!」
「90万!」
どんどんはね上がっていくラピスラズリの落札価格。アルトは隣で欠伸をするレインを小突きながらそれを見ていた。
疑似魔法、という単語を聞いた瞬間これだ。そんなに彼らは疑似魔法を使いたいのだろうか。疑似というぐらいだからあくまでまがい物なのに…。
いや、だがあのラピスラズリにハイエルフの賢者の魔法陣が刻まれていたら…。例え疑似魔法だったとしてもアルトなら間違いなく買うだろう。ハイエルフの魔法の威力は人間などとは比べものにならないぐらい強力かつ繊細。人間には不可能だと言われている複雑な複合型魔法も容易く組み立てる。
もし、その複合型魔法の凝縮魔法が使えるラピスラズリがあったら…。
つまり、そういうことなのだ。彼らが目の色を替えて宮廷魔導師の魔法陣が刻まれたラピスラズリを欲しがるのは。
「過ぎたるはなんとやら、だね、アルト」
「そうだな」
レインは退屈そうにジュースの入ったグラスを揺らしながら飲んでいる。元よりレインはオークションに興味がないのだ。
「ねぇ、アルト。暇だから廊下にいてもいい?」
「暇って、お前なぁ。…だがまあ、会場の中と外に別れるのもいいかもしれないな」
ラバンは結局見つかっていない。彼の狙いは未だにつかめないが、このオークションを潰したいならきっと姿を現すはず。
「もちろん外に怪しいやついないか探るよ」
「頼んだ」
レインは踵を返して会場の外に向かう。会場警備らしき人間に声をかけられていたが、適当にごまかして廊下へ出ていった姿を確認し、アルトは再度オークションに気を向けた。
この僅かな時間でラピスラズリは落札されたようだ。価格は130万ニケル、魔法陣付きの宝石としては妥当な値段だ。
「続いてはこちらの古文書!こちらは鑑定の結果、およそ120年前のものとわかりました。魔法陣には謎が多いですが、もしかしたら魔法を使いこなせるのも夢じゃない!さあ、こちらは200万から!」
「250万!」
「300万!」
…使いこなせても、あの魔法陣が生み出すのは農業魔法。宮廷魔導師なんて夢のまた夢。
退屈な時間はしばらく続きそうだ。
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