第10話:早朝の襲撃


魔物、それは地の国から現れる存在。

地の国とは人間とは比べ物にならないぐらい強い魔力を持つ魔族が支配する国のことである。


もう十年以上になるが、野心を持った一人の魔族が暴走した魔物たちを引き連れて、この世界を蹂躙していった。五十年前の大戦時の傷跡が癒えていない人間の国はたちまち滅亡。人間たちが国を越えて同盟を組む頃には世界のおよそ半分を魔族に支配されていた。


その当時、アルトとレインは七歳ぐらいだったが、既に≪白烏≫に所属し、魔族と戦っていた。戦いは七年にもおよび、ようやく後退し始めた魔族たちを≪白烏≫の一人が自身の身もろとも地の国に封じたのだった。




しかし、その生き残りはひそかに地上で地の国の蓋を開ける時を待っていた。時折、生き残りたちが人間の住む町などを襲撃してくることも少なくはなかった。








翌日、なんだか町全体がざわついていた。

宿の人間に聞くと、どうやら貴族邸が並ぶ区画に魔物が入り込んだらしい。


アルトとレインは顔を見合わせた。魔物の出現ポイントは≪白烏≫の隠密たちが独自に調査しており、ナーズ近辺にはその反応もなかったはず。


どういうことかさっぱりだが、とにかくアルトはいつもの通信の魔法具を取り出してヤカクにつないだ。


「ナーズに魔物が出現したらしい。俺とレインは至急向かう」


≪ありゃ、そこは出現ポイントでないはずなんだがね。…言っても仕方ないな、頼んだぞ、二人とも≫


ヤカクは冷静に二人に告げた。

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