第8話:情報交換②


その時、突然アルトの鞄の中からコウモリが飛び出してきた。加えた緑の玉が淡い光を放っている。ギルドの誰かからの連絡だ。


≪やぁ、アルト。さっきは突然切ってすまなかった。患者がキャンキャンわめいてうるさかったもんでね…≫


「あぁ、こちらこそ仕事中にすまなかったな、ジズ」


通信相手は昼間に話したギルドの仲間、ジズだった。ジズは、別に気にしてないよ、と軽く言って相変わらず眠そうな声で言葉を続けた。


≪とりあえず、あの患者を治療するための交換条件で聞き出したオークションのこと伝えるよ≫


「…待て、どういうことだ」


≪おや?ヤカクから聞いてない?俺の患者がオークション主催者の従者なのさ。偉そうなやつだが、随分有能らしくてな。ハーフエルフだから普通の医者にはかかれず、俺のとこに来たわけだ≫


その口振りだとだと聞いてないみたいだね、とジズが言う。


なるほど、彼からの情報が得られていなかったから任務の情報が不足していたのか。ならば、ジズの手術を待ってから仕事を回せばいいものを…、とアルトはぼんやり考える。


いや、情報ぐらい自分で集めろ、ということだろうか。しかし、四苦八苦してそうだし、仕方ないからヒントやるよ、というヤカクの思惑だろうか。あり得ない話ではない。


そんな思考を繰り広げるアルトをよそにジズはため息をつきながら続けた。


≪あーあ、疲れた。ほんっっとうにうるさい奴だった。たかが呪いをとくだけの施術だというのに、びゃあびゃあと泣き喚いてな。挙げ句交換条件の情報もなかなか喋らないしさ、これはヤカクに追加料金もらわないと割に合わないよ≫


「呪い…?」


愚痴っぽく言うジズの言葉にレインが反応をする。すると、微かにジズの笑う声が聞こえ、気になるの?という問いかけが一瞬遅れて投げかけられる。


「ねー、どんな子にやられたとか、その人言ってた?」


≪まあまあ、そんなにあせるなよ。順を追って話すからさ。そうだな、まずはオークションの日時からにするか≫


ジズ曰く、


日時は二日後、日没と同時に始まるそうだ。

場所は貴族邸が並ぶ商業区画奥、料亭カヤバの地下施設。店の店主に「青いランタンの光に誘われた」と伝えると通してもらえるらしい。

ドレスコードはダークスーツに緑のタイ、マスケラ着用。同じ格好で身分の上下がわからないようにするためだと言う。


さらに続く。


≪競売商品も聞き出したよ。種々のお宝と奴隷が百人。奴隷は完全に違法だけど、それはひとまず置いといて、どんな風に進行していくかを聞いといた≫


先にお宝を全部売ってから奴隷取引に移るようだ。最初は三十人をまとめて50万ニケルからスタート、これを二回繰り返す。次は五人をまとめて30万ニケルからスタート、これが七回繰り返される。


「…よくそこまでしゃべったな」


アルトが感嘆のため息をつく。


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