第7話:情報交換①



夕方、商業区画に戻ってきたアルトとレインは宿をとると、食糧を持ち込んで早々に部屋にこもった。


「全く、あんなとこで挑発してどうする。いたずらに騒ぎ立てないために、わざわざギルドを避けたというのに…」


アルトは呆れを含んだ口調で言いながら、持ち帰ってきたキッシュを一口食べていた。結局レインが心配で全てテイクアウトにしていたのだ。おかげでアルトはこれが遅めの昼飯も兼ねての夕飯になっていた。


「あはは、ごめんね。つい味見したくなっちゃって…」


「お前なぁ…、仮にあの場で戦闘になっていたら、あっという間に憲兵に捕まって任務失敗だぞ?」


レインの苦笑にアルトが少し強めの口調で言う。いわゆるお説教が宿に入ってから続いていた。


レインはかなりの戦闘狂だ。普段は無邪気な子供のようだが、こと戦闘となると人が変わる。周りのことなど気にせずに暴れまわるので、被害も甚大なものになる。


「……あんなやつらの檻なんて簡単に壊せるけどね」


「そういう問題じゃない。あと、相手がもしもオークション関係者だったら、警戒されてオークションの開催を中止するかもしれない。これでも任務失敗だ」


「…あぅ、それは、ごめんなさい…」


最初は不服そうに唇をとがらせていたレインだったが、自分が悪いことはわかっていたので、正直に謝罪をする。


「仕方ない。これからどうするか決めよう」


「うん」


アルトはため息をつきながらもすんなりとレインを許した。これがヤカクに甘いと言わせる原因なのだが。


気を取り直し、仕事の話だ。


「工場の連中に話を聞こうと思ったが、俺たちの顔を知られた以上、得策じゃない。となると、貴族の方をあたるしかないか」


「ギルドの諜報員にお願いするとかは?」


「…それこそ、ヤカクがつかんでいないのか?オークションの会場ぐらい」


ヤカクはあれでも凄腕の隠密だ。こんな不完全な情報だけで仕事を振るわけがない。それなのに情報がないということは、本当に入手できてないか、あるいは…。


「試されているのか?」


「かもね、意地悪ヤカクだし」


そう、≪白烏≫は実力主義のギルド。しばしば本人たちの預かり知らぬところで勝手に試験が行われる。合格すれば依頼も増えるが、不合格だとしばらく地獄の修業が課せられる。そればかりはごめんだ。

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