第2章 とりあえず痩せてみる?⑴

そんなこんなでじっくりと自分を成長させようと思っていた俺だけど。

「うげっ。」

衝撃を受けた事実が1つ。…ショーウィンドウに映った自分の姿である。


脱半ひきこもりを決心した俺。当然、外に出て買い物とかもしようと思った。男の身だとかわいい雑貨屋さんとか入りにくかったから、未知の世界へ踏み入れる体験をしたよね。これがまた面白いんだな。世の中、色々な雑貨があることを知ったよ。便利な世になったもんだね。

それに女性のお洋服屋さんに入るのも面白かった。男性ものとは全然違うんだな。ふんわりした俺好みの服とかもたくさん置いてあった。こんな服を着た女の子とデートできたらいいなぁと思いつつ、今の俺は女性だったと気がつく。

そんな俺の楽しみを打ち砕いてきたのがショーウィンドウであった。自分の姿を客観視することができたのだ。覇気のない表情、ダラけた体型、センスのない服…色々と酷かった。

それからの日々はわりと自分にダメージがあった。ショーウィンドウはもちろん、鏡、電車の窓など自分の姿が見えるものは敵だったね。

こんなことを言うのはあんまりだけどさ、俺は生きていた頃はわりとイケメンだったと思うんだ。その姿が恋しくて仕方なかったし、自分の姿が映るたびに嫌だなぁと思ってしまうのは悔しかった。

さらに大変なことが発覚した。香澄の手帳をめくっていた時のことである。

「…旅行?」

友人との旅行の計画が一週間後に入っていたのである。え、一週間?

「うわ、つらい。」

…しかも温泉旅行みたいだ。現実がつらい。服で体型を隠せないじゃないか。


「よし、やるしかない。」

そこで俺は決心したのである。期限は一週間。その期間で温泉に行ける体型に変えてやる、と。無茶でしかないかもしれないが、無茶してでも俺は痩せることを切望したのである。


こうして、俺は「一週間ダイエット」を敢行することになる。やはりこの無気力感に勝つためにはルールは少ないほうがいいだろう。俺が定めたルールはたった2つだけ。

1つ目。1日1食しか食べないこと。

なぜ太るかと言うと、摂取カロリーが消費カロリーよりも上回るからである。それを防ぐためにこのようなルールを定めた。

2つ目。ウォーキングをする時間を設けること。

食べることを減らすことによって減ると考えられる筋肉量を維持するのが目的だ。筋肉が減ると代謝が落ちて、体重が減りにくくなるからな。


こうして俺は温泉旅行に向けて急遽ダイエットをすることになったのである。…体に良いかどうかなんて、とりあえずは知らない。

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