第1章 基本的なところから整えよう⑴
目をあけるとそこには真っ白な天井がみえた。しかし、先程とはどこか違う。パッと起き上がってみると、そこは狭い部屋だった。自分の身体の感覚に違和感を覚えて見てみると、女の子の身体になっている。憑依に成功したようだ。それにしても、と俺は思う。…部屋、汚いな。俺はてっきりごく普通の女子大生に憑依することになると思っていたのだが、それは間違いだとこの時点で悟る。そして、女の子に対する夢が壊れていく。…俺は、認めない。こいつが女の子だなんて認めないぞ。
この時点で俺の目標は変わってしまっていた。憑依する前は、この身体のもともとの持ち主を救いたいと思っていた。しかし、こうも夢を壊されると考えも変わってくるものだ。俺の目標は、こいつを理想の女子に仕立て上げることに変わっていた。スマホに彼氏らしき人物からのメッセージが届いているのを見て、気持ちをさらに引き締める。このままでは、彼氏もかわいそうである。
自分が生活するにも不快なレベルの部屋の汚さだったので、俺は憑依するや否や部屋の掃除に勤しむことになった。服は出しっ放しだし、本は机の上に積み上がってるし、埃も目立つ。正直、気が滅入る。掃除をしていると埃が舞うので目はしょぼしょぼしたし、鼻はグズグズした。今日だけの我慢だ、頑張れ俺、と思いつつ必死で掃除をする。
午前中から掃除を始めたのにもかかわらず、終わったのは15時頃になってしまった。それだけ部屋が荒んでいたということだ。だが、頑張った甲斐があって部屋はそれなりに綺麗になった。それに。
「収穫あり、だな。」
俺は、彼女の情報を集めることができた。そこから彼女のコンプレックス等を炙り出せるかもしれない。
俺は発見した情報から、彼女について考える。名前は、新山香澄。大学1年生。自宅から近い大学に通っていてサークルも入っている。優しいと評される人間だったようだ。…日記には色々と凄まじい本音が書いてあったので、うまく本性を隠していたみたいだ。その方が賢明だと思うよ。自分の性格が良くないと自覚していたようだから、まだいいのかもしれないが。
何はともあれ、1年間はこの身体は俺のものだ。存分に楽しませてもらおう。何、悪いようにはしないさ。だって、自分のもののようなものだからな。
ただ、今までの香澄とは全然違う人物に1年間は仕立ててやるぜ。これは、自分と彼女の彼氏のためだけどな。…やっぱり、かわいい女の子に対する夢は壊したくないから。
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