舞茸とえのきの黄金焼き


「遂に、日本から肉が消えてしまったのかしらね」


帰って来るや否や、奏恵はそんな事を言っていた。


肉が一斉に消えるなんて現象があってなるものか、と義彦は鼻で笑いかけたがこれが奏恵には大問題な話である。帰りにどこかのスーパーで肉を買おうとしたが、お目当ての肉が無かったという所なのだろうが、さすがに連続してこういう状況であれば奏恵も明日からのモチベーションに支障をきたす事だろう。


"今日は金曜だから、昨日みたいに質素な食事じゃないのがいい"と言っている奏恵を満足させる手段として真っ先に思いつくのが"肉料理"であるが肝心の肉が無いという状況でこの手段は無い。



「作り置きしてる小松菜のお浸しは今日食べたいから、ちょっとよさげなオカズだけ作ってよ」


…この状況であれば、何とかなる一品があった。


__________


*舞茸とえのきの黄金焼き


材料(2人分):

舞茸…1株

えのき…1株

薄力粉…カップ1杯半

醤油…大さじ5杯

みりん…大さじ3杯

砂糖…小さじ2杯

ごま油…適量

卵…3個


道具…

ボウル

フライパン

包丁&まな板


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「肉の代わりなんて、豆腐以外に務まるの?」


"肉は肉でしかない"と思っている奏恵であったが、先日の豆腐バーガーにて考えが変わったという。とりあえずは食感と味を肉に近づければ大丈夫だという事が分かったが、話の様子では今回は豆腐で肉を作るようなレベルの事をやる必要は無かった。


「肉、とまではいかないかもしれないけど、キノコだけでも食卓のメインを飾る事はできると思うんだよ。」

「シイタケでも焼くの?肉の代わりにはなるらしいけど」


"さすがにシイタケを焼いただけでメインは難しいよ"と義彦は笑った。


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作り方:

①えのきは袋ごと石突きを包丁でバッサリ切って(こうするとゴミがまとめやすいので便利)、舞茸と一緒に食べやすい大きさに切る。

②切ったえのきと舞茸をボウルに移し、調味料を加えてよく混ぜ合わせた後、薄力粉を加え全体に粉が付くように混ぜる。

③②に卵を投入し、これも全体に馴染むようよく混ぜる。

④フライパンにごま油をひき、表面に焦げ目が軽くつく程度まで焼いたら、もう片方の面も同様に焼けば出来上がり。お好みでネギを入れても美味しいです。


__________



「変わり種のお好み焼きみたいね。ソースはいるの?」

「もう味ついてるから大丈夫」


奏恵の視界に入っているのは、平たく焼かれた"お好み焼き"のような黄色い物体である。冷凍食品のお好み焼きを、袋から出した時に最初に見る光景がそれだった。


義彦が料理について嘘をつくと思えない奏恵は、とりあえず目の前にある謎の物体を箸で一口大に切り分け、口に運んだ。


キノコの旨味と、卵のまろやかさは結構合う。



「…お茶が欲しくなってきたわ」


そろそろ、麦茶の恋しい季節であった。



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