びっくりお好み焼き
金欠。
"金を欠く"と書いて読んで字の如く、持ち分のお金が少ない事を指す。その原因はまちまちで、ひとえに浪費が原因の場合もあればそうでない状況もある。
今回は後者であった。
部屋の扇風機が急逝してしまったために、なけなしの予算をはたいて買う事になったためにそのしわ寄せが今週に押し寄せてきていたという訳である。
たかだか数週間、されど数週間。肉類なんて買う余裕もなく、魚であれば尚更買う余裕が無い。何故魚は肉より高いのか?
…それは、肉の方が人気で、儲けを取るためには魚の値段を上げなければならないという大人の事情が絡んでいるのだろう。
恐らく、この推測は間違っている。
だが考えようとも、金欠の事実からは逃れられない。
そこで義彦は、貰い物の里芋とシーチキンの缶詰に光明を見出したのだ。
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*びっくりお好み焼き
材料(2人分):
里芋…300g
シーチキン…2缶
キャベツ…1/4玉
塩コショウ…4つまみ
ごま油…適量
ソース…適量
マヨネーズ…お好みで
鰹節…まあかけてもいいけど
青のり…歯につくので外出時は注意を
道具:
おろし金
包丁
まな板
フライパン
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「何てこった…」
里芋は土だらけであった。
貰い物なのでよくある話である、変に洗ったりしてしまうと新芽が出てしまいそうというのもあるためだろう。だったらジャガイモを土まみれにすればいいと思うが、それをすると土の湿度で新芽が出てしまう。
…しかし、里芋は土を落とす際に強くこすればその勢いで皮を剥けるので、その点はジャガイモより賢いと言ってもいいだろう。
余談であるが、ジャガイモの新芽を防ぐためには新聞で包んで冷蔵庫に入れるか、冷蔵庫で林檎の隣に置くからしい。林檎から発せられる何かがジャガイモの新芽の成長を遅らせる効果があるそうだ。
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作り方:
①里芋は水洗いで強くこすりながら中身の部分が見えるまで洗い、おろし金若干粒が見えるぐらいで細かくする。そしてキャベツはみじん切りにしておく。
②塩コショウを①に振りかけよくかき混ぜる
③シーチキンは油を搾ってから②に投入
④フライパンに油をひき、③を焼いて両面がきつね色になれば完成!
⑤ソースとかその他諸々はお好みで
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「割とお好み焼きしてると思ったら、ポテトの香ばしさもあるのね」
"芋のつぶつぶが残ってて、お好み焼き風ハッシュドポテトみたいな感じで美味しい"と奏恵が言わなければ、ただの文句に終わってしまっていた事だろう。
最悪、この状況で不味い料理を作ってしまえば義彦の処刑もあり得る。
ちなみに、つなぎは入れなくていいのか?と言われればそんな必要は無いと答えておきたい。里芋のネバネバのお陰か、よく混ぜて焼けばお好み焼きのようにちゃんと固まってくれているのが凄い。
ポテトの味わいもあるが、里芋だとその味も若干控えめで"ちょうどいい"ポテトお好み焼き具合になるのだ。
…むしろ、これはこれで良くなってしまう。
ともあれ、1週間目の金欠はこれで乗り越えられそうだった。
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