枇杷ゼリー


「ちょっとー、そろそろさっぱりしたものが食べたいんだけどー」


そんな事を言って義彦を揺さぶる奏恵であるが、そんな事をされてしまっては余計に暑いからやめておくれというのが、人間の思うところである。


不幸中の幸い、"そろそろ"という言葉が入っている。


冷凍庫にアイスが少しだけ残っていたために、それで暑さを凌ぐのであろうがアイスが無くなれば奏恵は暴徒と化してしまうのだ。


…そのような事があってはならない。


何年目かの夏を乗り切るためにも、義彦は"暑さを乗り切る"デザートを作る事にしたのであった。



__________


*琵琶ゼリー


材料(4個分):

梅酒…400ml

水…200ml

砂糖…大さじ4杯

枇杷…種なし8個

ゼラチン…12g


道具:

使い捨ての透明コップ

__________



「鍋だけってどういう事よ、それに琵琶ゼリーなのに梅酒使うってどういう事よ?」

「いや、意外と合うんだって。」


梅酒の甘酸っぱさと、枇杷の甘さは結構マッチングするのだ。


「私から酒とアイスを奪わないで!」


棚から、梅酒の棚を取ろうとする義彦に対し、両手を広げてそれを死守する奏恵。

義彦の創作料理が妨害されるのは、この作品始まって以来の事である。


「梅酒は奪っちゃダメよ!」


さすがに話で説得しようとすると日をまたぎそうな剣幕であったため、仕方なく義彦は"酒屋のいい梅酒買ってくるから"と苦肉の策を講ずるしかなかった。


__________


作り方:

①鍋で梅酒を沸騰させ、アルコール分を飛ばす

②①に砂糖とゼラチンを混ぜ、水を入れて粗熱をとる

③②をコップに分け、枇杷を沈めて冷蔵庫に入れ、固まったら完成

__________



翌日


「梅酒が、こんな美味しくなるなんて思わなかったわ。」

一晩おいて固まり、そして冷えた枇杷ゼリーを食べながら、奏恵は感想を素直に述べる。梅酒もアルコールが無ければ、結構さっぱりとしているのだ。


「これなら私もできるかも」

「簡単だけど、決してゼラチンを入れてから沸騰させちゃいけないよ」


実際、ゼラチンを沸騰させると、"ゼラチンが悉く死ぬ"ためにゼリーが固まらなくなるので、これは注意されたい。



「何かちょっと、夏バテ消えたかも」


湿気の多く、そして暑苦しい時期であるが、さっぱりしたもので何とか乗り切っていきたいと思った義彦である。

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