豆腐バーガー
世間は、とんでもないウイルスに狂わされていた。
米国では株価が暴落し、アジアでは暴動が起きている。…そう、日本でも他人事では無かった。市民は自宅に押し込められ、マスクを忘れてしまっては悪魔と化した市民に襲われる。そして市場はウイルスの脅威という、張り子の虎に惑わされた市民に滅茶滅茶にされるのだ。
…一番、スーパーを必要とする市民が、スーパーを破壊しているのである。こんなバカな事があっていいのだろうか?こんな市民のために心血を注いでいるのに、逆に馬鹿にされる公務員の義彦はたまったもんじゃない!と思いながら生活をしていた。
「ちょっと!あそこのスーパー、とんでもない事になってるわよ。」
「…また、オバチャンの暴動?」
奏恵がここまで焦っていても、義彦は冷静である。
話に興味が無いのではなく、こういう性格なのだ。
「集団リンチよアレ!マスクと箱ティッシュが品切れだからって、アルバイトの女の子を寄ってたかって殴ったり蹴ったりして!危ないから警察に通報してやったわ!」
「うん、それが正しい」
日々、アホな住民のしょうもない通報に振り回されているであろう警察官も、今回ばかりはちゃんとした意味で"ふざけんな!"と血相を変えてやってきている事だろう。
110番通報の内容が幼稚化している事で嘆かれている、昨今の日本でこの通報は非常にまともな限りである。
「肉も魚も無かったわ。後はもやしミックスとキャベツぐらい。仕方ないから豆腐買ってきちゃった。」
だからと言って、5丁も買ってこなくていいのである。…5回分も短期間で豆腐レシピにしてしまえば何を言い出されるか分かったものではないのだから。
「…で、あんた何やってんの?」
「作り置き」
「ご飯に片栗粉混ぜて、平べったくして小分けするのが?」
義彦は炊き立てのご飯に片栗粉を混ぜて、小分けにしたのをラップに包んで円状に平べったくしていた。
「せっかくだし豆腐使おうか?」
ここでまた、創作料理の出番である。
__________
*豆腐バーガー
材料(2個分):
豆腐…300g
ご飯…茶碗3杯分
片栗粉…大さじ3杯とまぶす用
醤油①…小さじ3杯
醤油②…大さじ3杯
砂糖①…小さじ1杯
砂糖②…小さじ2杯
みりん…大さじ1杯
しょうが…小さじ1杯
キャベツもしくはレタス…適量
ごま油…適量
道具:
包丁、まな板コンビ
フライパン
__________
「炊き立てのご飯、そのまま形整えて使うのじゃダメなの?」
「そうすると、凄く崩れやすいんだよなー」
何事も、簡単にはいかないという事である。
「まあそう、焦らずに待っててよ。不味いモノを作ってる訳じゃないからさー」
皆、焦っている。店員さんを集団リンチして今頃はお縄についているであろうオバチャン達も、皆が"元の生活に戻りたい"よりも"自分は絶対に感染したくない"という気持ちが強すぎて焦っている。感染するよりも、自分が見境の無い獣と化す事も、同じくらい怖いと知って欲しいとは思うこの頃。
__________
作り方:
①片栗粉をよく混ぜたご飯3杯を、4等分し粗熱を取った後はラップをして冷蔵庫に入れ、冷えたら使用
②豆腐はよく水を切って、水が切れたら冷凍庫で凍るまで放置
③凍った豆腐をレンジで解凍したものを、形を崩さないよう押して若干の水分を抜き、片栗粉をまぶして、油をひいたフライパンで表面を焼く。
④③が完成したら①をフライパンでそのまま焼き、片方に醤油①と砂糖①を混ぜたものを片方に塗り、焼き色ができたら完成
⑤醤油②、砂糖②、みりん、しょうがを混ぜ合わせ、ひと煮立ちさせたら③に塗る
⑥完成した④と⑤、あとレタスorキャベツも挟んでしまえば完成です
__________
翌昼。
「で、これ。完成したのはラップに包むの?」
「そんな事したら、ラップがベトベトになるよ」
ハンバーガー状のものを包むと言えば、そういう紙がある事は奏恵も分かっていたが、そんな物を見た事があるのはマ〇ドナルドとかモ〇バーガーとかのファーストフード店だけなのが、奏恵の見解である。
「包む紙はね、ファーストフード店で使ってるような奴ならネットでも注文できるし、100円ショップにも売ってるらしいんだよ。」
と言って、どこかに隠してあった"バーガー用の包み紙"を取り出し、義彦は手早くバーガーを包んでいった。
そんな事をしても、奏恵は早速食べるのである。
「日本人の味よね、これ」
誉めているのか、どうなのか全く分からない。
「これ、雑穀米でやったら香ばしくなって逆にウケそう。あと味噌汁が欲しいのよね、バーガーの癖に」
…あまり定番にはなりそうにないが、奇をてらった料理もたまにはいいモノである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます