低温よだれ鶏
"スケベさん家のニワトリ"
いつも通りの日常がルーティンワークになってしまった義彦は、スーパーの肉売り場にそんなとんでもない名前のブランドで売られている哀れな鶏肉達に出くわした。
しかも地元産。
(ニワトリもスケベなんだろうな…。てかどこの警察官だよ。)
何故に警察官なのかは不明である。
そう、不明なのである。
鶏肉が好きな人はエロいのだろうか?いやそんな事は無い。
…しかし、明らかにコンプライアンスやその辺の暗黙の了解的なところを平気で破ってしまったこの鶏肉達は、スーパーで何故か飛ぶように売れてしまったのである。
義彦も、そんな訳の分からない商法に巻き込まれた1人であった。
「最低」
そりゃあ言われるだろうな、と思っていたけど案の定、奏恵は義彦を2文字で罵倒した。名前は問題あるかもしれないが、品質的には問題なさそうではある。
「しかもむね肉だし。」
胸肉で悪いか!と思う義彦である。あっさりして美味しい胸肉の美味しさを、是非とも奏恵に分かってもらいたいと思う瞬間であった。
「なんかこれ、スケベだ。」
売っていた鶏肉は、"むね肉"と"もも肉"、あと"ぼんじり"だった。
人の体の部分だとアレである。肉になってるのは雄鶏だが。
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*低温よだれ鶏
材料(2人前):
鶏むね肉…400g
青ネギ…3つかみ
味噌…大さじ3杯
豆板醤…大さじ2杯
水…50cc
醤油…30cc
料理酒…30cc
道具…
包丁
ビニールパック
まな板
鍋2つ
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「何でスケベって、男の方だけを皆指してるのか分からないわね。」
うちの嫁は唐突に訳の分からない事を言い出す姉さん女房なのだ。
もう慣れた分、とやかく言う事ではない。
「スケベな女性もいるって事?」
「グラビアみたいな体系が好きな男もいれば、スレンダーな女性が好きな男もいる。それに女の子だってイケメンが好きな人とそうでない人がいるじゃないか?」
「イケメン嫌いな人は多分、頭おかしいわ」
自分から問題提起しておきながら、他人の回答を平気で蹴り飛ばす。これぞ姉さん女房の醍醐味えあるのだ、と言う事を忘れてはならない。
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作り方:
①鍋に水をいっぱい入れ、沸騰させる
②沸騰させたら、ビニールパックに鶏むね肉を入れ、極限まで空気を抜いたものを①に入れ、30分~40分くらい放置
③その隙に料理酒を別の鍋で沸騰させ、他の調味料と水50ccを入れ、ひと煮立ちさせれば、タレの完成です!
④完成した②を切り分けたものに③をかけ、青ネギをトッピングすれば出来上がり!
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「美味しいわね、スケベの癖に」
「売る側がスケベと言ってるだけで、ニワトリに罪は無いんだ」
「ブランド化したら、ニワトリが可哀そうじゃない」
「それは考えてなかったな」
「考えなさいよ。大体あんた、今まで趣味の範囲で沢山の鶏肉を掻っ捌いてきたのに、そんな事も考えなかったワケ?」
「奏恵ちゃん、それじゃ表現が悪すぎて伝わってこない。」
しかし、"命"を頂くことに感謝しているのは事実である。
さっきまでスケベを擁護しておきながら、スケベを"批判"する。この上げ下げの無重力感が、姉さん女房の醍醐味の1つでもあった。
…しかし、肝心の義彦はあまりその味を知りたいとは思わない。
それよりも大事なのは、料理の味である。
肉がしっとりしているのは、スケベだからではなく低温調理の賜物だという事の方が忘れてはならないと言うべきなのだろう。
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