逆かに玉
奏恵の納豆好きには、驚くべき点が多い。
世の中の人間には、食に対する"狂信"というものがあるが(例えばおっぱいがでかくなるという説を頑なに信じて豆乳を飲み続けるとか)、奏恵の"健康はねばねばから"という突き抜けた考え方もこの部類に入るのだろう。
ここ2週間、奏恵にキッチンを明け渡せば出てくるのは納豆やおくらやとろろ、あっさりねばねばな彼らなのである。良質なタンパク質やら低カロリーやら、栄養についてはあまり詳しくない義彦にとっても"ああ健康そう"と思えるのだが、さすがにこれが常であれば中々に苦しい。
まだ朝だけならいいのだが、夜も来るのである。これが昼の弁当にまで魔の手がやって来たなら大問題だ。そうなれば本当に狂っているとしか言いようが無い。
…そこで、残ったたった1つの"弁当"というゾーンを死守するために、義彦は兼ねてから"未完の大器"と勝手に思っていた料理を食卓に上げるのである(奏恵の要望を無視したためあれこれは言われたがそんな事はどうでもいい!)。
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*逆かに玉
材料(2人前):
卵…3個
かにかま…100g
青ネギ(もしくはニラ)…適量
中華だし…小さじ2杯
めんつゆ…小さじ1杯
濃いくち醤油…小さじ1杯
水…100ml
片栗粉…適量
油…大さじ2杯
道具:
フライパン2つあれば
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納豆を使ってオムライスしても良いのだが、焼いた卵と米と納豆のすべてがマッチする味付けというのを、未だ義彦は思いついた事が無い。
…という訳で、今回は未だその威力を計り知れていない"逆かに玉"にかけるしかなかった。
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作り方:
①水と調味料を混ぜ合わせ沸騰させ、片栗粉を加えてゲル状になるまで煮込む。
②フライパンに油をひき、卵を具材と混ぜ合わせて溶いたものを弱火でじっくり焼く。底が固まってきたら焼けた玉子で①を包むようにして、暫く焼いて完成。
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この料理は"お弁当にかに玉を持っていきたいけどあんがべちゃべちゃしたらどうしよう?"的な疑問から出来上がった一品であるが、とんでもない弱点を有している。
"切ってしまうとあんが出てしまう"事であった。
オムレツ的なかに玉という事で、これもアリなのかもしれないが…
何だかんだ言いながら美味しく食べていた奏恵を横目に、義彦は改めて創作料理の難しさを感じたのであった。
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