バター茶

義彦は悩んでいた。


"チェルシーのヨーグルトスカッチは美味しい"


だから、義彦は悩んでいた。


"何故、スーパーには単品だけ売っていないのか?"


"スカッチアソート"等と銘打って、バタースカッチもヨーグルトスカッチも、あとコーヒースカッチとかいうのも混ざって一袋になっているというのが、義彦を悩ませていた。これもひとえにヨーグルトスカッチが好きだからである。


ちなみにこの作者も、大学の友人達で持ってきたチェルシーのスカッチアソートを分け合って食べたのだが、皆がヨーグルトスカッチを持って行ってしまった記憶がある。虐められていた訳ではない、それを知っていれば回避できた誤算だった。


※この作者が、その後に友人から雪見だいふくを1個頂いたのは別の話。



"単品で売っているか?"と訊かれれば、通ったスーパーでお目にかかる事は個人的に少ない。すだちの国と梅干しの国を繋ぐフェリーの売店でぐらいしか見た事がない。



バタースカッチの何に納得がいかないと言うのか?と言えばあのバターの濃密な味が個体に凝縮されている所だと義彦は思っている。"あれが液体であればどこか飲みやすいのに"と残念そうに思う義彦だった。


_________


*バター茶


材料(1人分):

・バター…2g

・紅茶…1パック(1杯分)

・砂糖…小さじ1/2

・バニラエッセンス…1滴

・水…160㏄~200㏄


道具:

お湯を沸かすやつ

_________


食卓のオヤツ入れには、チェルシーのヨーグルトスカッチが1つだけ残っていた。


_________


作り方:

①お湯を沸かす。

②その間に、カップの底と壁にバターを塗りたくっておきます。

③お湯をカップに注いで、ティーパックを浸す。

④砂糖を入れて、軽く混ぜたら完成

_________



バターのまろやかさがほんのりと紅茶の味に混じる。


義彦は1人、奏恵のいない時間を楽しんでいた…



「ただいまー」


帰ってきた奏恵。


「お、ヨーグルトスカッチ。」


オヤツ入れから最後の1つを取って、口に入れる奏恵。


「美味しい。」

「美味しいだろうよ、そりゃあ」


最後のヨーグルトスカッチを口にした奏恵は、どこか嬉しそうだった。少し残念そうだった義彦を眺めながら…


「あげようか?」

「あるの?」


「私の口の中。」


女子大生か、と思わず突っ込みを入れた、甘酸味のある一瞬であった。

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